2023年現在、420円より販売されているマクドナルドの「月見バーガー」。その月見バーガーが、20年前は半額以下の金額だったことをご存じだろうか。

今年1月には全店舗での値上げ、7月には都心部の店舗での値上げで話題を呼んだマックだが、実は月見バーガーも値上がりしているのだ……しかも20年前とは2倍以上。しかし値上げ自体はネガティブな事象であっても、月見バーガーに「値上げの理由となる大きな進化」が起きている可能性はある。

そこで本記事では、マクドナルドの月見バーガーについて、価格推移や各年の新作商品を紹介。懐かしのメニューや月見バーガーの魅力を振り返りつつ、価格の妥当性や進化の歴史を探ってみよう。

1991年に誕生した日本マクドナルド「月見バーガー」

すっかり秋の定番メニューとなったマクドナルドの「月見バーガー」だが、初めから”月見”をイメージして開発されたわけではない。開発秘話を語ったサイトには、月見バーガーが「たまごを使ったハンバーガー」として誕生したメニュー、として記載されている。

  • 今年も話題の月見バーガー、20年前の価格は…

    1991年発売「月見バーガー」(YouTube「日本マクドナルド50周年歴史振り返り動画」より引用)

「月見バーガー」(税抜290円)が初めて店頭で販売されたのは1991年。当時は地域限定商品だったとのことなので、月見バーガーの全国展開を決定してくれた責任者には心からお礼を言いたい。

ちなみに1991年は東京・芝浦に伝説のディスコ「ジュリアナ東京」が誕生した年であり、バブルが崩壊しつつあった時代。日本景気が寂しくなる中、新たな希望の月…いや星として「月見バーガー」が出てきたのかもしれない。

月見バーガー、2003年からの値上げを見ると…

  • 月見マック価格一覧表(税抜、税込表記は除いて記載)

月見バーガーについて執筆時点で公式の情報が存在している2003年から2023年までの価格をまとめてみると、改めて差の大きさに驚く。2003年には190円で販売されていた月見バーガーは、2023年には420円と倍以上の値段になっているのだ。

なお、初登場時には290円だった月見バーガーが2003年には190円で販売されており、「190円」の価格設定がかなり攻めた戦略であった点には留意したい。

  • (日本マクドナルド 公式サイトより引用)

約20年の間に月見バーガーにどのような変化があったのかを探るために画像を発見できた2006年(240円)と2023年(420円)の月見バーガーを並べてみると、「ほぼ変わらない」ことが判明。価格の上昇に反して、見る限り使っている素材やボリュームのな変化はあまり見られなかった。強いて言えば、ベーコンの位置が卵の下から上に変わったくらいだろうか。

ただ、卵の1kgあたりの取引価格は2003年9月1日は141円、2023年9月1日は280円と約2倍に、アメリカ産小麦の価格は約2.5倍に上昇しているため、一概に「マックのコスパが悪くなった」とはいえないのが実情だ。
※参考:相場情報 | JA全農たまご株式会社,Commodity Markets

また、 通常のハンバーガーの価格は2003年は80円、2023年は170円だ。2003年の月見バーガーは通常のハンバーガーの2.37倍、2023年の月見バーガーはハンバーガーの2.47倍の価格設定。

通常のハンバーガーと月見バーガーの価格比が20年の間でほぼ変化していないことを考えると、月見バーガーだけが大幅に値上している訳ではなさそうだ。

懐かしの新作月見バーガーたち

通常版でも満足度の高い月見バーガーだが、近年はその年限定で登場する新作月見も大きな話題となっている。過去の限定月見バーガーを調べて並べてみると、ほとんど間違い探しだが普通に懐かしくて面白かった。

以下では、1998年に発売されて定番化している「チーズ月見」を除いた各年の個性派月見バーガーを、当時の話題を交えながら紹介する。

2000年代

2000年代に登場した新作月見は、北京オリンピックが開催された2008年発売の「ダブル月見バーガー」1種。価格は330円〜350円で、当時の月見バーガーより80円ほど高い値段設定となっている。

