西武鉄道は、「としまえん」跡地に6月16日開業予定の「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」に合わせ、4月25日に豊島園駅の新駅舎を供用開始した。3週間後の5月16日、池袋~豊島園間を中心に運行するフルラッピング列車「スタジオツアー東京 エクスプレス」の運行を開始し、豊島園駅でセレモニーと出発式が開催された。
■魔法をかけるような合図でラッピング列車が発車
池袋駅・豊島園駅リニューアル完成記念セレモニーに先立ち、練馬区文化振興協会理事長の大谷康子氏がウェルカム演奏としてヴァイオリンを演奏。作曲家の大沼弘基氏によるピアノ伴奏とともに、エルガー作曲「愛の挨拶」「威風堂々」と、ジョン・ウィリアムス作曲『ハリー・ポッター』より「ヘドウィグのテーマ」の3曲を披露した。関係者席およびメディアスペース外にも一般客が集まっており、演奏が終わると駅前広場が拍手に包まれた。
大谷氏の演奏を終え、リニューアル完成セレモニーが開式。主催者を代表して、西武ホールディングス代表取締役会長・CEOの後藤高志氏が挨拶した。リニューアルした豊島園駅を訪れた際、はしゃいでいるこどもたちをうれしく思ったという。6月16日の「スタジオツアー東京」開業後、世界中の『ハリー・ポッター』ファンを迎えることを踏まえ、「豊島園駅が地元の皆様にとって憩いの場であるとともに、さらに発展する大きな原動力となります」と語った。
来賓挨拶として、練馬区長の前川燿男氏、ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ゼネラルマネージャーのトーベン・イェンセン氏、東京都知事の小池百合子氏が登壇。前川区長は、3年前の「としまえん」閉園の際、寂しさを禁じえなかったとしつつも、その跡地に「スタジオツアー東京」が開業することに歓迎の意を示した。「練馬区としても『スタジオツアー東京』を成功させるために、まちづくり、交通、周辺環境の整備と、全力を尽くしてまいります」と表明した。
トーベン氏は、「スタジオツアー東京 エクスプレス」を「英国にもない、東京で初めてのラッピング電車」と評価。池袋駅・豊島園駅のリニューアル内容にも触れつつ、「私たちとしても、1カ月後に迫ったグランドオープンに向けて、皆様を迎え入れる準備に万全を尽くしています。皆様をお迎えするのを心から楽しみにしております」と話した。
小池都知事は、5月1日にオープンした練馬城址公園に続き、6月16日に「スタジオツアー東京」の開業を迎えることに対し、「いまからわくわくしているこどもたち、また大人もたくさんいらっしゃることだと思います。多くの方が『スタジオツアー東京 エクスプレス』に乗って、この地を訪れることでありましょう」と期待を寄せた。
挨拶後にテープカットを実施。ファンファーレと司会の合図に合わせ、テープにハサミが入れられ、その瞬間には広場一帯から拍手が寄せられた。
テープカットの後、豊島園駅ホームに移動し、「スタジオツアー東京 エクスプレス」出発式が行われた。8両編成の20000系(20152編成)にラッピングを施し、『ハリー・ポッター』作中に登場する「禁じられた森」を背景に、シリーズ主要キャラであるハリー、ハーマイオニー、ロンの3人を大きくデザインしている。
練馬駅管区長の粕谷昇氏に加え、西武ホールディングスの後藤会長、練馬区の前川区長、ワーナー ブラザースのトーベン氏、東京都の小池都知事が出発合図を行う。粕谷管区長を除く4名はホグワーツ魔法魔術学校の衣装と杖を身に着け、登壇した。粕谷管区長が「出発進行!」と右手を高く掲げると同時に、登壇者4名が魔法をかけるように杖を振る。運転士が警笛で応え、11時52分に「スタジオツアー東京 エクスプレス」は池袋方面へ発車した。
■英国風になった池袋駅・豊島園駅、「としまえん」レガシーも活用
