太陽生命少子高齢社会研究所は6月29日、「地方自治体の産後ケア事業に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は1月27日~2月16日、430自治体を対象に、質問紙による郵送調査で実施した。

  • 産後ケア事業の導入状況(2022年度)

産後ケア事業とは、妊娠期から子育て期にわたって切れ目のない支援を行うため、産後の母子に対して「母親の身体的回復と心理的安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子の愛着形成を促し、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援する」ことを目的として市区町村が実施している事業のこと。2021年4月より地方自治体の努力義務として法制化された。

産後ケア事業の導入状況について尋ねたところ、「短期入所型」「通所型」「居宅訪問型」のいずれかを実施している自治体は84.4%で、2021年度調査の75.4%より9.0pt増加した。事業別に実施状況を見ると、「短期入所型」の実施率は61.4%、「通所型」の実施率は64.7%と2021年度調査と比べてそれぞれ4.0pt、9.0pt増加している。

  • 事業別実施状況(2022年度)

利用実績について聞くと、「短期入所型」の利用実績は58.3%で2021年度調査(58.8%)とほぼ同じだが、「通所型」「居宅訪問型」の利用実績は65.8%、72.3%で、2021年度調査よりそれぞれ8.0pt、9.8pt増加した。

  • 利用実績(2022年度)

「短期入所型」実施自治体264のうち、9割以上が母親の「心身の不調」「育児不安」「家族の支援なし」を利用要件としていることがわかった。特に「家族の支援なし」(92.0%)は、2021年度調査の83.3%より8.7pt増加している。「母親の疲労回復」といった休息目的で利用できる自治体もあった。

  • 短所入所型の利用要件(2022年度)※複数回答

「短期入所型」の利用申請について聞くと、「書類の提出」で受け付けている自治体は60.6%だった。書類の内容は「母親の自己申告」としている自治体が74.6%で、医師の診断書など特定の証明書類等を徴求する自治体は少なかった。

  • 短期入所型の利用申請方法(2022年度)※複数回答

「短期入所型」を導入している自治体に、課題と感じていることを尋ねたところ、「自治体内に産後ケア事業を提供できる施設が足りない」(65.1%)が圧倒的に多かった。以下「利用要件があいまいで判断しづらい」(19.2%)、「産後ケア事業の周知が不十分」(18.6%)と続く。「その他」の内容として「兄弟姉妹が一緒に宿泊できない」など、上の子がいる母親への対応の難しさを課題と感じている自治体も一定数見られた。

  • 「短期入所型」導入自治体の課題認識 (2022年度)※複数回答