9月1日、関東大震災から100年を機に、自然災害や社会的なリスクなどに対応できるように、生活者のレジリエンスを高めることを目指す「レジリエントライフプロジェクト」が始動した。
本プロジェクトは、I-レジリエンスが主体となり、I-レジリエンス、タイガー魔法瓶、東京海上日動火災保険、日本製紙、日本製紙クレシア、 博報堂、国立研究開発法人防災科学技術研究所、マイナビ、三菱総合研究所、読売新聞東京本社(五十音順)の10法人が協力・共創パートナーとして、さまざまなアクションを実施していく予定だ。
レジリエンスとは、逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセスのこと。もともとは物理学などの用語であったが、「災害にあっても被害から早く回復することができる能力は重要である」という観点から、防災においても使われるようになった。
9月17、18日には、日本最大級の防災イベント「ぼうさいこくたい2023(第8回防災推進国民大会)」が横浜国立大学にて開催され、「どんなリスクも乗り越えもっと豊かになる100年を目指す レジリエントライフという生活様式」をテーマにセッションが行われた。
■「レジリエントライフ」を実現する各社の取り組み
「ぼうさいこくたい2023」の登壇者は以下の通り。
小林 誠氏(I-レジリエンス 代表取締役社長)
林 春男氏(京都大学名誉教授/I-レジリエンス顧問)
田端 憲太郎氏(国立研究開発法人防災科学技術研究所 上席研究員)
井関 律氏(博報堂 執行役員)
高津 尚子氏(日本製紙クレシア 取締役 マーケティング総合企画本部長)
西 達矢氏(マイナビ 取締役 常務執行役員)
関根 秀真氏(三菱総合研究所 参与 レジリエンス担当本部長)
吉田 啓一氏(博報堂 マーケットデザインコンサルタント)
浅見 彰子氏(タイガー魔法瓶 取締役)
針原 陽子氏(読売新聞東京本社 防災ニッポン編集長)
冒頭ではI-レジリエンス 代表取締役社長 小林誠氏が登壇し、「レジリエントライフプロジェクト」の概要を紹介。社会課題の解決のために企業や大学、NPOなどがそれぞれの強みを活かして業種を越えて連携し、より大きなインパクトを創出する「コレクティブインパクト」の重要性が語られた。
続いて各社のそれぞれの取り組みが紹介された。
タイガー魔法瓶の浅見彰子氏は「関東大震災の際に、タイガー魔法瓶の製品は、他のメーカーの製品と比べて破損が少なかった。このことから全国から注文が殺到し、タイガー魔法瓶の品質の高さを広く知らしめるきっかけとなりました」と説明。防災とレジリエンスに関する理想的なモデルが示された。
同社では、関東大震災から100年を契機に防災グッズとして電気やガスが不要で、停電や断水時でも使用可能な「魔法のかまどごはん」を発売する。新聞紙1部だけでご飯を炊くことができ、アウトドアでも活躍しそうである。
読売新聞東京本社 防災ニッポン編集長の針原陽子氏は、「読売新聞では『防災報道』に力を入れてきました」と話す。2020年9月には「防災ニッポン」を創設。さらに、2021年3月には防災を意識する企業・自治体向けのメディア「防災ニッポン+」も開始。こうしたメディアを通して「レジリエントライフ」を伝えていくとアピールした。
マイナビも人材という観点から、本プロジェクトに参加している。日本は地震大国であり、大きな地震がいつ発生してもおかしくないため、人材面でのレジリエンスも求められる。
マイナビ 取締役 常務執行役員の西 達矢氏は「大災害があったとしても、いかにして立ち上がり、次の社会を作るかが大きな課題と考えています。人材は大きな意味と価値を持ちます。被害を受けたエリアの方にいかに迅速に、場合によっては無料ということも視野に含めてのサービスを検討しています。また、災害時、ボランティアスタッフと仕事のミスマッチが起こりやすいと聞いたこともあり、ボランティアのマッチングという面でもお役に立ちたいです」と語った。
レジリエントライフの浸透・定着には、生活者のライフスタイル全体で考え、対応していく必要がある。本プロジェクトは、今後はさまざまな業種・業態と協力・共創していくそうだ。
■特別なことは必要なくローリングストックから
最後は、京都大学の林春男氏が登壇し、2035年頃に南海トラフ地震がおきてもおかしくないと警笛を鳴らす。
そのうえで「人生にはさまざまな困難があり、それを乗り越えていく力は大切です。大災害はめったに起きませんが、起きると人生の大転機になります。私たちは自助・互助・共助の力を高め、冷静に、大切な人と大過なく困難をやり過ごせる力を身につける必要があります。特別なことは必要なく、気に入っているものを切らさないローリングストック(常に一定量の食料や日用品を備蓄しておくこと)といったことから始められます」と延べ、閉会となった。