気温も上がり、エアコンが手放せない季節になってきました。日中はもちろん、夜間の熱中症を防ぐために終日エアコンの効いた部屋で過ごす日が増えてきますよね。そこで注意が必要なのが「冷房病(クーラー病)」。
今回は、医師の甲斐沼孟先生に、冷房病に関するお話しをお聞きしました。具体的な症状や原因、予防策などをまとめていますので、参考にしてみてください。
■冷房病の症状が起こる原因を教えてください
冷房病は、屋内外の気温差により自律神経に異常が起こり体調を崩すことを意味しています。
特に夏場は、冷房がよく効いた屋内と、気温が高い屋外を行き来する機会が増え、屋内外の気温差が大きくなればなるほど、体温の調節機能を行う自律神経はめまぐるしく働かなければならず、自然と負担が大きくかかります。
冷房環境で体を冷やしすぎると、体温を保持するために血管を収縮させる動きが働く一方で、屋外の暑い環境下では逆に血管を拡張させて体内にこもっている熱を放散する状態が繰り返して入れ替わることで自然と自律神経がダメージを受けると指摘されています。
特に、普段から体温が低めの方、もともと冷え性を呈する機会が多い方は、冷房で身体が冷却されることでさらに体温が低くなりやすいため、冷房病にかかるリスクが高いと指摘されています。
また、女性や高齢者は成人男性に比べると筋肉量が少ない傾向があり、熱成分を蓄える作用を有する筋肉組織が乏しいため、冷房によって過度に身体が冷えやすく冷房病に罹患しやすい傾向があると伝えられています。
■冷房病とはどういった症状を指しますか?
冷房病は自律神経のバランスの崩れに起因することから自律神経失調症の一種と考えられ、心身に多彩な不調が出現します。
<症状の例>
・四肢末端の冷え
・頭痛など風邪に類似した症状
・身体の疲労感
・食欲不振、胃腸の不調
冷房病に陥ると四肢末端が冷却され、内臓を含めた全身の血流が悪化します。全身がなかなか温まらずに発汗しにくくなることで、疲労物質や老廃物が体内に貯留する懸念が持たれています。また、体温が1度下がるごとに免疫力が30%以上低下すると伝えられています。
自律神経システムは身体の血流を調整しているのみならず、胃腸の蠕動運動の機能やホルモン分泌の調節などを司っており、冷房病で自律神経の調子が悪くなるとあらゆる心身の不調に繋がると言われています。
■冷房病かも? と思った時の対処法を教えてください
・セルフケアの場合
冷房病による症状を改善させるための特別な治療法ありません。普段の生活習慣の見直しや充実したセルフケアの日常的な実践により、身体の自律神経状態を整える必要性が高いと考えられます。
不規則な生活習慣により元々自律神経が乱れていた場合、冷房環境と屋外の気温差による体へのダメージが相乗することにより冷房病の症状は悪化すると言われています。出来る限り冷房温度と外気との室温差は5℃以内に抑えるように設定しましょう。
また、身体が冷えやすい場合には、厚着をして首周りを温めるなどの事前対策を実施するように意識しましょう。
冷房は高温高湿下での夏場の生活を快適にしますが、室内外の温度差や冷房機の吹き出し口の向きや当たる距離に注意して、冷風を直接的に身体に当てないように認識することが重要です。
・病院を受診する場合
冷房病の対策を行いセルフケアを実施しても症状が改善しない、あるいは体調が回復しない場合には、冷房病以外の他の原因により症状が出現している可能性もあるため、最寄りの心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
自律神経のバランスを整えるための方法として、保温効果を有する当帰芍薬散や人参湯などを始めとする漢方薬を活用する場合もありますが、薬剤はそれぞれ個人差によって効能効果は異なるため、体質に合わない際には医師や薬剤師にも相談してみましょう。
■冷房病にならないために、日常生活でできる工夫を教えてください
日常生活で実践できる効果的な対策は、エアコン温度を適温に設定する、服装を調節するといった方法のほか、栄養バランスの優れた食事メニューを取り入れることが重要です。
また、ストレスがたまると自律神経の働きが低下し冷房病を起こしやすくなるため、ストレスをためないことも大切です。特に継続して行う習慣的な運動や入浴にはリフレッシュ効果があり、ストレス解消にも向いています。
夏場の暑い時期にも身体を温める温かい食べ物や飲み物などの食品を摂取し、ゆっくりとストレスを発散してリフレッシュできるように運動習慣を持ちながら入浴生活を送って、良質な睡眠を確保することで冷房病を予防して症状改善する効果が期待できます。
監修ドクター: 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生
TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています