東京・上野の東京都美術館で、「マティス展」が始まりました。世界最大規模のマティスコレクションを誇るパリのポンピドゥー・センターから、日本で初公開となる初期の傑作『豪奢、静寂、逸楽』をふくむ名品、約150点が集結。日本では約20年ぶりとなる大規模な回顧展となっています。

誰も見たことがないような鮮やかな色や光を探求し、モダンアートの誕生にも決定的な役割を果たした画家、アンリ・マティス。20世紀を代表するこのフランスの巨匠は、84歳で亡くなるまでの生涯にわたって独創的な表現に挑み続けました。

ポンピドゥー・センター フランス国立近代美術館のマティスコレクションについて、同館のチーフキュレーターのオレリー・ヴェルディエさんは、「彼が色彩の中でどのような道程をたどっていったのか、彼の持っていた技術をすべて見ることができる“例外的”なコレクションです」と語ります。世界でもモマ、エルミタージュに並ぶ素晴らしいコレクションであり、さらに彼の転換期となる重要な作品が数多く含まれているのだそう。

  • ポンピドゥー・センターのチーフキュレーター、オレリー・ヴェルディエさん/『赤の大きな室内』(1948年)の前で

本展のみどころのひとつが、ポスターにもなっている『赤の大きな室内』。アトリエは、初期から晩年に至るまでマティスの重要なモチーフのひとつであり、この作品は最後を過ごしたヴァンスのアトリエを描いた79歳のときのもの。

「マティスの人生は、ことさらに大きな事件があったわけではなく、彼の実験はすべてアトリエで絵画や彫刻を制作する中で、“世界をひっくりかえすような大きな冒険”が行われました」と、東京都美術館の学芸員 藪前知子さん。「世界は調和に満ちていて、その世界でマティスが受けた感覚をどのように絵画の中に表現するか。この作品には異なるいろいろな世界が束ねられ、さまざまな要素が一枚の絵画の中に調和を持って存在している。それが実現されています」と解説します。

  • 彫刻の連作『背中Ⅰ』(1909年)、『背中Ⅱ』(1913年)、『背中Ⅲ』(1916-1917年)

  • 切り紙絵の名作もずらり

本展では絵画に加えて、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、さらに80歳を過ぎて“礼拝堂をまるごと装飾する”という、晩年に手がけた南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の装飾に関する資料まで、各時代を代表的する作品が網羅的に、多角的に紹介されています。

  • マティスは本の表紙デザインも多数手がけていた

  • 最晩年、マティスの集大成ともいえるロザリオ礼拝堂の装飾に関する資料群は圧巻

若き日の挑戦から最晩年の傑作まで、マティスの“色彩の冒険の旅”を間近で味わいに、ぜひ足を運んではいかがでしょうか。

  • 『自画像』(1900年) ポンピドゥーセンター/国立近代美術館

■information
「マティス展」
会場:東京都美術館
期間:4月27日~8月20日(9:30~17:30、金曜日は20:00まで)/日時指定予約制/月曜・7/18休(※5/1、7/17、8/14は開室)
観覧料:一般2,200円、大学生・専門学生1,300円、65歳以上1,500円