  • 2008年発売「ダブル月見バーガー」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

ダブル月見バーガーは、定番の月見バーガーにパティをもう1枚プラスしたメニューとのこと。シンプルながらもボリューミーな、肉好きにはたまらない月見バーガーだ。

2010年代

個性的な月見バーガーが続々登場する2010年代。2010年には発売20年目を記念して、ベーコンとチーズ各2枚、通常よりも2.5倍重いビーフパティを使った「大月見(だいつきみ)バーガー」が発売され、2013年までの4年間にわたってメニュー入りする人気商品となった。

  • 2010年発売「大月見(だいつきみ)バーガー」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

2013年には、大月見バーガーに加えて、パティのかわりにクリスピーなチキンを入れた「チキンチーズ月見」が新登場。2013年は東京へのオリンピック招致が成功した年であり、奇遇ながら月見シリーズに「チキン」を追加するおもてなしの心がうかがえる。

続く2014年には「きのこ月見」がデビュー。きのこ月見は知らなかったが、通常の月見バーガーにまいたけ、ひらたけ、エリンギの3種のきのこと玉ねぎのソテーを加えているらしく、普通に旨そう……。

  • 左:2013年発売「チキンチーズ月見」、右:2014年発売「きのこ月見」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

2015年の月見では、北海道に着目。北海道のチーズを60%以上含んだ「北海道チェダーチーズ」を使った「北海道チーズ月見」(370円)「チキン月見北海道チーズ」(380円)が発売された。

  • 左:2015年発売「北海道チーズ月見」、右:同じく2015年「チキン月見北海道チーズ」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

2016年と2017年には「満月チーズ月見」、2018年は「金の月見バーガー」、2019年は「黄金(おうごん)の月見バーガー」が登場。並べた画像を作成する際にゲシュタルト崩壊しかけたほど見た目は似ており、ごまのかかっていない満月風の丸いバンズが好評を博した事実がよくわかった。

  • 左上:2016年・2017年発売「満月チーズ月見」、右上:2018年発売「金の月見バーガー」、中央下:2019年発売「黄金(おうごん)の月見バーガー」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

なお定番の「月見バーガー」は、26年目となる2016年に「“二代目” 月見バーガー」としてリニューアル。秘伝の月見ソースの旨みとコクがより濃厚になったという。

2020年代

記憶に新しい2020年代のトップバッターは、2010年代後半の満月風バンズを受け継いだ「濃厚ふわとろ月見」。

韓国ドラマ「イカゲーム」が大ヒットした2021年には月見バーガーにチーズソースを加え、さらにチーズ風味のバンズを使用した「濃厚とろ〜り月見」が発売された。なお、もちろんこの商品にイカは入っていない。

  • 左:2020年発売「濃厚ふわとろ月見」、右:2021年発売「濃厚とろ~り月見」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

「濃厚」「とろとろ」が2年続いたあと、2022年には「こく旨 すき焼き月見」、2023年には「七味香る 牛すき月見」が登場。どちらもすき焼き風の甘辛ソースであり、2023年はピリッと辛い七味入りバーガーになっている。

  • 左:2022年発売「こく旨 すき焼き月見」、右:2023年発売「七味香る 牛すき月見」(日本マクドナルド 公式サイトより引用)

画像がかなり似ており驚いたが、たしかに「七味を加える」工夫では見た目はほぼ変わらない。1年前の「こく旨 すき焼き月見」が440円のところ、「七味香る 牛すき月見」は520円~と80円も値上げしていた。この1年の物価高騰の影響は特に大きく感じる……。

なお「七味香る 牛すき月見」の値段は520円~で、通常の月見バーガーよりも100円高い金額。七味と牛すき分の100円をどう捉えるかは個人によると思うが、美味しかったのでおすすめしたい。

月見マック、値上げをしても不動の秋の風物詩

2003年の190円から見れば、20年間で2倍以上値上げしていたマクドナルドの「月見バーガー」。

すさまじい値上げの事実を初めて知ったときは衝撃を受けたものの、卵の値段や通常バーガーとの価格比を調べた結果、「物価上昇が激しすぎるからしょうがない」との結論に至った。

月見バーガー自体に大きな進化が起きたかと問われると微妙なところだが、モバイルオーダー、デリバリーなど2003年では考えられなかったサービス全体を含めれば、「2倍以上の値段を払う価値はある」と筆者は考えている。

2023年の月見マックの販売は、10月下旬ごろに終了予定。2003年より高くなったとはいえ、旨いのだから買うしかないな……。