セレモニー中、リニューアルした池袋駅と豊島園駅について、リニューアルを担当した、西武鉄道工務部施設課の五味仁美氏が解説した。池袋駅では、おもに豊島園行が発着する1・2番ホームのリニューアルを行った。英国・ロンドンにあるキングス・クロス駅を参考に、壁面をレンガ調に、駅サインを紺色基調に改修した。1番ホームのエレベーターにステンドグラス風の装飾を施し、フクロウや「魔法列車」も取り入れている。
同ホーム上にワーナー ブラザース社が寄贈した時計も設置。この時計は「スタジオツアー東京」に設置されるものと同じデザインで、『ハリー・ポッター』作中の「9と3/4番線プラットホーム」のように針が逆回転する。
その他、階段・エスカレーターの随所にフクロウや魔法使いのイラストを散りばめた。改札内1階の「トモニー」では、外観・内装にブリティッシュグリーンやレンガ調の装飾を行っている。「としまえん」で使用されていたベンチもリメイクの上、ホームに設置されている。
豊島園駅は「イマジネーションが日常に溶け込む駅」をコンセプトとし、日常と非日常をつなぐゲートをイメージしたシンプルなデザインに、魔法の世界を感じられるしかけを加えた。ホームの柱、駅名標、自動販売機など、『ハリー・ポッター』作中でホグワーツ魔法魔術学校へと続く「ホグズミード駅」をほうふつとさせる赤色基調にリニューアル。駅名標に「スタジオツアー東京」ロゴマークを副駅名標として掲載している。木材を使用している箇所もあり、飯能地区の西川材を用いたという。
「としまえん」で1966年から1981年までアトラクションとして活躍した「模型列車」は、修復・加工の上、空飛ぶ「魔法列車」オブジェとしてリニューアル。当時、実際に使用された線路は、「魔法列車」が空から降りて来ることをイメージし、上に向かって曲げられた。同じく「としまえん」で使用された電話ボックス、ベンチもそれぞれリメイクした上で設置されている。
駅舎上部にLEDビジョンが設置され、季節・昼夜ごとに計8種類のアニメーションを放映。ワーナー ブラザース社提供による特別映像もある。今回は春・夏のアニメーションと、特別映像が初披露となった。
春の昼バージョンは「フラワー・ウォール」。「魔法列車」が映像に現れたと思いきや、それを中心に植物が草を生やしていき、やがて美しい花を咲かせ画面に広がっていく。春の夜バージョンは「マジカル・レター」。1通の手紙から町が広がり、駅になり、そこに「魔法列車」が入線する。
夏の昼バージョンは「ウォーター・ダイブ」。幻想的な水中の光景を投影する。夏の夜バージョンは「ファイヤーワークス・フェスティバル」。魔法使いが夜空を飛び回り、さまざまな形の花火を打ち上げる。ワーナー ブラザース社提供の特別映像では、『ハリー・ポッター』作中のスポーツ「クィディッチ」で使用される羽の生えたボール「金のスニッチ」が登場。映画のようにすばやく飛び回る楽しい映像が放映された。
昼バージョンの映像は9~16時、夜バージョンの映像は16~22時に放映。毎時10・20・40・50分に放映される。特別映像は毎時0・30分に放映される。
「スタジオツアー東京 エクスプレス」はあと2編成加わる予定となっており、2編成目が5月23日に登場。3編成目が5月30日から運行開始予定となっている。基本的に池袋~豊島園間で運行されるが、都合により所沢方面へ入線する可能性もあるという。「西武線アプリ」で「スタジオツアー東京 エクスプレス」の位置情報も表示され、作中の「クィディッチ」で用いられる「金のスニッチ」がそのアイコンとなる。
リニューアル後の池袋駅・豊島園駅ともに、『ハリー・ポッター』のストーリーを深くは知らない筆者にとっても没入感が高く、訪れた誰もが楽しめる駅になっていると感じた。作品を知っていればさらに楽しめるに違いない。「としまえん」の面影も一部受け継がれ、英国風の世界観を演出していた。6月16日の「スタジオツアー東京」開業後は、さらに多くの人々が池袋駅・豊島園駅を訪れ、この非日常感を体験できるだろう。