人間誰しも、自分の過去を振り返って「あのときに戻れればな」と思ったことがあるはずです。しかし、過去に起こったことはもう変えられません。

この記事では、過去に戻りたいと考えるのはどのようなときなのか、その心理や原因を解説します。また過去に戻りたいと思いやすい人の特徴、過去に戻りたいと思うことのデメリットの他、過去に戻りたいと思ってしまうときの対処法もまとめました。

  • 過去に戻りたいと考えてしまうのはどのようなとき?

    過去に戻りたいと考えてしまう原因や対処法などを解説します

過去に戻りたいと思うときの心理や原因とは

過去に戻りたいと考えることは必ずしも悪いことではありません。しかし過去ばかりを見つめていては、今目の前にある大切なものを逃してしまう可能性があります。そうなる前に、過去を思い返してばかりいる自分と決別しましょう。

過去に戻りたい理由を知ることは、弱い自分とさよならするための第一歩です。

では、今から過去に戻りたいと考えてしまう時の心理や原因を紹介します。自分に当てはまるものがないか一緒に見てみましょう。

後悔が残る選択をしてしまったから

「人生は選択の連続である」とよく言われます。進学か就職か、どこの大学にするか、何の仕事をするかなど、今後の人生を左右するような、重要な場面での選択を誤ってしまったという経験は、いつまでたっても「後悔」として頭の中に残ります。

特に「やる」「やらない」という選択において「やらない」を選んだ際の後悔は、「やる」の後悔より大きく残る傾向があるといわれています。

大抵の「やらない」の結果は現状維持ですが、「やる」と良くも悪くも何かが変わります。そのため、人々は「やる」を選べば何か良い方に変わっていたのでは、と考えるのでしょう。

しかし、本当に良い方に変わっていたかどうかは誰にも分かりません。答えが得られないからこそ、いつまでたってもやっていた場合のことを想像し、考え込んでてしまうのです。

現状から逃避したいという感情があるから

「過去に戻りたい」と思うのは、現状に問題があるからという場合もあります。

「今月は出費が多いな…」「健康診断にひっかかっちゃった…」「残業が多すぎてしんどいな…」など、お金や健康、仕事など、大人が抱えている悩みの多くは、大人になったゆえのものです。その場合、最も適した現実逃避先は「過去」なのです。

子どもの頃はそういった悩みはなく、目の前の日々を全力で楽しんで生きていたはずです。それゆえ、子どもだった過去に戻りたいと考えてしまうのでしょう。

過去に大きな失敗をしてしまったから

大事な場面で失敗をしてチームの皆を落胆させた、何かを壊してしまった、人を傷つけてしまった、大金を失ったなど、失敗は人の心に大きな傷を残します。

中には、トラウマ化して一生かかっても癒えない心の傷になったり、文字通り身体に残る傷になったりするものもあるでしょう。

そうなったとき「あの失敗さえなければ」「あのときの行動を変えていれば」と思い、過去に戻りたいと考えるのです。

友人と久々に顔を合わせたから

同窓会などで久しぶりに学生時代の友人と顔を合わせると、思い出話に花が咲きますよね。

授業中に居眠りをして先生に怒られたこと、部活の大会で優勝したこと、隣のクラスの好きな人としゃべれたこと。

青春時代のさまざまなことを思い出して、楽しかった「あのとき」をまた経験したいという気持ちが生じたとき、過去に戻りたいと感じることがあります。

昔のように何かをしたいという感情があるから

若い頃は多くの人が、やってみたいことに積極的に挑戦したり、おかしいと感じたことに強く反発したりしますよね。

しかし、大抵の人は年齢を重ねると好奇心や冒険心が薄れたり、何事に対しても熱が上がりにくくなったりと、心にネガティブな変化が現れることがあります。守るべきものが増えて失敗を恐れたり、過去の経験から物事の怖さを知り、消極的になったりするのかもしれません。

精神以外に、身体的にもネガティブな変化が現れることがあります。例えば学生時代はいくら食べても太らなかったのに、大人になると普通の生活をしているだけで体重が増えたり、少しの階段で息が切れてしまったり、衰えや老いを感じる場面に遭遇するでしょう。

そのような場面に出くわしたときに「ああ、老けたな」「昔はこうじゃなかったのにな」と、過去の自分と現在の自分とを比較し、過去の自分に戻りたいと思ってしまいます。

他人と自分を比べてしまったから

年齢を重ねれば重ねるほど、自分と他人の人生は大きく変わるものです。

例えば、1歳児同士の「差」は、体格や性格の差のようなもので、持って生まれたものがほとんどです。

一方30歳の大人同士を比べると、ライフスタイルに大きな差が生まれ、仕事や年収、配偶者の有無など、比べてしまう箇所も増えます。そしてその箇所の多くは、その人自身が築き上げてきたものです。

ふとした瞬間に「あの人はあんなにすてきな人生を送っているのに、自分は…」と、誰かと自分を比べてしまい、みんな同じだったあの頃に戻って、人生をやり直したいと思うのです。

