岡田惠和氏脚本のABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』(毎週日曜22:00~)が現在放送中だ。同作は、清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠演じる、ラジオ番組をきっかけに運命的な出会いを果たした3人に“奇跡”が起きることで、行き詰まっていた人生が静かに動き出していくハートフルストーリー。
そんな物語の中で、「良い味出してる」「何とも良いキャラ」「和む」と評判を集めているのが、3人が出会ったラジオ番組の旅行企画の世話役、市川みね。名前同様“ばぁちゃん”のような性格でベテランリスナーの立場から運営を手助けしたり、陰ながら参加者たちを見守ることに喜びを感じている。今回はみねを演じる岡山天音が、「ひと目見て分かる」という岡田惠和脚本の魅力や、みねという人物について、そして多忙な中でも必ず時間を費やす“メモ癖”について話を聞いた。
■キャラクターの行動が事細かに書かれた岡田脚本
――岡山さんが岡田さんの作品に出演されるのは『ひよっこ』(17年 NHK)、『そして、生きる』(19年、WOWOW)に続く3本目とのことですが、岡田さんの脚本の特徴を教えていただけますでしょうか。
脚本には、そのキャラクターがどんな動きをするかが書かれたト書きという指示があるのですが、岡田さんの脚本では、「このキャラクターはこのときこう思っていて、本当はこう思う気持ちもあるけど、ここではこんなリアクションをする。そう、このキャラクターは、こんなことが起きたらまずこんな行動を取る人間なんです」と事細かに書かれていることもあったり、まるで岡田さんが直接話しかけてくれているようなものになっているんです。ひと目見て岡田さんの脚本だと分かるくらい特徴があります。
――たくさんの説明が書かれた脚本は、俳優さんにとってどんな点が楽しかったり難しかったりするのでしょうか。
脚本の文章だけで人物像がしっかりと伝わるので、役者が余計なものを上乗せして、見ている方が置いてけぼりにならないよう、共感しながら楽しめるように、“原液を薄めるような作業”をしています。見ている方は、描かれているものと自分の人生を重ね合わせて同化していくことで作品を好きになっていくと思うので、その余白を残しておきたいというか。それだけ濃い原液のような脚本です。
■みねを、愛着抱かせるチャーミングなキャラクターに
――今作にはどんな印象を受けましたか。
今は、見ている側が飽きてしまったり目移りする対象が多かったりすることから、展開が速かったり、分かりやすい足し算で構成されていたり、楽に見られるコンテンツが多い時代だと思います。そんな中で今作は、最近のドラマの中では珍しくスローペースなのに、とても豊かな世界が広がっていて、丁寧に作りながらも夢中にさせる引力を持った作品だと感じました。原点回帰のようでありながら、現代のコンテンツに慣れている体で味わうと、新鮮な気持ちになれるドラマなのではないでしょうか。
――続いて岡山さんが演じるみねの印象も教えてください。
面白いキャラクターですよね。「どこかで見たことある」と感じる“テンプレート”で定義できそうだけど、ちょっとずれて枠からはみ出しているような印象を持ちました。個人的には、大雑把な味付で渡された役を自分で仕上げることもお芝居の面白さの1つなので、岡田さんの完成度で役を渡されると、自分が演じる意味をどう持たせるのかということは逆に難しかったりします。文章の時点で魅力的なキャラクターなので、“いらんことしぃ”になりかねないんですよね。勝手に改造することもできますが、蛇足になるので気が進まないんです。
――脚本の中で、すでにみねが出来上がってしまっているんですね。
それくらい岡田さんの世界を見る目がほかとは違うというか、人間を近い距離で観察しているような解像度の高さを感じます。人間をよく知っているから、フィクションで陥りがちなテンプレートからずらしてキャラクターを造形していけるのかもしれません。
――そんなみねを演じるうえで心がけていることは。
岡田さんの作品では、雑な扱いを受けるキャラクターを任せていただくことが多いんです(笑)。今回は3人(サチ:清野菜名、翔子:岸井ゆきの、若葉:生見愛瑠)からの鋭いパスをキャッチするリアクションや、わちゃわちゃした賑やかなさまを楽しいと感じてもらえることを心がけて演じています。みねも何かを抱えていると思うのですが、雑に扱われたりいじられたりする場面も、少し突飛なことをする瞬間も、トータルで愛着を持ってもらえるチャーミングなキャラクターになればいいなと思います。
■宝くじが当たったら…世界観が変わりそうでワクワク
――今作では、清野さん演じる主人公のサチの「楽しいのがダメ、キツイのが耐えられなくなるから」という思いが共感を呼んでいます。岡山さんにも“幸せになるのが怖い”というような感覚はありますか。
ないです。幸せがいいです(笑)。
――(笑)。第2話のラストでは、そんなサチに宝くじが当たるという奇跡が訪れますが、幸せがいい派の岡山さんは3,000万円が当たったら素直に喜べそうですね。
喜べると思います。宝くじが当たると世界観が変わりそうなので、自分がこれから何に苛まれていくんだろうとか、そういうことも含めてワクワクするんじゃないかな……お金がどうとかではなく、新しい世界を見られて楽しそうだなと。