アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、13日・20日の2週にわたり放送される『生きる歌 ~三角公園の歌姫とわたし~』。大阪・西成の「三角公園」で、命の叫びを響かせるジャズシンガー・坂田佳子を追った作品だ。

多くの人たちを魅了する背景に、彼女が人生で積み重ねてきたものがあると実感したきゃりー。一方、有名になることで、周囲が見る目と自分の思いとのギャップに葛藤を感じるという点では、共感する部分もあったという――。

  • 歌う坂田佳子 (C)フジテレビ

    歌う坂田佳子 (C)フジテレビ

■絡まれて怒った後にハグ「そう簡単にはできない」

かつては高級ホテルの専属歌手でライブハウスにも引っ張りだこだったが、自由過ぎる言動やアルコール依存症による問題行動で、数々の店を出入り禁止になり、西成に流れ着いた坂田。しかし、その波乱万丈な生き方と魂の歌声で多くの人を魅了し、人生相談をされることもある。

その姿に、「私もファンの方から『きゃりーちゃんに勇気や元気を頂いてます』と言われるのですが、そっくりそのまま返したい気持ちですね。ファンの皆さんが応援してくれるからステージに立って歌えているというのは、佳子さんも同じなのではないかなと思います」と共感。

ただ、「前編で、絡んできたおっちゃんに佳子さんが怒った後、ハグをしていましたが、それはできないです(笑)。私だったら、もう二度と会いたくないと思うだろうし、そこは、やっぱり人生でいろんなことを経験してきた彼女の考え方だと思うので、そう簡単にできないことをしてしまうのも、佳子さんの魅力だと思います」と捉えた。

  • 三角公園で歌っていた坂田佳子 (C)フジテレビ

■祖母を亡くした少年への言葉に衝撃

前編では、祖母を亡くして落ち込んでいる少年に、坂田が「おばあちゃんはずっとここにおるんや!」と声をかける場面があったが、きゃりーはその言葉が心に刺さり、衝撃を受けたという。

「私もここ1年ぐらいで大切な人が亡くなってしまって、苦しんでいる姿も見ていたので、どうしても死に対する寂しいという気持ちや、また会いたいという気持ちが強かったんです。でも、佳子さんが『ここにおるんや!』と言い切っていたので、そのマインドになれたら、きっとあの子もこれから先の人生で、もっともっと強くなれるんだろうなと思いました」

その言葉は、坂田だからこそ響くものだと改めて実感し、「いろんなことを経験してきた佳子さんの力強さと、魂の歌声だからこそ、刺さったんだと思います」と強調。自身もファンクラブイベントで、スナックのママになりきってファンの悩みを1対1で聞く「スナックきゃり子」という企画を行っているが、「佳子さんから出てくる言葉が、自分の口から出てくるのはまだまだ難しいと思うので、人生いろんなことを経験して歩んでいきたいなと思います」と精進する意欲を語った。

  • お酒を瓶のままラッパ飲みする坂田佳子 (C)フジテレビ

■『ザ・ノンフィクション』で人生勉強に

今回の放送では、SNSなどで話題になった結果、坂田が歌手としてではなく“見せ物”になってしまった現実に葛藤する姿も登場する。そこからも、共感した部分があったのだそう。

「私もきゃりーぱみゅぱみゅとして世の中の方々が知ってくれたタイミングで、佳子さんのようにファンじゃない方に絡まれることがあったりして、人気者になったからといって幸せではないんだなというのを感じたことがありました。それに、自分の本名ではない“きゃりーぱみゅぱみゅ”という名前ばかりがどんどん大きくなっていって、ありのままの自分を果たして誰が好きでいてくれるんだろうと、ギャップを感じてしまったこともあったんです。人気にならなくて苦しいだけじゃなくて、人気になっても苦しいというのは、この業界の友達と話していても結構思うことなのですが、そのステージに立たないと感じられない喜びや、スペシャルな景色というのもあるので、みんなそのバランスが崩れないようにできればいいなと思います」

そのギャップを解消することができた“処方せん”の1つが、毎週欠かさず見る大好きな『ザ・ノンフィクション』だった。

「忙しくて、毎日毎日、詰め・詰め・詰めってなってくると心の余裕がなくなってくるので、私はどんなに忙しいときでも『ザ・ノンフィクション』を見て、“こういう世界で生きている人がいるんだ。私も頑張ろう!”と前向きになれるんです。だから、自分の息抜きでもあるし、人生勉強になっていますね」

その上で、今回の見どころを聞くと、「“西成でよく目撃されていた謎の女性”だったんですけど、佳子さんの生き様や背景を知れて、思いがあってあそこで歌ってるんだということが分かりました。そして、昔の恩を忘れず、今も愛されているというところで彼女の魅力が分かりますし、そのストーリーが後編につながっていきます。“人生疲れちゃったな”とか“夢も希望もないな”とか、私もわりと思うことがあるのですが、この『ザ・ノンフィクション』を見て救われる方がたくさんいると思います」と呼びかけた。

今回の『生きる歌 ~三角公園の歌姫とわたし~』は前・後編ともに、放送直後から9月3日まで、TVer・FODで見逃し配信される。

  • きゃりーぱみゅぱみゅ

●きゃりーぱみゅぱみゅ
1993年生まれ、東京都出身。11年夏、中田ヤスタカ(CAPSULE)プロデュースによるミニアルバム『もしもし原宿』でメジャーデビュー。その後、『NHK紅白歌合戦』に3回出場し、13年に初めてのワールドツアー(8つの国と地域、13都市)を成功させ、これまでに4回のワールドツアーを行うなど国際的に活動する。デビュー10周年イヤーとなる21年、世界中を巻き込んだ新たな企みの発信地として新レーベル「KRK LAB」を発足し、22年に過去最大規模の全国ツアー『きゃりーぱみゅぱみゅ10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022』を開催。4月には米国最大級の野外音楽フェス『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』に出演した。音楽活動にとどまらず、現在は『世界の何だコレ!?ミステリー』(フジテレビ)、『u&i』『えいごであそぼ Meets the World』(NHK Eテレ)にレギュラー出演。今後、10月1日に『ASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023』、10月7日に『長岡米百俵フェス2023』、また、『MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!! 2023』(11月3日~5日)に出演予定となっている。