現在の軽自動車は、1,700mmを超える全高とリアにスライドドアを備えた「軽スーパーハイトワゴン」の人気が高い。その中でもホンダ「N-BOX」がダントツに強く、それをダイハツ「タント」とスズキ「スペーシア」が順位を変えながら追い、最後発の日産「ルークス」も2位、3位に迫りつつあるという状況だ。
毎年3月は自動車がもっとも売れる時期だが、コロナも収束ムードにある2023年はどうだったのだろうか? 今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2023年3月の新車販売における人気車種トップ15を紹介する。
2023年3月軽自動車人気車種ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 27,811 |
2 | ダイハツ | タント | 15,251 |
3 | スズキ | スペーシア | 13,137 |
4 | ダイハツ | ムーヴ | 12,592 |
5 | 日産 | ルークス | 10,192 |
6 | スズキ | ワゴンR | 7,735 |
7 | スズキ | アルト | 7,476 |
8 | ダイハツ | タフト | 7,392 |
9 | ダイハツ | ミラ | 6,605 |
10 | 日産 | デイズ | 5,583 |
11 | ホンダ | N-WGN | 5,558 |
12 | スズキ | ハスラー | 5,292 |
13 | スズキ | ジムニー | 3,859 |
14 | 三菱 | eK | 2,995 |
15 | 日産 | サクラ | 2,888 |
※通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算せず
1位: ホンダ「N-BOX」
今やその名を知らない人はいない軽スーパーハイトワゴンの王者がホンダの「N-BOX」。2011年12月のデビュー直後から大ヒットし、2017年のフルモデルチェンジを挟んで軽自動車の新車販売でトップをひた走っている超人気モデルだ。2022年にはトヨタの「ヤリス」や「カローラ」といった小型・中型乗用車を含めた自動車全体で国内販売No.1を記録している。
ほかのライバル勢とはことなる「N-BOX」独自の構造が、ホンダの特許技術「センタータンクレイアウト」だ。これは一般的には荷室の下に配置される燃料タンクを薄型にして前席下にレイアウトしたもので、荷室の低床化や走行時の安定性を高めるというメリットを生む。小さくて軽いクルマほど効果は大きいため、軽自動車の「N-BOX」にとって、ライバル勢に対して大きなアドバンテージになっているはずだ。
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2位: ダイハツ「タント」
現在売れ筋の軽スーパーハイトワゴンのパイオニア的な存在がダイハツの「タント」。初代のデビューは2003年で、現在は4代目になる。バリエーションモデルは大型の台形グリルやアルミホイールを装備し、ブラック基調で高級感のある内装を与えられた「タントカスタム」のほか、2022年の10月にはSUV風の「タント ファンクロス」を追加している。
「タント」最大の特徴といえば、やはり助手席側に装備された「ミラクルオープンドア」だろう。これは前後ドアにピラー(柱)を内蔵して巨大な開口部を実現するアイデアで、大きな荷物の積み込みや子供や高齢者と一緒に乗降するといったシーンでは大いに役立つはずだ。また、高い車高でも走行安定性に影響が出ないよう、トヨタ「TNGA」のダイハツ版「DNGA」を採用して車体の基本性能を向上させている。
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3位: スズキ「スペーシア」
ダイハツ同様、軽自動車を主業とするスズキの軽スーパーハイトワゴンが「スペーシア」。初代のデビューは2013年で、先代車「パレット」のコンセプトを受け継ぎ、ロングホイールベース化した新プラットフォームで登場した。現行の2代目はスーツケースのようなベーシックモデルのほか、大型メッキグリルの「スペーシア カスタム」や、SUV仕立ての「スペーシア ギア」、軽商用車の「スペーシア ベース」といったバリエーションを展開している。
