三井不動産は、ロジスティクス事業の拠点のひとつ「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋Ⅲ」にて、物流業界の課題である「2024年問題」の解決を目指した「EC自動化物流センター」をメディア向けに公開した。3次元ピッキングシステム「Skypod」をはじめ、自動製函機、自動梱包機など、さまざまな自動化設備やオペレーションを用意し、テナントの物流自動化と積載率の向上を両立させるという。

物流業界の課題「2024年問題」の解決に寄与

同社は2012年にロジスティクス事業を開始しており、2016年には三井不動産ロジスティクスパーク投資法人を設立。2022年までに国内外に56物件を開発に加え、新たに国内6物件の開発を発表し、事業投資額は現在までに約8,500億円で、2023年度中には1兆円に達する見込みとなる。延床面積530万平方メートルにもおよぶという。

  • 三井不動産 ロジスティクス本部 ロジスティクス事業部長兼イノベーション推進室長の大間知俊彦氏

同社ロジスティクス本部の大間知俊彦氏によれば、物流業界では、トラックドライバーの時間外労働時間が上限規制されることなどによって生じるさまざまな問題、いわゆる「2024年問題」の解決が急務となっており、現状では2030年には約35%の荷物が運べなくなくなる可能性があると話す。

3時間超の場合もあるというドライバーの待機時間をはじめ、トラックの積載率が40%以下になってしまっていること、宅配貨物の不在再配達率が15%を超えていること、ドライバーの高齢化や急速な減少など、さまざまな課題が挙がっており、その解決が求められている。解決のためには、荷主と物流企業、ソリューション提供会社など、物流の関係会社の連携が必須と考え、三井不動産がハブとなり、「物流変革プラットフォーマー」になることでその連携を推進していく。

そのために、所有するリソースを最大活用し、社会全体の物流課題に寄与するプラットフォームを提供するべく、「MFLP & LOGI solution」を2023年4月に立ち上げた。荷主・物流事業者として「MFロジソリューションズ(三井不動産グループの総合物流コンサル会社)」「ロジイノベーションコミュニティ(三井不動産運営の荷主コミュニティ)」に、ドローン活用や自動倉庫などの約50社のソリューション提供パートナーによる最先端ソリューションを掛け合わせて顧客に提案する。

同社はこれまでにも総合デベロッパーとして、商業施設でのEC自動化物流センター運営やオフィスでのBCP・ES向上サービス、スマートシティでの自動運転やドローン活用、コールドチェーンなどを手掛けており、これらの事業で得た知見やノウハウをフル活用する。具体的な例として、内装やインテリアなどを扱う株式会社サンゲツの例が挙げられた。サンゲツは関西エリア2拠点の統合先として「MFLP大阪Ⅰ」へ移転、支援を実施して自動化、省人化、省力化を実現した。

そして2024年問題を見据えた取り組みの一例として、「搬出入DXソリューション」が挙げられた。バース予約システム「Hacobu」と、MFLPが開発した社判認証やテナントシステムと連携させることにより、ドライバーの荷待ち時間を大幅短縮できるという。

また、「EC自動化物流センター」においては、自動化設備やオペレーションを三井不動産が用意し、それを他荷主にシェアリングすることでテナントの物流自動化と共同配送による積載率向上を図る。さらに、働きやすい環境整備やドローン活用による配送変革やグリーン物流への取り組みなど、不動産賃貸業にとどまらないビジネスモデルの革新を目指していく。

さまざまなソリューションを掛け合わせて効率化を実現

「EC自動化物流センター」を自社利用した際の効果については、三井不動産 商業施設本部 &mall事業室長の亀井俊介氏より紹介された。

  • 三井不動産 商業施設本部 &mall事業室長の亀井俊介氏

同社が運営するららぽーとの公式通販サイト「&mall」は2017年にリリースし、約420ショップが出店、数十万アイテムを取り扱うECサイトとなっている。出荷スキームとしては、ショップ側の倉庫からの直送に加え、三井不動産が運営する倉庫からの出荷も相当数存在。その自社運営倉庫では、庫内作業の複雑化、人件費の増加、倉庫賃料の増加などの課題を抱えていたが、自動化や省人化対応を実施することで出荷キャパシティ向上と作業コスト削減を目指して「EC自動化物流センター」が構築された。

フランスEXOTEC社の3次元ピッキングシステム「Skypod」を導入することにより、高さ方向を活した効率保管と搬送工数の削減を実現。ロボットが床だけではなく棚にも昇降し、「ビン」と呼ばれる収納コンテナをピックアップし運ぶことができるシステムで、ビンを収納するラックは最大12mまで対応できる。

さらにCOGNEX社の3Dカメラによって荷物のサイズを瞬時に計測し、出荷に最適なサイズの箱を用意するため、積載効率の向上を見込める。

ビンによって棚から運ばれた商品などは、最適なサイズで用意された箱に自動封函システム「I-Pack」によって梱包される。壊れやすいものなど、自動で梱包しにくいものについては手作業となるが、作業員は移動することなく、モニター指示に従って作業するだけとなる。梱包された箱にはオートラベラーでラベルが貼付される。

これらのソリューションによる省人化、効率化で、1日あたりの出荷キャパシティは2倍以上、庫内作業の人件費を約2割削減となった。同社では、ロジスティクス事業において今後もさらなるサービス品質の向上と効果の拡大を図っていくという。