第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、二次予選の斎藤慎太郎八段―高田明浩四段戦が6月29日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、114手で勝利した高田四段が次回戦進出を決めました。

相掛かりの持久戦

振り駒で先手番を得た斎藤八段は相掛かりの戦型を注文。後手の高田四段も穏やかに応じた結果、本局の戦型は相掛かりの持久戦に落ち着きました。駒組みが頂点に達したあとも間合いの計り合いは続き、やがて斎藤八段は下段に引いた飛車を9筋に大きく転換。地下鉄飛車の要領で仕掛けを探りますが、高田四段も慎重な駒組みで隙を作りません。

千日手模様の指し手が続くなか、後手の高田四段は自玉を土居矢倉から派生したバランスよい陣形に囲い直します。自然な指し手のようでいて放っておけばこちらも地下鉄飛車を見せる用意があり、先手の攻めを急かしている意味合いがあります。形勢は互角ながら、後手の高田四段がうまく主導権を握ったまま長い中盤戦が続きます。

高田四段が初手合制する

手番を得た後手の高田四段は8筋の桂交換から局面を動かしにかかります。手にした桂をすぐさま2筋に重ね打ったのが継続の好手で、この筋に回っていた先手の飛車を押さえ込みつつ先手陣に成桂を作る手が約束されては好調です。高田四段はこの成桂を拠点に、先手の玉と飛車をまとめて攻めることに成功。豊富な持ち駒で最後の寄せに入ります。

終局時刻は16時56分、最後は自玉の即詰みを認めた斎藤八段が駒を投じて高田四段の勝利が決定。感想戦では終盤の攻防の中で先手からの勝負手があったことが判明しましたが、斎藤八段も「(それでも後手に)余されているかもしれませんが」と悲観的な見方を残しています。勝った高田四段は次局で稲葉陽八段と顔を合わせます。

水留啓(将棋情報局)

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  • 高田四段(右)は局後SNSを更新し、「精一杯頑張って指せました」と勝局を振り返った(写真は第35期竜王戦のもの 撮影:相崎修司)

    高田四段(右)は局後SNSを更新し、「精一杯頑張って指せました」と勝局を振り返った(写真は第35期竜王戦のもの 撮影:相崎修司)