韓国ドラマやK-POPをはじめ、韓国のポップカルチャーが世界を席巻する中、韓国語学習者も急増中。日本でも、趣味感覚で楽しく韓国語を学ぶ人が増えています。世界で展開する無料語学アプリ「Duolingo」によると、韓国語は日本語スピーカーにとって比較的習得しやすい言語だといいます。言葉がわかるようになるほど、趣味活もますます楽しくなる。今回は日本語と韓国語の共通点や、日本語とは異なる韓国語の特徴をご紹介します。

日本人にとって韓国語は学びやすい言語

韓国ドラマを見ているとて、日本語と意味や発音が同じ、あるいは似ている単語が多いことに気づくはず。「韓国語は日本人にとっては学びやすい」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。日本と韓国は、漢字文化圏に属する東アジアの国で、どちらもSOV(主語⇒目的語⇒動詞)型の語順をとっているため、お互いに習得しやすい言語とされています。

■語順の例

저는 한국인입니다 = 私は韓国人です(チョヌン ハングギン イムニダ)
저(私)는(は) 한국인(韓国人) 입니다(です)

한국어는 어렵지 않아요 = 韓国語は難しくありません(ハングゴヌン オリョㇷ゚チ アナヨ)
한국어(韓国語)는(は) 어렵지(難しく) 않아요(ありません)

助詞の種類や使い方が似ていることや、主語を省略しても意味が通じること、タメ口と敬語を使い分けていること、膠着語(こうちゃくご)に分類されることなど、さまざまな共通点があるため、日本人にとって韓国語は比較的ハードルが低い言語だといえるでしょう。

■省略の例

잘 잤어요? = よく眠れましたか?( チャㇽ ジャッソヨ)
잘(よく) 잤어요(眠れましたか)?
※主語(あなた)を省略しても意味が通じる

韓国語と日本語に似ている単語が多い理由

前述の通り、韓国語には日本語と意味や発音が同じ、もしくは似ている単語が少なくありません。そもそも、なぜ韓国語と日本語で意味や発音が共通する単語が多数あるのでしょうか。

韓国語はすべて特有の文字「ハングル」で表記されるため、ハングルがわからない人には一見、記号のように見えるかもしれません。ですが、韓国の「標準国語大辞典」の見出し語のうち約57%が漢字語(もともと漢字で存在している単語をハングルに置き換えて作ったもの)です。同様に、日本語も中国から大量の漢語を借用して発達してきました。韓国語の漢字語の発音は音読みのみなので、日本語の漢語の音読みと似ていたり、まったく同じように聞こえたりすることが多いのです。

■一見記号のようなハングルは、実に合理的

韓国語を象徴するハングルは、読み方がわからないと、とっつきにくい印象がありますが、実は非常に合理的な文字だといわれています。ハングルは15世紀半ば、朝鮮王朝第4代王の世宗大王(セジョンテワン)が臣下の学者に命じて誕生しました。ひらがなやカタカナ同様、文字が音を表す「表音文字」で、誰にでも読み書きができるように作られたため、仕組みさえ理解すればスラスラと読めるようになるはずです。

これは携帯電話で韓国語を打つためのキーボードで、「천지인(チョンジイン) 天地人」と呼ばれます。どんなに複雑に見える韓国語の文章でも、子音と母音の組み合わせで書き表しているということを覚えておいてください。

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聞き分けが難しい? 日本語には存在しない音も

韓国語は、日本語と発音や意味が共通する単語も多いとはいえ、やはり外国語。日本語には存在しない音もあります。

韓国語の音の特徴として、「받침(パッチム)」が挙げられます。韓国語は、子音と母音を組み合わせてひとかたまりの音である「音節」を作ります。例えば、子音の(g)と母音の(a)をくっつけると(ga)という音節になります。

日本語の音は「ん」以外は必ず母音で終わりますが、韓国語の場合、子音が音節の終わりにくることもあり、「火」を意味する(bul)は子音の(l)で終わっています。このように、音節の最後にくる子音を「パッチム」といい、書くときは子音と母音が組み合わさった音節の下に追加します。日本語には存在しない発音のパッチム(例:パッチム)や、日本語話者には微妙な違いを聞き分けにくいパッチム(例:ㄴ、ㅁ、ㅇ パッチムがすべて日本語の「ん」に聞こえる)もあるため、韓国語を学ぶ際に困ることもあります。

母音の種類が日本語より多いのも韓国語の特徴。日本語では使われていない音の(eo: 「あ」と「お」の中間音)、)(yeo: 「や」と「よ」の中間音)、(「い」の口で「う」というような音)、(「い」の口で「うぃ」というような音)といった母音も存在します。

「子音の平音・激音・濃音の聞き分けが難しい」という学習者も多いそうです。平音(例:ㄱ ㄷ ㅂ ㅅ ㅈ)は基本子音の一部で、激音(ㅋ ㅌ ㅍ ㅊ)は息を強く吹くようにして発音、濃音(ㄲ ㄸ ㅃ ㅆ ㅉ)は息を出さずに強く発音する音ですが、日本語スピーカーには全部同じように聞こえることが少なくありません。

「月」という意味の(dal)、「仮面」という意味の(tal)、「娘」という意味の(ttal)がその一例です。

韓国語の文章は「分かち書き」がカギ

韓国語は日本語同様、SOV型で語順が似ていますが、文法上の目立った違いはあるのでしょうか。

日本語と韓国語の顕著な違いのひとつが、文節と文節のあいだにスペースを入れる「띄어쓰기(ティオスギ) 分かち書き」。韓国語を書き表すときは必ず分かち書きをする必要があり、これを間違えると意味が変わってしまうこともあります。

例えば「아버지가(お父さんが) 방에(部屋に) 들어가신다(お入りになる) (アボジガ バンエ トゥロガシンダ)」は、分かち書きを1箇所間違えただけで「아버지(お父さん) 가방에(カバンに) 들어가신다(お入りになる)(アボジ カバンエ トゥロガシンダ)」になってしまいます。

また、韓国語の助詞は、日本語の助詞とその種類や使い方が似ていますが、助詞の前にくる音節の最後にパッチムが存在するかしないかで助詞を変える必要があります。

韓国語にも3種類の敬語がある

外国人が日本語を学ぶときに苦労する要素のひとつに「敬語」が挙げられます。韓国語も日本語同様、タメ口と敬語を使い分けていて、タメ口は「반말(パンマル)」、敬語は「존댓말(チョンデンマル)」といいます。

韓国語の敬語表現には、話の聞き手に応じてスピーチレベルを変える「상대 높임(日本語の丁寧語にあたるサンデ ノピム)」、話している内容の主語を立てるときに使う「주체 높임(日本語の尊敬語にあたる ジュチェ ノピム)」、自分をへりくだるときに使う「객체 높임(日本語の謙譲語にあたるゲッチェ ノピム)」があります。

日本語にある3種類の敬語が韓国語にもあるとは、お隣の国だけあって文化的な近さを感じますね。ただ、日本では身内に対して敬語を使うことはあまり一般的ではありませんが、韓国では身内であっても年上の人や目上の人には敬語が基本という違いがあります。儒教の国だけあって、年長者や目上の人を敬うことが重視されているのですね。

日本語と共通点もあれば違う点もある韓国語ですが、ヨーロッパ言語などに比べると、ずいぶんとお互いに親しみやすい言語だといえるのではないでしょうか。