「散見される」「散見する」という言葉を見聞きしたことはあっても、その違いや正しい使い方を理解できていない人は多いでしょう。
本記事では「散見される」について、詳しい意味や使い方と例文、注意点などを紹介します。言い換え表現や英語表現、対義語もまとめました。
「散見される」の意味とは
「散見される」とは、「あちこちに散らばって見える」や「さまざまなところにある物事が目につく様子」といった意味の言葉です。
「散」は「ちる」や「ちらかる」「ばらばらな」など、物事が離れ離れになりまとまりのない様子を表す漢字です。
「見」は「目でみる」ことや、「物のみかた、考え」といった意味を持つ漢字です。
「散見される」は、ネガティブな意味で使われることが多いですが、もともと否定的な意味はなく、肯定的なことに対しても使用できます。
「散見される」と「散見する」の違い
実は「散見される」は本来は誤った使い方であり、正しくは「散見する」と表現します。
しかし現在では「散見される」という表現は一般的に広く浸透しているため、使用しても問題はないでしょう。より正しい日本語を使いたい場合は、「散見する」を使用しましょう。
下記のように、「散見される」も「散見する」も同じ意味で使用できます。
・オフィスに暇を持て余している社員が散見される。
・オフィスに暇を持て余している社員が散見する。
「散見される」の使い方と例文
ここからは「散見される」の使い方を、例文を参考に捉えていきましょう。
否定的な表現で使う場合の例文
まずは、否定的な意味で使われるケースの例文です。
・この資料には数字の間違いが散見される。
・この原稿には、誤字・脱字が多く散見される。
・われわれの組織にはまだまだ課題が散見される。
・最近、ルールを守らない方が散見されます。
・社内に散見される待遇の不平等は大きな問題だ。
肯定的な表現で使う場合の例文
前述のように、「散見」には否定の意味は含まれていないため、肯定的な意味合いや、ただ単に物が散らばって見えている場合にも使用可能です。
・卒業式シーズンのため、晴れ着姿の学生が散見される。
・披露宴での食事には豪華な食材が散見された。
・この山には野生のサルが散見される。
前述のように、「散見される」を「散見する」に置き換えることもできます。「散見されます」は「散見します」、「散見された」は「散見しました」に置き換えられます。
「散見される」を使う際の注意点
「散見される」は目で確認できることだけでなく、目視できない物事に対しても使用する場合があります。
例えば「社員の認識不足が散見される」「君を評価する声が散見される」というように、目に見えない感情や事象を表現するケースです。
ただし、推測では使えません。実際にはっきりと存在している物事に対して使えます。抽象的な物事や事実がはっきりしない物事については使用することのないよう注意しましょう。
「散見される」と「見受けられる」は違う
「散見される」は、目に見えるものや根拠のあることなど、具体的な物事が対象です。
「見受けられる」はそれに加えて、「見てそう判断する」という意味で、不確定で抽象的な物事に対し、推測・推定の段階でも使用することができます。
- A:彼女の家庭には、問題が散見された。
- B:彼女の家庭には、問題があるように見受けられた。
例えば上記の場合、Aは明らかな根拠があって、問題があるということを述べています。
Bの場合は、確実に問題があるとは言えないが、いくつかのヒントを見て推察するに、問題がありそうだと思う、ということを述べていることになります。
「散見される」の類語・言い換え表現
ここからは「散見される」の類語や言い換え表現を紹介します。
ちらほら
「ちらほら」の意味は「あちこちに散らばって少しずつある」「時間をおいて何度かある」などです。ぱっと見渡してすぐに見つけられるわけではなく、たまに見掛ける程度の様子を表します。
「京都では、着物を着ている人をちらほら見掛ける」というように使用します。
窺える
「窺える」は「うかがえる」と読み、「一部分から全体を推測することができる」といった意味です。
「窺」という漢字には、「のぞく」「ねらう」などの意味があります。
また「窺う」は「物事の様子をそれとなく見て探る、状況を察する」という意味を表します。「顔色を窺う」「様子を窺う」などと使うことが多いでしょう。
「あの子の持ち物から、お金持ちであることが窺える」「テレビ電話で、祖母の元気な様子が窺えた」のように、直接自分の目で見た物事から、推測する場合に使えます。そのため、「見受けられる」にも近いと言えるでしょう。
「散見される」の対義語
「散見される」の意味は、物事があちこちに散らばって存在している様子です。
対義語として「ほとんど存在しない」を意味する言葉を紹介します。
希有(稀有)
「希有(けう)」の意味は「有ることがまれ」、つまり「極めて珍しい」です。
「希」は「まれ」「めったにない」「少ない」「うすい」などの意味があり「稀」を書き換えた漢字です。本来の「稀」は常用漢字ではないため、「希」を使う場合が多いです。
なお、「希」には「願う」や「望む」という意味も含まれますが、「稀」にはありません。
「有」は「存在」「あること」「所有すること」などの意味を持ちます。
「彼は非常に希有な才能を持っている」などの形で使用します。
希少(稀少)
「希少」は「少なくて珍しい」「まれである」などの意味を持ちます。「希有(稀有)」と同じく、本来は「稀少」と書きます。
希有との違いは、「まれ」の度合いです。「希有」は、そこに有ること自体がまれで、ほとんどないことに対して、「希少」は数は少ないもののいくつかは存在する、というニュアンスがあります。
「このフィギュアは希少価値が高いため、買い手はいくらでもつきます」などの形で使用します。
「散見される」の英語表現
「散見される」は、以下のように英語で表現できます。
- be found here and there(あちこちで見つかる)
・Such clothes are found here and there.
(そういう洋服はあちこちにある)
- scattered(散らばっている、まばらな)
・Many islands lie scattered over the sea.
(その海にはあちこちにたくさんの島があった)
- can see ~ everywhere(いたるところで~を見ることができる)
You can see people in kimonos everywhere in Kyoto.
(あなたは京都のいたるところで着物姿の人を見られます)
「散見される」を上手に使いこなそう
「散見される」とは、あちこちに物事が点在している様子を表します。
多くの場合「この文章には誤字が散見される」のようにネガティブな意味で使われますが、「この公園には立派な桜の木が散見される」のようにポジティブな事柄も伝えられます。
「散見される」の意味を知り、日々の会話やビジネスに取り入れると表現の幅が広がるでしょう。ぜひこの記事をお役立てください。