錬金術をテーマにした新感覚の仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーガッチャード』は、主人公・一ノ瀬宝太郎(演:本島純政)が2種類の「ライドケミーカード」を用いて二つの異なる物質を錬成=「ガッチャンコ」し、いくつもの戦闘スタイルを手に入れる仮面ライダーが人々を守って凄絶な戦いに挑む物語だという。
本作では、高校の地下に隠された「錬金アカデミー」で錬金術師になる勉強をしている宝太郎と異なる立ち位置で、上部組織から「人工生命体(ケミー)」を回収するため派遣されてきた超A級の錬金術師・黒鋼スパナなる青年が登場。彼は自身で作りあげた強化スーツを装着して「ヴァルバラド」となり、ガッチャードにとっては強力なライバル的存在である。ここでは、クールな黒鋼スパナを演じる藤林泰也に単独インタビューを行い、スパナを演じる上でのこだわりポイントや、自分のもう一つの姿であるヴァルバラドの印象について、役とは一味違う明るさ、爽やかさを交えながら語ってもらった。
――黒鋼スパナ役はオーディションで決まったとうかがいました。自分にスパナ役が来るかもしれない、と予感されたことはありましたか。
今回の仮面ライダーが「学園」を舞台した作品であることは、オーディション台本をいただいた時点で分かっていましたので、宝太郎役に選ばれるのは正直キツいかな……という気持ちでした。そんな中、少し年上のスパナ役に自分がうまく合致して、役をいただけたように思っています。
後になってから湊陽佑プロデューサーから僕がスパナ役に決まった理由をうかがいましたけど、オーディション台本で宝太郎(本島純政)と組んだとき、すごく宝太郎の芝居がよくなったと感じたそうです。相性というか、宝太郎とスパナの空気感に僕らが合致したんでしょうね。2人の会話のテンポや、フィーリングが噛みあって、そこで田崎竜太監督(田崎監督の「崎」は立つ崎が正式表記)や、製作の方たちに「これでイケる」と思われたのではないかと考えています。
――スパナは非常にクールで、孤高の存在というイメージがあります。藤林さんはスパナを演じるにあたり、どんなお芝居を心がけようとしていますか。
スパナはめちゃめちゃクールな男で、普段の僕とはかなり性格が異なっています。演じる側としては、クールな性格だけど「冷たい」人間とは思われないようにしようと意識をしました。周囲にはクールにふるまうけれど、心の奥底に熱いものを抱いている。そういう部分も台本を読んだときに見えましたので、うまく芝居によって表現できれば多くの人々から愛されるキャラクターになっていくんじゃないかと期待しています。
――スパナは錬金アカデミーの卒業生、そして超A級の錬金術師なので、錬金術師になりたての宝太郎との対立が興味深いドラマを生みそうですね。
宝太郎とスパナはライバル同士という関係になりますが、最初の立ち位置としては、ライバルとは呼べないくらい、実力的な差があるんです。スパナのほうが何をするにも上手く出来てしまうのに対して、宝太郎は必死に喰らいつこうとする。やがて、スパナは自分との差を埋めようと急成長していく宝太郎を強く意識して、もっと引き離そうとしていきます。錬金術師として、相乗効果で成長していく2人が、ドラマの鍵を握ります。宝太郎と一緒に、いっそう深みを増した人物を演じることができたらいいですね。
――藤林さんが子どものころに観ていた『仮面ライダー』シリーズはどんな作品ですか。また、他のヒーロー作品でも好きだったものはありますか。
いちばん好きだった仮面ライダーは『仮面ライダー電王』(2007年)や『仮面ライダーキバ』(2008年)あたりです。スーパー戦隊だと、幼いころ『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003年)が大好きだったのを、おぼろげながら記憶しています。保育園時代、先生が「かっこいいアバレンジャーになれるよう、応援しているね!」と、誕生日のメッセージを書いてくれたのがいい思い出です。
その後ハワイで暮らすことになって、日本の特撮作品からは離れていくのですが、『POWERRANGERS』が放送されていたりして、どこの国でも特撮ヒーローは大事な存在なんだなあって、しみじみ思いました。ところで、ハワイでは『仮面ライダー』などの単体ヒーローのことをみんな「キカイダー」と呼んでいるみたいなんです。それだけ、かなり昔に放送していた『人造人間キカイダー』(1972年)のことを、ハワイの方たちが大好きなんだそうですね。おもちゃ屋さんでキャラクター玩具が人気あるのは日本もハワイも変わりませんし、子どもたちがヒーローに憧れる気持ちは世界中どこも一緒なんだなと実感しました。