JR東海は20日、特急「しなの」で使用している振子式車両383系の取替えを見据え、新型特急車両385系量産先行車の新製を決定したと発表した。量産先行車を2026年度に完成させ、走行試験を約1年間実施。量産車の投入は2029年度頃を目標に検討を進める。
特急「しなの」はおもに名古屋~長野間を走行する特急列車。振子制御技術など搭載し、国内最速(基本の速度+最大35km/h)でカーブを走行可能な383系を使用している。カーブ区間において、線路設備に傾斜をつけるなどで高速走行を可能としているが、高速になるにつれて遠心力が大きくなり、乗り心地が悪化する。振子制御技術は、線路設備に加えて車体を傾斜させることで遠心力を緩和し、速達性と乗り心地を両立させている。
新型特急車両385系は、車両とカーブの位置関係をジャイロセンサで常時監視し、カーブ開始位置をより正確に検知できる次世代振子制御技術を開発・導入。現行の振子制御と比べて車両の揺れが改善され、カーブ通過時の乗り心地がより向上するという。
HC85系と同様、車両機器の稼働状況・故障状況等を遠隔で常時監視する状態監視システム(DIANA)や、車内防犯カメラなどの安全設備も385系に導入。中央本線を走る315系と車体長・ドア位置を統一し、開口幅の狭いホーム可動柵を採用できるようにすることで、低コストによるホーム上の安全性向上も可能とする。
エクステリアは「アルプスを翔ける爽風」をテーマに、アルプスの山並みを颯爽と駆け抜ける様を表現したデザインに。両先頭車で前面展望を確保し、四季を彩る自然の景観に恵まれた中央本線を味わう旅を演出する。
今後の計画として、2026年度に量産先行車1編成(8両)を新製。完成後から走行試験を約1年間にわたり実施し、次世代振子制御技術などの確認を行う。2029年度頃を目標に、量産車を投入する方向で検討を進める。