第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、開幕局に当たる羽生善治九段-山崎隆之八段戦が7月1日(土)に宮城県仙台市の「夢メッセみやぎ展示ホールA・B」で行われました。対局の結果、109手で勝利した山崎八段が永瀬拓矢王座の待つ2回戦への進出を決めました。
相掛かりの力戦形
本棋戦は前年度成績に応じて選出されたトップ棋士12名がトーナメント方式で優勝を争うもので、持ち時間10分の超早指しが特徴です。対局前のインタビューで対戦相手の印象を聞かれた山崎八段は「悪いですよ」と即答、これを聞いていた羽生九段は一切表情を変えることなく応じます。対局は、先手の山崎八段が相掛かりの戦型を選択して幕を開けました。
飛車先の歩を交換した山崎八段が右銀を4筋に繰り出したのに対し、後手の羽生九段はお互いの銀を差し違える強気の対応を取ります。手番を握ったまま飛車先の歩を交換したのが無駄のないさばきで、十字飛車の要領で4筋に飛を転回した羽生九段にとって不満ない中盤戦が続きます。局面は一段落を迎え、第二次駒組みに入りました。
山崎八段が逆転勝利
先攻を受けた山崎八段は1筋の端攻めに反撃の手段を求めますが、羽生九段はここから自然な指し回しでリードを拡大します。角をフワッと浮いて先手の香を狙ったのがうまい対応で、先手陣に眠っている山崎八段の角とは働きの差が歴然としています。双方秒読みに入る中、羽生九段は先手玉のすぐ近くにと金を作って徐々に寄せの網を絞りました。
先手陣に竜を作った羽生九段は一間竜の要領で先手玉を追い詰めます。この直後、香の王手に対して山崎八段が歩を合駒して下駄を預けた局面が本局最大の分岐点となりました。続けて香を打って詰めろをかけた羽生九段ですが、局後「手順は長くても詰ましに行くべきでした」と悔やむことに。実戦では羽生九段の玉のほうに即詰みが生じています。
山崎八段の詰み手順を認めた羽生九段は天を仰ぎます。終局時刻は17時6分、羽生九段が投了を告げて山崎八段の勝利が決まりました。山崎八段と永瀬拓矢王座の間で戦われる2回戦は8月19日(日)に「新潟市産業振興センター 展示ホール」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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