俳優の中村倫也が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『ハヤブサ消防団』(毎週木曜21:00~)が、きょう14日に最終回を迎える。今作は、山間の小さな集落を舞台に描くミステリー。物語は放火犯連続放火騒動や住民の不審死を経て、宗教団体がハヤブサ地区を浸食していくという戦慄の展開へ。最終回で三馬太郎(中村倫也)は、随明寺住職・江西佑空(麿赤兒)が聖母アビゲイル教団を受け入れたことにがく然。立木彩(川口春奈)がこのままアビゲイル教団の“新聖母”となるのか……ハヤブサに襲いかかる陰謀のすべてが明らかになる。
そんな最終回を目前に、今作を手掛ける同局の飯田サヤカプロデューサーにインタビュー。池井戸潤氏の原作小説を映像化するにあたって注力したロケーションへのこだわりや、主演・中村の俳優というポジションを超越した座長ぶり、ベテランキャストたちの魅力、そして最終回の見どころについて話を聞いた。
■池井戸潤作品の中では“変化球”『ハヤブサ消防団』の魅力
――飯田Pにとって『民王』に続く池井戸潤作品の映像化となりますが、原作にどんな魅力を感じていましたか。
池井戸さんの作品はとにかく面白いので、また映像化で携わることができたらと思っていました。『民王』にも感じていたのですが、『ハヤブサ消防団』も世間でイメージされる池井戸潤作品の王道とはまた違う、「池井戸先生こういうのも書くの!?」という変化球のようなところが好きで。実は、田舎が舞台のドラマって数字を取るのが難しいと言われているのですが、私も現代の東京人として都会に疲れていますし(笑)、今の時代は開放的な映像が求められている気がしていて、田舎が舞台の作品はニーズがあるのではと思っていました。
――正にハヤブサ地区の開放的な風景、映像美もドラマの大きな魅力的になっています。ロケ地探しでこだわったポイントがあれば教えてください。
池井戸さんの地元である岐阜県八百津町のある集落が「ハヤブサ地区」のモデルになっていると聞いて、スタッフたちと実際に見に行きました。おばあさんがたまに歩いているくらいで、本当に人のいないのどかで素敵な場所でした。ドラマにも出てくるのですが、滝があったり、イノシシを解体している人がいたりと田舎ならではの魅力が詰まっていて。ただ、撮影するとなると東京から来るのは距離的に難しかったので、そこに似た場所をスタッフが頑張って探してくれました。
――日中のシーンも美しいですが、第3話で太郎と中山田(山本耕史)が山の中で遭難するシーンも自然の怖さが醸し出されていて魅力的でした。
ヒルにめちゃくちゃかまれながら撮影した記憶があります(笑)。あのシーンに限らずですが、どのロケ地にもヒルがいて。監督はずっと定位置にいて場所を離れられないこともあり、気がついたら靴下にヒルがびっしりということもありました。ヒルに効く強い虫よけにどんどん詳しくなっていきましたね。居酒屋△(さんかく)のシーン以外はほぼすべてロケだったので、「遠さ・虫・暑さ」と戦い続けたドラマでした。
■“昔ながらの古き良き日本のミステリー”を意識
――ヒルのお話は想像するだけでぞっとします! 今作は劇伴をはじめとした演出面で、“昔ながらの古き良き日本のミステリー”に仕上がっているような印象を受けたのですが、意識された点はありますか。
八つ墓村や金田一耕助シリーズ、横溝正史作品のようなオカルトホラーは昔からたくさんあって、映画や配信作品では画のタッチも含めて怖くて面白い作品が今も作られていますが、地上波の連ドラでは最近あまりやっていないよねと、脚本を作っている段階から話題に出ていました。そんな背景を鑑みて、“昔ながらの古き良き日本のミステリー”のニュアンスは意識していたので、視聴者の方にも伝わっていたらうれしいです。
――第1話で川の中から浩喜(一ノ瀬ワタル)の死体が勢い良く飛び出してくるシーンもオカルトホラー作品のテイストを感じました。
あのシーンは、原作の「水死体がロケットみたいに出てくる」という表現を再現したかったんです。
――確かに、その表現そのままに映像が出来上がっていました! そのほかにも、池井戸さんの文章や思いをドラマで表現したいと考えていた箇所はありますか。
『ハヤブサ消防団』には、「マムシの目とホタルの光を間違えてはいけない」「音の静けさが逆にうるさい」といった、池井戸さんが父親や友達から実際に聞いていた話や、消防団がいつまで存続できるか分からないという現状など、なくなりゆく田舎の風俗や文化を小説に残しておきたいという池井戸さんの思いが込められています。その思いを受け取って、映像にも残していかなきゃいけないよね、と監督とも話をしました。
■見逃し配信2,000万回再生を超える話題作に
――見逃し配信が第1話〜第8話の配信累計で2,000万再生を超え(7月13日~9月11日 2,050万1,039回を記録)る話題作になりましたが、この反響についてはいかがでしょうか。
中村さんやおじさまたちのおかげですね。俳優さんたちのやる気と、スタッフたちが汗にまみれて頑張ったことが数字に繋がってうれしいです。一体誰が見ているのか、プロデューサーとしては実感が湧かず不思議なくらいなのですが(笑)、本当にありがたいです。
――SNSでは考察もすごく盛り上がっていますが。
むしろ、もっと考察を盛り上げなきゃいけないと思っているのですが、実は苦手なんです(笑)。原作のミステリー要素をドラマ用に分かりやすくするために、登場人物を整理してまとめたりといった作業はしましたが、「考察されるドラマにしよう」と軸を立てて構成していったわけではないので、やりきれなかったポイントかもしれません。