東急電鉄は8日、東横線に導入する有料座席指定サービス「Q SEAT」の報道関係者向け体験乗車取材会を実施した。8月10日から東横線でもサービスを開始し、平日夜間の19時30分以降、渋谷駅始発の下り急行5本で有料座席指定サービスを提供する。

  • 8月10日から、東急東横線でも有料座席指定サービス「Q SEAT」が開始される

有料座席指定サービス「Q SEAT」は、大井町線で2018年12月から開始し、平日夕夜間に大井町駅を発車する急行の一部列車(長津田行)でサービスを提供している。ロング・クロス転換車両を連結し、有料座席指定サービスの提供時、車内をクロスシートに転換して運行(その他の運用時はおもにロングシートで運行)。無料Wi-Fiと各座席の電源コンセントを利用でき、クロスシートの一部座席でドリンクホルダーも使用できる。

座席指定を受ける場合、区間や大人・こどもに関係なく1人500円の列車指定券が必要になるが、途中駅からの乗車であっても着席が保障され、ゆったり座って帰れるようになる。東急電鉄によれば、大井町線の「Q SEAT」は定員45名に対し、平均8割の乗車率を記録しているという。

東横線に導入される「Q SEAT」は、10両編成の5050系(一部編成)の4・5号車にロング・クロス転換車両を連結し、車内の内装と設備は大井町線の「Q SEAT」と共通。有料座席指定サービスの対象となる列車は1日5本、渋谷発元町・中華街行の下り急行として、渋谷駅19時35分発から同駅21時35分発まで、30分おきに運行される。

渋谷駅から横浜駅まで列車指定券が必要だが、みなとみらい線内(横浜~元町・中華街間)はフリー乗降区間となり、指定券がなくても「Q SEAT」車両に乗車できる。列車指定券は、乗車当日に急行停車駅の窓口(現金のみ)か、インターネットの「Qシートチケットレスサービス」(クレジットカード決済のみ)で購入できる。

8月8日の体験乗車取材会では、5050系4113編成の「Q SEAT」車両に渋谷駅から元住吉検車区まで乗車。5050系の一般車両は赤色とピンク色のラインだが、「Q SEAT」車両は赤一色のラッピングと白色のロゴマークが目立ち、鉄道をよく知らない人にもわかりやすい。東横線の「Q SEAT」車両は昨年からロングシート専用で運行開始しており、相鉄線に乗り入れたこともある。8月10日以降、東横線・みなとみらい線でクロスシート車両としても運用されることになる。

  • 渋谷駅5番線に、「Q SEAT」車両を連結した5050系4113編成が試運転列車として入線。赤一色の外観に白文字のロゴマークが目を引き、LED表示器に「のるるん」も

  • 武蔵小杉駅を発車すると地上線へ降り、踏切を渡って元住吉検車区に到着

「Q SEAT」車両のクロスシートに座ると、座面のやわらかさは一般車両のロングシートとあまり変わらないが、体感としては「Q SEAT」車両のほうがやらわかく感じた。座席幅が広く、背もたれが高くなり、ヘッドレストを備えた分、一般車両より快適性が上がっていると思えた。ヘッドレストもかたすぎずやわらかすぎず、ちょうど良いクッション性で頭を支える。

車内では、無料Wi-Fiをはじめ、座席の下(車端部席はひじ掛け)に設置された電源コンセントを使用可能。PC・スマートフォン等の充電や作業をしながら過ごすことができる。ドリンクホルダーはクロスシートの一部座席で使用可能(車端部とクロスシートの最前列は使用できない)。飲み物をドリンクホルダーに置きたい場合は、クロスシートの中央列か後方列を指定すると良いだろう。肘掛け後方にオレンジ色のレバーがあり、これを引くことで座席を手動で回転させることができる。

  • 背もたれが黄緑色のクロスシートが並び、木目調の床や、サービス提供時の暖色照明も特徴的。クロスシートは回転も可能

  • 座席の下に電源コンセントを設置

  • 一部のクロスシートでドリンクホルダーも使用できる

  • オレンジのレバーを操作することで、クロスシートの回転が可能

  • 車端部の優先席も座席指定の対象に。フリースペースも設置されているが、「Q SEAT」のサービス提供時は使用しない

車端部に設置されている3人掛けの優先席も、「Q SEAT」のサービス提供時、座席指定の対象に。クロスシートは36席、3人掛けロングシートは9席で、1両あたりの定員は45名。4・5号車の合計で定員90名となる。

なお、有料座席指定サービスの提供時、ドアは各車両の渋谷方1カ所のみ開き、他のドアは乗降制限幕で封鎖される。フリー乗降区間の横浜~元町・中華街間では、すべてのドアから乗降可能。有料座席指定サービスを適用した列車が元町・中華街駅に到着すると、ロングシートに切り替えることなく、そのままの向きのクロスシートで折り返す。その際、座席指定は行わず、すべてのドアから乗降可能になる。

  • クロスシートからロングシートへ転換する様子。朝や日中などの時間帯はロングシートで運行する

列車指定券の払戻しについて、利用者都合による払戻しの場合、手数料として100円かかる。車両交換、列車や区間の運休、「Qシートチケットレスサービス」のシステム障害、大幅な混雑または遅延の発生など、東急側の都合で払い戻す場合、手数料なしの払戻しとなる。窓口購入の列車指定券は急行停車駅の窓口で、「Qシートチケットレスサービス」で購入した列車指定券は利用者自身で払戻しの手続きを行う。「Qシートチケットレスサービス」での手数料なしの払戻しは自動で行われる。

今回の体験乗車取材会では、東急電鉄の橋詰航季氏(鉄道事業本部運輸部運輸計画課)が報道関係者の取材に対応。利用者のターゲットに関して、渋谷駅から横浜駅またはみなとみらい線に直通する利用者をメインとしており、乗車率は「東横線については、時間帯も19時以降というところで、おそらく70%程度になると見込んでおります」とのことだった。すでに指定券の購入方法等について問い合わせを受けていると言い、「サービス開始直後は大変人気なサービスになると考えております」と橋詰氏は語った。

「Q SEAT」のサービス提供を急行に限定した理由についても質問があった。これに橋詰氏は、「より多くのお客様に途中駅からでもご利用いただける、着席のニーズを鑑みて急行に設定させていただいた」と回答した。

筆者は東横線に導入する「Q SEAT」のサービス開始日が発表された後、大井町線の「Q SEAT」にも乗ってみた。筆者が乗車した列車は全席完売となり、大井町駅以外の駅からも利用者が乗ってきたため、大井町線の急行停車駅(途中駅も含む)から長津田方面へ帰る沿線住民らにとって十分な利用価値があるのではないかと感じた。東横線の「Q SEAT」は、利用者層や利用状況など、大井町線の「Q SEAT」とどう変わっていくのか。運行開始後も目が離せない。