なおこれは、他人の良いところばかりが見えるSNSの普及によって助長された、現代ならではの現象ともいえます。

過去に戻りたいと考えやすい人の特徴

  • 過去に戻りたいと考えがちな人の特徴

ここからは、過去に戻りたいと考えやすい人の特徴を紹介します。

本人の性格だけではなく、置かれている現状や重ねてきた経験が「過去に戻りたい」という思考、心理を形成すると考えられます。自分と照らし合わせて、当てはまっているものがあるかを確認してみましょう。

自己肯定感が低い

自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れる感覚のことです。自己肯定感が低い人は、容姿や性格、ステータスなど、今ある自分を認めることを難しく感じてしまいます。

例えば、何かを成し遂げたり、他人から褒められたりしても「私よりすごい人なんてたくさんいるし」「私なんてまだまだだから」と、自分のできない部分ばかりを見る傾向があります。

そのため「学生時代に戻って、もっと勉強していい大学に入っていたら…」「この仕事に就く前に、あの資格をとっていれば…」といった「たられば」なことを考え、自分に自信を持たせてくれるような武器を身に付けるために、過去に戻りたいと思うのです。

責任転嫁をしてしまいがち

過去に戻りたいと思いやすい人の中には、責任転嫁、つまり「これは自分のせいではない」と、自分の選択や行動の結果を他人になすりつける人も多いでしょう。

責任転嫁を繰り返すことは、自分を守る術の一つかもしれません。しかし、責任を取らないということは、逆にたとえ物事が成功したとしても、自分で作り上げてきたものと実感できず、むなしく感じてしまうということです。

また、責任を自分で負う人は、自分の下した判断の結果がたとえ失敗でも「自分の決めたことだから仕方ないか」と納得できますが、それを責任転嫁して他人の判断が起こしたものとしてしまうと、腑に落ちず、後悔が残るでしょう。

その後悔やむなしさが現状への不満へと変わり、過去へ戻りたいという思考を生み出すと考えられます。

昔と今とのギャップが激しい

成功した経験というものはいつまでたっても脳裏に強く残り、忘れられないものです。そのため、その頃の自分と現在の自分を比べて、劣等感を覚えてしまうことがあります。

また、過去に成功を収めた経験があると、達成感を得られていない現在の生活をつまらないものと感じてしまいます。

そのような状態が、輝かしい過去へ戻りたいと強く思わせます。

自己主張が苦手で、自分より他の人を優先してしまう

他人の気持ちや判断を尊重できることは非常にすばらしいことです。一方、自己主張をせずに他人に合わせ、自分の欲求を抑えてばかりだと、ストレスを生みます。

他人の意見に左右されて人生を進めてきた過去の自分に対して、憤りを感じることもあるでしょう。

「あの時、自分の意思を尊重していたらどうなっていたのだろう」と思い、過去へ戻りたくなると考えられます。

趣味ややりがいがなく、時間を持て余している

趣味ややりがいは、なくては生きていけないというものではありません。しかし、趣味ややりがいは人生を豊かにしたり、満足度の高いものにしたりしてくれます。

趣味がなく時間を持て余した結果、暇な時間は部屋でごろごろしているという生活は、体を休められるという点ではいいかもしれません。しかし、そういう休日が続くと時間を無駄にしているような感覚になり、生産性のない生活を送っている自分に嫌悪感を抱いてしまう場合があります。

そのようなときにふと、目標に向かって頑張っていたかつての自分の姿を思い出し、過去に戻りたいと考えるのです。

過去に戻りたいと考えてしまうことのデメリット

  • 過去に戻りたいと考えてしまうことのデメリット

過去に戻りたいと思う原因は必ずしもネガティブな理由だけではありません。しかし、過去に戻りたいという思いは、後ろ向きな考えからきている場合が多いこともまた事実です。

ここからは、過去に戻りたいという考えを持つことのデメリットを紹介します。

現実逃避をしてしまう

過去の良い時代に目を向け現実逃避をすることは、短時間であれば大きな問題にはならないでしょう。

一方、その期間が長引くと、現実の仕事や生活に支障をきたし、人間関係にひびを入れることにもなりかねません。そんな自分が嫌で、さらに遠い深いところに逃げてしまうという悪循環に陥る可能性もあります。

意欲がなくなる

「もしかしたら」と、可能性を信じることはすばらしいことですが、残念ながら過去にはどうやったって戻れません。

過去に戻りたいという満たされない欲求を持ち続けることによって、フラストレーションがたまってしまいます。

また過去のことを悔やんでいると、どんどん落ち込んで後ろ向きな気持ちになってしまいます。過去のことに心を奪われたままでは、未来のために何かをするモチベーションを捻出することは難しいでしょう。

自己肯定感が高まらない

自己肯定感を高めるために必要なことは、今のありのままの自分を受け入れることです。過去に戻りたいという気持ちが強いということは、現在の自分に不満があり、受け入れることができていないと考えられます。

たとえ自分に欠点が多くても、現状がつらくても、まずはありのままの自分や、自分の置かれた状態を受け入れましょう。自分を受け入れることで、自己肯定感を高めるステップに移ることができます。

