東京国立博物館 法隆寺宝物館の中2階に、法隆寺ゆかりの至宝を能動的に鑑賞できる、体験型の「デジタル法隆寺宝物館」が開室してから半年。8月1日から「法隆寺金堂壁画 写真ガラス原板デジタルビューア」の展示が始まりました。

  • 「法隆寺金堂壁画 写真ガラス原板デジタルビューア」の展示に替わったデジタル法隆寺宝物館

この「デジタル法隆寺宝物館」は、保存上の理由で常時展示することがかなわない法隆寺ゆかりの名宝を、グラフィックパネル(複製)と大型8Kモニターのデジタルコンテンツで、細部までを自在に鑑賞できるという常設空間。7月末まで、法隆寺の絵殿の内側を飾っていた国宝「聖徳太子絵伝」の原寸大のグラフィックパネルを、法隆寺の絵殿にあったときと同じ「コの字」型の配置で展示していました。

新たな展示となる「法隆寺金堂壁画」は、かつて法隆寺金堂の内壁にあった大画面壁画。大壁4面の四方四仏と、小壁8面に描かれた菩薩の計12面からなるこの壁画は、重要文化財にも指定されている7~8世紀の貴重な絵画です。ただ、1949年に不慮の火災の被害に遭い“焼損”、つまり焼けて損なわれてしまいました。オリジナルは法隆寺に保存されているそうですが、状態が芳しくないため基本的には非公開。では今回の展示は? というと、焼損前の1935年に撮影された写真ガラス原版を、デジタルスキャンしたグラフィックパネル(複製)で、焼損前の金堂壁画の姿を伝えるもの。

さらに展示室に設置された70インチの8Kモニターで楽しめるのが、デジタルコンテンツ<「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原版デジタルビューア>。363枚の写真ガラス原版から専用の高精細スキャナーで取得した高精細画像とあって、実物よりも大きく、肉眼よりも作品に近づいての鑑賞が実現、繊細なタッチや筆遣いなど細部に至るまで、超クローズアップでじっくり見ることができます。ちなみに、重文指定の金堂壁画を写したこのガラス原版自体も、貴重な歴史資料として重文に指定されているそう。

  • 復元模造 伎楽面・伎楽装束も入れ替え。伎楽面は「迦楼羅(かるら)」、装束は「袍(ほう)」を展示中

唐の文化を積極的にとりいれた飛鳥時代に、中国の最先端の作風と技術をとりいれて描かれた、仏教美術の至宝とも称される法隆寺金堂壁画。火災で焼損する前の貴重なその姿を、臨場感あふれるグラフィックパネルと鮮明な高精細画像で楽しめる展示空間となっています。

■information
「デジタル法隆寺宝物館」
会場:東京国立博物館 法隆寺宝物館 中2階
会期:8月1日~1/28(9:30~17:00) ※半年毎に展示替
総合文化展または開催中の特別展観覧料で入室可能(一般 1,000円、大学生500円、高校生以下および満18歳未満、満70歳以上は無料)