三菱自動車工業が新型「トライトン」を世界初公開し、2024年初頭に日本でも発売すると発表しました。日本では珍しいピックアップトラックというタイプのクルマですが、トライトンにはどんな特徴があるのでしょうか。タイのバンコクで実物を確認してきました。

  • 三菱自動車の新型「トライトン」

    日本上陸決定! 三菱自動車の新型「トライトン」(本稿の写真は撮影:諸星陽一)

ピックアップトラックってどんなクルマ?

三菱自動車工業は2023年7月26日、タイ王国の首都バンコクにある国際会議場「QSNCC」(クイーン・シリキット・ナショナル・コンベンション・センター)において、フルモデルチェンジした新型ピックアップトラック「トライトン」を発表しました。2024年初頭には日本でも発売するとのことです。

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    三菱自動車が2024年初頭に日本で発売する新型「トライトン」

「ピックアップトラック」も荷台を有するトラックの一種ですが、大型のトラックなどとは少し異なるパッケージングです。トライトンなどは、その積載量から「1トンピックアップ」と呼ばれます。

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  • 新型「トライトン」の荷台

1トンピックアップのボディサイズは、大型の乗用車とほぼ同一です。タイで発表された新型トライトンの「ダブルキャブ」(この先で説明します)は全長5,320mm×全幅1,865mm×全長1,795mm。かつて三菱自動車が販売していた「パジェロ」のロングは4,900mm×1,875mm×1,870mmだったので、トライトンはパジェロよりも全長が長く、全幅が狭く、全高が低いのですが、全体としてのサイズは近いものです。

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  • 新型「トライトン」はかつての「パジェロ ロング」と似たようなサイズ感だ

また、大型トラックの多くはエンジンをフロントシート下に配置する「キャブオーバー」というレイアウトを採用しますが、ピックアップトラックの場合は前からエンジンルーム、キャビン(キャブ)、荷台というレイアウトを採用することが特徴的です。

日本のピックアップトラック事情

1960~1970年代には、日本でもこうした小型のトラックは多く存在していました。小さいものでは日産自動車「サニートラック」やトヨタ自動車「パブリカピックアップ」、それよりも少し大きなものでは「ダットサントラック」や「ライトエーストラック」、「ハイラックス」などです。これらの多くは商用として使われていましたが、一部は一般ユーザーがレジャー用として使うこともありました。

その後、商用のトラックは徐々にニーズが減少、レジャー用のピックアップトラックも徐々に姿を消していきます。日本で商用トラックのニーズが減少したのは流通機構や商習慣に変化があったからでしょう。例えば昔の住宅建設は、建設地に小型トラックで資材を運んで作業をしていましたが、現在は多くの場合、工場である程度整えた資材を大型トラックで現場に輸送して建設します。働く人たちも、軽バンや小型もしくは普通1ボックス(「ハイエース」や「キャラバン」など)で現場に向かうことが多くなっています。

海外では大人気?

一方で、海外ではピックアップトラックの需要が多い国もたくさんあります。今回、三菱自動車がタイでワールドプレミアを行ったのはトライトンの工場がタイにあるからなのですが、タイはもちろん、ASEAN各国ではピックアップトラックの需要が非常に高いのです。

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    工場のあるタイを含め、ASEAN諸国ではピックアップトラックの人気が高い(新型トライトン発表会場で撮影)

オセアニア地区や北米でもピックアップトラックは人気です。汎用性が高く、乗用車としてもトラックとしても使えるパッケージングを備えていながら、フレーム式のシャシを使うなど構造が比較的シンプルで、製造コストを抑えることができるため、販売価格もリーズナブルです。さらに国によって異なりますが、商用モデルの税金は安いため維持費も抑えることが可能で、生活やビジネスで実用的に使えるということで多くの支持を集めているのです。

COVID-19がまん延する直前の2019年におけるタイの自動車生産台数を見ると、乗用車全体の生産台数が約79.5万台であるのに対し、商用車の生産台数は約121.2万台と圧倒的に多くなっています。その商用車のうち、117.8万台はピックアップトラックなのです。販売台数(2019年)を見ても、乗用車は約40万台ですが1トンピックアップ(トライトンやハイラックスなど)は約49万台と上回っています。

新型「トライトン」の特徴は?

