日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、東日本大震災の津波で家族全員を失った少年と伯母の12年を見つめた『ひとりじゃない 家族になったボクとおばちゃん』(ミヤギテレビ制作)を、きょう23日に放送する。

  • 日野玲子さん(左)と辺見佳祐さん

宮城県石巻市の辺見佳祐さん(19、震災当時7)は、東日本大震災の津波で自動車整備工場を営む両親、祖母、当時小学4年の姉と家族全員を失った。ひとりぼっちになった佳祐さんを引き取ったのは、仙台で一人暮らしをしていた母の姉で伯母の日野玲子さん(63、震災当時51)。2人は被災を免れた石巻市の佳祐くんの自宅2階で一緒に暮らし始めた。震災の前年に離婚し、子供がいなかった玲子さんにとって初めての子育て。父親に憧れていた佳祐さんのため、そして生計を立てるために、未経験ながら佳祐くんの両親が営んでいた自動車整備工場の経営も引き継いだ。

玲子さんは震災後の佳祐くんの心の傷を心配していたが、玲子さんの前で涙を見せることはなかった。まずは、同じ時を過ごし心の距離を縮めることから始めようと、遠慮がちだった玲子さんは、次第に佳祐さんを叱ったりケンカもするようになる。

佳祐さんは普段は明るい性格の男の子。それでも、家族の思い出に触れると仏壇の前で眠り込んだり、小さいころからの癖だった「指しゃぶり」をするなど、悲しみを心にしまい込んでいるようだった。小学校高学年になり反抗期を迎えると2人の会話は減っていく。玲子さんは成長を嬉しく思いながらもどこかで寂しさを感じていた。

中学生になり、佳祐さんは入部した柔道部の上級生と人間関係が原因で不登校になってしまう。玲子さんは思い悩む日々を過ごすが、あることがきっかけで1年に及ぶ不登校にピリオドを打つことになる。

高校生になり、佳祐さんには明確な将来の夢ができた。それは「憧れていたお父さんの仕事、おばちゃんが守ってくれた工場を継ぐこと」。誰よりも喜んだのはおばちゃんだった。

2人が暮らして10年、佳祐さんは心に秘めていた気持ちを玲子さんに打ち明けた。去年の春、佳祐さんは高校を卒業し亡き両親が残してくれた工場を継ぐため、自動車整備士を養成する仙台の専門学校に進学した。そして、あれから12回目の3月11日。2人の思いとは…。

甥っ子とおばちゃんが寄り添い過ごした12年。ゆっくりと“家族”に近づいていく日々を見つめていく。