瀬名と対峙するシーンは現場も緊張感があったという。

「ほぼ最初から最後まで通しでずっと撮っていたので、現場自体にすごく緊張感があり、緊迫した空気をみんなが保っている感じでした」

同シーンは、演出からのディレクションによって演技を変えたそうで、それによってお万らしさが伝わるシーンになったと手ごたえを感じている。

「私は最初、瀬名さんのほうが立場が上なので、意見をするにしても目を見てしっかり伝えないほうがいいのかなと思い、頭を下げたまま話したりしていたのですが、1テイク目を撮り終えたあとに『1回、目をしっかり見てやってほしい』と言っていただいて、お芝居し直したら、よりお万が持っている意志の強さや伝えたいことがより明確になった感覚がありました」

また、「お万がしたことは、ある意味裏切りと捉えられるかもしれないですが、瀬名をとても信頼しているし尊敬しているからこそ、大きな一手を打つことができたのかなとも思っています」と解釈。「瀬名がずっとお万や周りの人に対して、こういう世の中になればいいという前向きなメッセージを発信していたからこそ、面と向かってメッセージを投げかけ、それが先々、瀬名が何か選択するときに頭をよぎるようになるのかなと思っています」と語った。

続けて、「この作品の中に出てくる女性はとても信念があって自分の思いをまっすぐ伝えていける方たちがそろっていると思っていて。お万も自分の意志を持って自分の足でしっかり立っていく女性の一人なのかなと、演じていて思いました」と振り返った松井。

「いろんな意見や生き方を表している場面になるのでとても難しいと思いましたが、それぞれ持っている自分の信念がしっかりと表れる場面になっていたらいいなと思います」と同シーンに込めた思いを明かした。

■松井玲奈
1991年7月27日生まれ。愛知県出身。2015年8月にSKE48を卒業。フジテレビ月9ドラマ『海月姫』(18)、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(18~19)『エール』(20)、TBS『プロミス・シンデレラ』(21)、読売テレビ・日本テレビ『オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~』(22)などに出演。数々の映画にも出演し、近年は『幕が下りたら会いましょう』(21)、『よだかの片想い』(22)、『生きててごめんなさい』(23)などに出演。2019年に短編集『カモフラージュ』、2021年に小説『累々』、初のエッセイ集『ひみつのたべもの』を出版するなど、小説家としても活躍している。

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