F1種とは?

F1種は「First Filial Generation」(雑種第一代)の略称であり「ハイブリッド」や「交配種」とも呼ばれています。販売されている種のパッケージには「交配」と書かれているのが特徴です。

“遺伝学の祖”と呼ばれる植物学者のメンデルが発見した3つの法則(分離の法則/独立の法則/優性の法則)のひとつ「優性の法則」では、交配を行うと両親の優性形質のみが現れ、劣才が隠れると記されています。そのため、F1種は生育旺盛で形や味も揃いやすいという大きな特徴があります。育てやすいF1種は野菜の安定供給が叶うため、スーパーなどに出荷されている野菜のほとんどがF1種。ホームセンターで購入できる種や苗も、その多くがF1種になっています。最近よく見聞きする「遺伝子組み換え」とは別の技術です。

野菜の種の主な種類

野菜の種はこの「F1種」のほか、「固定種」という種類も存在します。固定種は自家採種が可能で、地域のブランド伝統野菜などの「在来種」も固定種のひとつ。農家が種取りして繰り返し栽培してきたことで、その土地土地の風土に合わせて適応していった野菜です。

一方のF1種は種苗メーカーなどが開発した1代限りのハイブリッド(雑種)。形や味が揃って育てやすいため、大量生産に向いています。

F1種と固定種の違い

特徴の違う固定種を交配した子世代がF1種になります。固定種はF1種から見たら親にあたります。両親の優良な性質を受け継ぎ、異なる品種を交配することで起こる「雑種強勢」によって生育旺盛で収量の向上も期待できます。ただし、種取りしてもその特徴が孫世代に受け継げないため、種を毎年購入する必要があります。

F1種のメリット・デメリット

メリット ・病害に耐性がある
・栽培しやすく収量が多い
・苗での購入も容易
デメリット ・自家採取ができない
・形や味に個性が出にくい
・種や苗の購入コストがずっとかかる

病害に耐性があり、成長スピードも一定のため、育てやすく計画的な安定供給がしやすいF1種。現代農業には欠かせない存在となっています。絶え間ない研究開発や品種改良によって新たな特長をもった野菜が登場するのもF1種の魅力です。

固定種に比べて生育が早いので市場により多くの出荷が可能で、形や大きさも揃うので箱に入れやすいといったメリットもあるため、現在流通している野菜のほとんどがF1種となっています。しかし、自家採取ができないので種や苗を毎年購入する必要があり、その購入コストがずっとかかるといったデメリットもあります。

固定種のメリット・デメリット

メリット ・自家採取ができる
・気候や風土に適応しやすい
・伝統野菜を未来につなげられる
デメリット ・収量や品質が安定しない
・苗での販売があまりない
・計画的な安定生産が難しい

親から子、子から孫へと野菜の形質が受け継がれているのが固定種です。固定種の中には、800年もの長きにわたって受け継がれている種もあります。気候や風土に適応しやすいため、京野菜をはじめ地域のブランド野菜として付加価値がついているものも多く存在しています。

個性が強いため作物の形や大きさ、生育時期がそろいにくいというデメリットはあるものの、少しずつ収穫できて、味の濃い野菜ができるため家庭菜園での人気が高まってきています。種の自家採取によって翌シーズンも同じ野菜が育てられ、野菜栽培のサイクルを自分で完結できる点も固定種の魅力と言えるでしょう。

F1種に関するよくある質問

病気に強く味や形、成長スピードも均一なF1種。野菜の安定供給を支えるF1種に関する、よくある質問をまとめてみました!

Q. F1種は危険?

A. F1種は危険というイメージは誤解です

F1種は「種取りができない=子孫が残せない」という性質から、人体や環境に悪影響があるといった誤解が生じているようです。種苗会社が利益のためにF1種ばかりを扱っているという声もあるようです。
しかし、悪影響をおよぼす科学的な根拠はないというのが一般的な見解ですし、F1種の開発・供給には多大なコストがかかります。F1種と遺伝子組み換えを混同している方もいるようですが、F1種では遺伝子操作はしていません。

Q. F1種の野菜のタネの見分け方は?

A. F1種はパッケージのどこかに「交配」と書かれています

購入した種のパッケージを確認してみてください。「交配」と書かれているものはF1種です。「メーカー名+交配」と書かれている場合もあります。野菜の実物を見て判断する場合は、色や形が揃っているものはF1種の可能性が高く、固定種は不揃いなことが多いです。ちなみに、身近なスーパーなどで販売されている野菜のほとんどはF1種です。

Q. F1種から種取りするとどうなる?

A. 種取りして育てても、同じようにはできません

F1種の野菜や花から種取りをして育てても、親と同じ形質にはなりません。生育がうまくいかなかったり、せっかく育てても実が不揃いになったりします。また、F1品種の多くは登録品種のため、種苗法で保護されています。自家採種した種や、その種から育てた苗や作物は販売・譲渡が禁止されています。(自分の畑で育て、自宅で消費する分に限って自家採種が許容されています)

F1種と固定種。それぞれの特徴を生かして楽しい家庭菜園を

育てやすく、現代農業になくてはならない「F1種」と、伝統や個性を楽しみながら種取りできる「固定種」。それぞれにメリット・デメリットがあることがご理解いただけたかと思います。それぞれの特徴を活かしながら栽培計画にうまく組み込むことで、より有意義な家庭菜園ライフを送っていただけると思います。

はじめは育てやすいF1種で家庭菜園のコツをつかんで、慣れてきたら固定種の種を入手して自家採種にチャレンジしてみるのもオススメですよ!