トライトンは1986年に導入された「フォルテ」というモデルにルーツを持ちます。フォルテはその後、「ストラーダ」(2世代)を経てトライトンにバトンをつなぎます。トライトンは今回のモデルで3代目、つまりフォルテから数えて6代目に当たります。なお、オセアニア地区などでは「L200」という車名が用いられます。今回のワールドプレミアで三菱自動車社長の加藤隆雄氏は以下のようにスピーチしています。

「--前略--(トライトンは)モデルチェンジするたびに進化を遂げ、これまでに世界約150カ国で560万台以上を販売、現在では当社の世界販売台数の約2割を占める最重要モデルのひとつとなっています。--中略--新型『トライトン』は、ここタイで発売した後、アセアン各国やオセアニアなどに順次展開を拡大していきます。また、私ども三菱自動車にとってホームマーケットである日本にも、2024年初頭に投入する予定であり、日本にとっては実に約12年ぶりです。最終的には100カ国以上で年間20万台規模となる見通しで、まさに当社の屋台骨を支える最重要モデルであり、成長フェーズの幕開けに投入する、第一弾となる世界戦略車です--後略--」

新型トライトンは3つのボディタイプを持ちます。ヒンジドア1対の「シングルキャブ」(1列シート)、ヒンジドア2対の「ダブルキャブ」(2列シート)、もうひとつは、ヒンジドアの後ろに小さなドアを設けて観音開きとし、1列シートを配置する「クラブキャブ」です。クラブキャブはシート後ろに荷物が積載できるモデルで、リクライニング量も多めに確保されます。日本導入が予定されているのはダブルキャブとなります。

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  • ダブルキャブは2列シートで使い勝手がよさそう

搭載するエンジンはすべて2.4リットルのディーゼルです。もっともパワフルなモデルは新型ターボチャージャーと新たな燃焼方式を採用し、最高出力150kW/最大トルク470Nmを実現。そのほかはVGターボのタービン容量の可変で出力調整を行っており、135kW/430Nm仕様と110kW/330Nmが選べます。

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  • ディーゼルエンジンを搭載

4WD方式はシンプルな「イージーセレクト4WD」と、かつてパジェロなどで使っていた高性能な「スーパーセレクト4WD」を用意。スーパーセレクト4WDには、三菱が誇る車両安定機構「アクティブヨーコントロール」(AYC)や、ブレーキの4輪独立制御によりLSD効果を発揮する「アクティブLSD」を組み合わせ、悪路走破性を向上しています。

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    三菱が誇る4輪駆動技術を採用

ピックアップトラックではありますが、レーダークルーズコントロール(ACC)、衝突軽減ブレーキ(FCM)、後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付)、後退時交差車両検知警報システムなどADAS機構も充実。万が一の際に緊急通報を行うための「三菱コネクト」も搭載しています。スマートフォンの専用アプリを使えば、駐車位置の確認やリモート操作による乗車前のエンジン始動なども可能。リモートエンジン始動については、ASEAN各国などの暑い地域ではかなり重要な装備とされているとのことです。

近年のアウトドアブームによって、日本でもピックアップトラックの人気はジワジワと上昇中。アウトドア系のイベントなどでは、内外のピックアップトラックの姿を見かけることが多くなっています。

そして、もうひとつの注目点は、新型トライトンが、近年減少傾向にある本格的クロスカントリー4WDのシステムを備えていること。クロカンファンが求める性能はいくつかありますが、センターデフをロックできることとトランスファーで低速ギヤを選べることは重要視されます。トライトンが搭載するスーパーセレクト4WDは「4HLc」というセンターデフロックモードと、「4LLc」というセンターデフロック&トラスファー低速ギヤモードを選択可能。多くのクロカンファンが求める機能を持っているのです。

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  • 新型「トライトン」はクロカンファンが求める機能を備えたピックアップトラックだ

2024年初頭登場を前に、今から多くのファンが期待を寄せるのも当然のことといえるでしょう。

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