フジテレビは、京都芸術大学とタッグを組み、オンラインで学ぶ学士課程「映像コース」(正式名称:通信教育部芸術学部デザイン科映像コース)を来年春に新設する。5日、東京・台場の同局本社で記者発表を行い、講師陣が授業の構想を語った。

  • (左から)菊間千乃氏、いとうせいこう氏、鈴木おさむ氏、大島新氏

    (左から)菊間千乃氏、いとうせいこう氏、鈴木おさむ氏、大島新氏

フジと京都芸術大は、「映像力(映像を社会に生かす力)を身につけ、未来の映像を生みだす人をつくる」をコンセプトに、映像コースの学位プログラムを共同開発。フジの大多亮専務は「今は作った番組を放送のタイムテーブルに乗せるだけでなく、海外のOTT(配信事業者)と組んで大変な制作費をかけて作ったものが翌日にはグローバルで世界中に展開されることもありますし、かたや15秒・30秒という動画がスマホの中で大量に展開されています。こういった時代の映像の変化に対応するノウハウ、制作の力が必要になります」と述べ、人材育成の意義を強調する。

オンラインの授業ということで、スマートフォンから映像制作ができるようにカリキュラムが組まれる。映像作家の丹下紘希京都芸術大教授は「チームプレーでの作り方も学ぶんですが、これからはスマホで自分で作れるものが発信していく中心になっていきますので、このコースでも個人で作るということが基本のベースになります」と説明。それを受け、大多専務は「ドラマや映画、バラエティを作るときはどうしてもチームになるので、そういう方たちが入ってきてどんな波を起こしてくれるのか」と期待を示した。

講師陣には、いとうせいこう氏(作家・クリエイター)、鈴木おさむ氏(放送作家)や、フジ社員の木月洋介氏(『新しいカギ』『今夜はナゾトレ』など)、宮下佐紀子氏(『Mr.サンデー』など)、下川猛氏(ビジネス推進局IPプロデュース部長)、元社員の大島新氏(ドキュメンタリー監督)、菊間千乃氏(弁護士)、橋爪駿輝氏(『モアザンワーズ / More Than Words』など)、系列局・カンテレの佐野亜裕美氏(『エルピス―希望、あるいは災い―』『大豆田とわ子と三人の元夫』など)らが名を連ねる。

この中から登壇した菊間氏は「映像を作るにあたってのリテラシーや最低限の著作権についてのお話をするので、いろんな方を傷つけることなくストレートに自分の思いが伝わるためにどうやったら映像を作ることができるのか、という観点で授業でお話しさせていただけたら」と紹介。

いとう氏は「日本のテレビが戦後どういうテクニックでものを撮ってきたかって、あんまりまとめられてないんですね。だから、この何年かでカメラマンとかいろんな人たちの話を聞くようにしてるんですけど、それを元にしたテレビだからできること、日本のテレビが培ってきた技術を、今度は通信にうまく生かしていけるようなものを考えていきたいと思っています」。

鈴木氏は「企画って0から1を作るといいますけど、“マグロの刺身とカルパッチョの違い”とよく言うのですが、器や味付けを時代に合う形に変えるだけで、企画が新しく見えたり、面白くできたりすると思うので、目線をちょっと変えるだけで企画ってこんなふうに作れるんだ、というかなり具体的な方法論を伝えたいと思います。それから、世の中でヒットするものって、“今まで思いついても良かったのに”と思うものがあると思うので、そういうものの見つけ方みたいなことを、具体的に授業でやってみたいなと思います」。

大島氏は「映像は人の人生に影響を与えることがあると思っています。私も政治家や選挙を扱ったドキュメンタリー映画を作ったら、それを見て『統一地方選に出ました』という人が2人くらいいたんです。そういうことが可能性としてあるジャンルだと思いますので、映像の力を伝えていけたらいいなと思います」と意欲を示した。

  • フジテレビ・大多亮専務

  • 京都芸術大学・吉川佐紀子学長

  • (後列左から)フジIPプロデュース部長/京都芸術大准教授下川猛氏、京都芸術大副学長・上田篤氏、京都芸術大教授・丹下紘希氏 (前列左から)菊間千乃氏、いとうせいこう氏、大多専務、吉川学長、鈴木おさむ氏、大島新氏