セダンなのに片側3枚・計6枚のドアがある超ロングボディ、スイス軍も使ったというゲレンデ、子供用としてよみがえった伝説のレーシングカー……。「AUTOMOBILE COUNCIL 2023」(オートモビルカウンシル2023)でマツシマホールディングス(京都)が展示していたメルセデス・ベンツには驚かされた。
6ドアセダンはどこで活躍した?
マツシマホールディングスの展示ブースを訪れると、メルセデス・ベンツのミディアムクラス「260E」(W124型)が展示されていた。正面から見ると、まさに筆者が所有している「280E」と同じ初期型の顔つきをしているのだが、横に回ってみて驚いた。なんとこのモデルは片側3枚ドア、つまり合計6ドアの3列シート8人乗りだったのだ。
ボディサイズは全長5,540mm、全幅1,740mm、全高1,480mmというから幅と高さは変わっていない。全長がノーマルセダンより800mmも長いが、伸びた部分はまるまる2列目に充てられている。毎日のようにW124型セダンを見ている者にとっては、相当な違和感だ。とはいえ、この個体は日本に10台ほど入ってきた正規輸入車とのことで、最初はさる旅館の送迎車両として活躍していたのだという。
ブルーブラックのボディは上々のコンデション。2列目、3列目のダークブルーのファブリックシートは、まるで新車時のような張りを保っている。センターコンソール上にあるウインドーの開閉ボタンの数が多い(合計6個)のはちょっと笑えるところだが、それ以外に運転席からの景色は変わらない。
長いボンネットを開けてみると、黒いヘッドのM103型シングルカム2.6リッター直列6気筒エンジン(最高出力165PS、最大トルク23.0kg)が「まだまだいけますよ」と訴えかけてくる。ちなみに、このクルマはすでに緑ナンバーを装着していて、京都の観光地などを巡るプレミアムハイヤーツアーの車両として現役を続ける予定だという。
もう1台は、リアが幌仕様になったちょっとミリタリーな雰囲気のゲレンデヴァーゲンこと「Gクラス」(230GE)。何が気になったかというと、フロントグリルの中央にスリーポインテッドスターではなく、見慣れない「PUCH」(プフと発音する)のエンブレムを装着している点だ。
PUCHは社名だ。実は、現在の「Gクラス」を製造するオーストリアの「マグナシュタイア社」の前身で、「シュタイア・ダイムラー・プフ」というのが正式名称である。当時、彼の地で販売されていた同社製のクルマが、このエンブレムを装着していたそうだ。
軍用車としてNATO軍に正式採用されたゲレンデは、当時のスイス陸軍(NATOには非加盟)でも使われていたという。現役時代はリアに機関銃を架装していたこともあるそうだ。マニュアルは4カ国語で書かれているため膨大なページ数だが、保存状態は良好。美しいカラーページを見ることができる。
軍用Gクラスの手前に置かれていた小さなメルセデス・ベンツ「300SLR」は、1955年の「ミレミリア」(イタリアで開催されていた公道レース)で故スターリング・モスがドライブして総合優勝したマシンを1/2スケールで再現したハンドメイドのチルドレンズ・カーだ。リアに48cc単気筒エンジン搭載した実走行可能なモデルで、最高速度15マイル/hに達するという。