過去に戻りたいと考える気持ちへの対処法

  • 過去に戻りたいと考える気持ちへの対処法

残酷ですが、過去に戻ることも、意図的に任意の記憶を消すことも、現代の技術ではできません。時間は不可逆です。人は過去を背負って生きていくしかありません。

しかし前項で紹介したように、過去にすがって生きていくことは、場合によってはこれからの人生を大きくゆがめてしまう可能性があります。そうならないように、過去に戻りたいと考える気持ちにどのように対処したらいいのか、するべきことや考え方をお伝えします。

まずは後悔している感情を受け入れる

まずは「過去に戻りたい」と思わせている、過去の後悔と向き合いましょう。しっかりと向き合い受け入れることが、全ての第一歩です。

ここまでの項目で、後悔があることは良くないことのように感じてしまっているかもしれませんが、後悔という感情は人生にとって必要なものです。後悔や失敗は、今後の人生でまた同じようなことを経験しないようにするきっかけになります。

重要なことは、その後悔や失敗から学ぶことです。次のステージへ進むために、目をそらさずに過去と向き合いましょう。

過去に戻りたい理由を考える

過去の後悔と向き合えたら、なぜそこに戻りたいのか、その理由を分析してみましょう。

「なんとなく」や「ぼんやり」と思っていたことについて、解像度を高めて言語化する方法をおすすめします。

過去は変えられませんが、満足していない今を過去の状態に近づけることは不可能ではありません。なぜ過去をうらやましく思うのかという理由を細分化し、それを一つずつ解決しましょう。

将来の目標を定める

過去と向き合いそれに対して現在できる解決策を立てられたら、次は将来の目標を立てましょう。

未来の自分がどのようになるのかを知っている人は、誰もいません。過去に戻れないのと同様に、未来へ飛ぶこともできません。しかし、過去は変えようのない事実であることに対して、未来は自分でどのようにでも変えられる可能性を秘めています。

自分の将来がどのようになっていてほしいか、その理想をかなえるためには何をすればいいのか、目標を立ててそこに向かうことで、自然と過去ではなく将来に目が向くようになります。

趣味として何かを始めてみる

趣味や刺激がなく、現状の毎日がつまらないと感じているのであれば、何か新しいことを始めてみるのもいいでしょう。

運動や読書のように、あまりお金をかけずに自分でできるものから、楽器や生花のような習い事まで、選択肢は多くあります。

リフレッシュになり、将来の目標につながる可能性もあるため、新しい趣味を始めることは非常におすすめです。

今ある大切なものについて考える

過去を見てしまうのは、現状とその頃を比べ、今が劣っていると感じているためです。

しかし実際には、昔は持っていなかったものを今は持っていたり、昔できなかったことが今はできたりしています。また、新たな出会いもあったでしょう。

どんなに小さなことでも、今自分の周りにある大切なもの、楽しいこと、好きなものを探して、それらのことを考えて生活してみましょう。少しずつですが、ポジティブな気持ちになれるはずです。

他人の評価は気にせずに、物事を自分の基準で決める

人気漫画である『鬼滅の刃』の作中には、「生殺与奪の権を他人に握らせるな」というセリフがあります。これは分かりやすく言うと「他人に自分を思い通りにさせるな」という意味です。

当たり前のことを言いますが、あなたの人生はあなたのものです。法を犯したり他人に多大なる迷惑をかけたりしない限り、自分の基準で物事を考え、行動することは制限されません。

他人の発言によって自分を変えたり、周りにどう思われるかで自分の良しあしを決めたりする必要はないのです。

他人と比べるのをやめ、自分の幸せについて考える

発展途上国でありながら、「幸せですか」という質問に国民のほとんどが「はい」と答え、「世界一幸せな国」として有名になったブータンという国があります。

しかし、情報鎖国が解かれ他国の情報が入ってきた今、その幸福度は急落してしまいました。他国と自国の状況を比べてしまったからだと考えられます。

幸せとは相対的なものではなく、絶対的なものであるはずです。「あの人の方が私よりも幸せ」ではなく、「あの人も、私も幸せ」でいいのです。また、他人が持っていて自分が持っていないものがあっても、それは自分の方が不幸だということではありません。

他人との比較で自分の幸せを測るのをやめ、自分の幸せとは何なのか、自分にだけ目を向けるようにしましょう。

変化を怖がらず、楽しむ余裕を持つ

大人になると多くの場合、環境が固定され生活がルーティン化するものです。

毎日の繰り返しは刺激こそないものの、安定して居心地の良い、ぬるま湯につかっているような状態です。

確かに、変化はストレスとなり得ます。しかし、変化を受け入れていくことは人生において非常に重要です。環境の変化を拒んでしまっては、現状維持のままです。現状に満足がいっていないのであれば、なおさら変化を受け入れましょう。変化は、そこからの人生をより良いものへと変えていく可能性を大いに秘めています。

人生をやり直すことはできないから、今を後悔のないように過ごそう

繰り返しになりますが、過去は変えられません。そして後悔している記憶を消すこともかないません。変えられるのは未来だけです。今の行動が未来をどのようなものにもします。

過去の後悔を未来の幸せを得るための教訓とし、限りある時間の中で自分を幸せにするためにできることをしましょう。