アサヒ飲料は、「CO2を食べる」自動販売機を活用したCO2資源循環モデルの実証実験を開始する。5月9日には東京で実証実験開始の説明会が開催された。
CO2を食べてしまう自販機とは一体どんな取り組みなのか、説明会の様子をレポートしていこう。
アサヒグループでは、気候変動への中長期目標として2050年までにCO2排出量をゼロとする「アサヒカーボンゼロ」を掲げており、グループの一員であるアサヒ飲料もこの目標に沿って脱炭素の取り組みを推進している。
これまでアサヒ飲料では「飲みもの1本を作る時、どれだけエネルギーを使わずにCO2を削減するか」という考え方で取り組みを行ってきたという。例えば商品ならばラベルレスボトル商品やリサイクルペットの拡大、また自動販売機ではヒートポンプ式自動販売機(超省エネ機)や使用電力を再生可能エネルギーに切り替えたカーボンオフセット自動販売機の展開を行っている。なかでも自動販売機のCO2排出量は、過去20年で約60%減と大幅に減ったそうだ。
様々な施策を行う同社だが、今回発表した「CO2を食べる自販機」は、従来の「CO2を削減する」取り組みとは異なり「CO2を吸収して循環させる」という新しい発想で企画された。
「都会の中に森を作る」というコンセプトの「CO2を食べる自販機」は、周辺の大気を吸い込んで商品を冷やしたり温めたりする自動販売機のしくみを活かし、自動販売機の庫内にCO2の吸収材を搭載することでまるで樹木のようにCO2を吸収する。この6月から関東・関西エリアを中心に約30台を設置し、CO2吸収量や吸収スピードなどを比較・検証していくという。
1台あたりのCO2年間吸収量は稼働電力由来のCO2排出量の最大20%を見込んでおり、スギ(林齢56-60年)に置き換えると約20本分の年間吸収量に相当するそう。最終的には自販機が排出するCO2の量と吸収量が同等になるカーボンニュートラルな自販機の展開を、2030年に向けて目指していくという。
吸収材は自然由来の鉱物(カルシウム類)をベースに特殊加工を施したもので、一般的な商品よりも最大約9倍の吸収能力がある素材を採用。飲料の補充をするタイミングで自動販売機に吸収材の設置と回収を行うので、この取り組みを行うための輸送や、それにまつわるCO2が発生することもない。CO2を吸収した吸収材の回収ペースは月に2回程度だ。
さらにこの取り組みでは、回収したCO2を肥料や建材、ブルーカーボンなどの原料として活用することでCO2の資源循環モデルを構築する狙いもある。吸収材を肥料に配合することでCO2を土壌に貯留したり、コンクリートの原料に配合することでCO2の固定化、また海中の藻場造成を通してブルーカーボン生態系の再生を図っていくという。
アサヒ飲料が回収を行ったのち、CO2を原料として活用することやCO2商品の活用はパートナーとの協力が必要となる。肥料メーカーをはじめ、肥料を使用する地方自治体やフラワーパーク、農業法人、またコンクリート建材では建設会社、ブルーカーボンとしての使用には地方自治体や関係機関など、様々な分野でCO2資源循環モデルに賛同するパートナーを募集していくという。
「CO2を食べる自販機」は2023年6月から実証実験を開始、2024年から本格的に展開し2030年までにカーボンニュートラル機の開発を目指す。またCO2の資源循環モデルは、2023年にパートナー募集と実証実験を、2024年には資源循環を開始し、2025年に本格展開をする予定だという。
自販機1台で吸収できるCO2の量は小さいが、アサヒ飲料の自動販売機は全国に26万台ある。この全台が吸収材を搭載した「CO2を食べる自販機」になれば、ひとつひとつは小さくとも大きなインパクトになる、とアサヒ飲料 CSV戦略部長の相田幸明氏は期待を寄せる。