現行の「スペーシア」には全車にスズキ独自のマイルドハイブリッドが装備されている。ISG(モーター機能付発電機)と大容量リチウムイオンバッテリーにより、モーターによるクリープ走行と静かでスムーズなエンジン再始動や、坂道や高速道路の合流時にモード変更ができるパワーアシストなど、低燃費とパワフルな走りを両立する。
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4位: ダイハツ「ムーヴ」
「ムーヴ」はダイハツが1995年から発売している軽トールワゴン。軽スーパーハイトワゴンよりも車高を抑え、後席も一般的なヒンジ型のドアにするなど、誰にでも扱いやすい4人乗りの軽乗用車としてのバランスを重視しているモデルだ。ダイハツは長い歴史を持つ「ムーヴ」のブランドを大切にしており、上級グレードの「ムーヴ カスタム」は同社の軽自動車に対するこだわりが詰め込まれている。
また、派生モデルとしてレトロポップなエクステリアと、リアにスライドドアを与えられた「ムーヴ キャンバス」がある。1,700mmを切った前高は軽スーパーハイトワゴンよりも低いが、そのデザイン性の高さから女性ユーザーを中心に人気も高く、2022年のモデルチェンジではDNGAを採用し、待望のターボモデルも加えられた。
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5位: 日産「ルークス」
「N-BOX」「タント」「スペーシア」に続く第四の軽スーパーハイトワゴンが日産の「ルークス」だ。車体は三菱との合弁会社NMKVで開発されたもので、三菱「eK」とは姉妹車にあたる。エンジンもNMKV製だが、日産によって専用のセッティングが施され、スマートシンプルハイブリッドも装備した。
日産自慢の「プロパイロット」や「インテリジェント アラウンドビューモニター」、「アダプティブLEDヘッドライトシステム」をはじめとした安全運転支援機能も充実しており、JNCAP最高評価「ファイブスター賞」も獲得している。2023年の6月下旬には、新型「セレナ」のような進化版「Vモーショングリル」のフロントマスクをはじめ、内外装の質感をアップさせたマイナーチェンジ版が発売予定だ。
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年間でもっとも自動車が売れるのは3月だが、2023年もホンダの「N-BOX」が2位以下に圧倒的な差をつけて首位を独走する結果となった。その台数は27,811台で、普通自動車でトップのトヨタ「ヤリス」の22,322台を上回っている。つまり、2022年の年間販売台数に引き続き、相変わらず「N-BOX」は日本一売れているクルマとしての記録を伸ばし続けていることになる。
「N-BOX」をはじめとする軽スーパーハイトワゴンは高い車高と後席スライドドアを備えたもので、ライバルも同様のパッケージを持っている。これらが売れるのは、もう軽自動車は小さくて安っぽいクルマではなく、小型ファミリーカーというポジションを獲得しているためだろう。価格は小型の普通車並みでも装備や質感も充実し、車格こそ軽自動車枠だが、高い車高を活かして普通車の小型ハッチバックよりもユーティリティ性は高い。さらに維持費も安いとくれば、過去の軽自動車に対する先入観を持っているユーザーでなければ受け入れられるはずだ。
また、軽自動車規格の最大全高は2,000mmまであるが、「N-BOX」をはじめとした人気モデルは1,700~1,800mmに収まっている。“スーパーハイト"とはいっても、“ちょうどよいスーパーなハイト"であり、車高が高いほどよいというものではなさそうだ。これは操安性や自家用車としてのルックスや内外装の質感や、これにかかるコストなどのトータルバランスが関係していると思われる。
さらに「N-BOX」にはホンダという強いブランド力や、クルマとしての完成度も高いため、ライバルより価格が高くても大きな問題にはならず、現時点では脅威となるライバルはいない。しかし、かつての初代スズキ「ワゴンR」のように、爆発的なヒットモデルでも、いつかはそれを超えるモデルが現れる。今後、軽だけでなく普通車も含めて「N-BOX」を凌駕するクルマが登場するとしたら、それはどんなものになるのだろうか?