物価高騰が続く中、収入を上げたいと考える人は多いでしょう。収入を上げるためには、仕事においてどのようなスキルを身に付ける必要があるのか、収入が高い人はどのようなスキルを持つ人なのかなどを、知ることはとても重要です。

そのため、IT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」がまとめたITフリーランス案件の単価ランキングを基に、市場から求められ、収入が高いITフリーランスエンジニアの傾向を紐解いていきます。

市場で求められている人材とは?

「HiPro Tech」がまとめた2022年のITフリーランスエンジニアの職種、言語、業種別平均単価ランキングを基に、どのような人材が市場から求められているのか紐解いていきましょう。

職種

まず、2022年トレンドを踏まえると、DX化を進めることができる「DXコンサルタント」や「ITコンサルタント」「PM/PMO」「データサイエンティスト」をはじめとしたデータに強い人材の需要は、ITフリーランス市場で高いことが伺えます。

  • 2023年2月 IT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」調べ

これは、企業は現場の業務に即して、DX化を始めているものの、DXに関連した業務経験を持つ人材が社内におらず、外部の専門家を活用してDX化を進めようと考える企業が多いためです。

平均の月額単価も、「DXコンサルタント」が99.1万円と全職種の中で最も高く、次いで「ITコンサルタント」(95.5万円)、「PM/PMO」(91.3万円)は4位となりました。

3位には、「プロダクトオーナー/プロダクトマネジャー」(92.6万円)がランクイン。新規サービス開発や既存サービスの拡大など市場の変化に合わせて、サービスモデルや事業開発ができる人材を求める企業が多いことから、プロダクトやサービスをグロースできる人材のニーズは高い状況です。

データサイエンティストや機械学習・AIも需要は高く、データサイエンティストは5位で90.2万円、機械学習・AIエンジニアは87.5万円でした。これらは、現場で導入が進んでいる技術であるため、外部から専門性が高いITエンジニアを獲得しようと考える企業は多く、単価も高くなりやすいといえます。

一方で、業務系などの基幹システムを扱うエンジニアは単価が低い傾向にあります。

「業務系アプリケーションエンジニア」は19位で74.9万でした。Web系サービスの開発経験を持つ、「フロントエンド&バックエンドエンジニア(リードエンジニア)」(10位/83.1万円)や「バックエンドエンジニア」(13位/79.9万円)の方が単価は高い結果となり、業務系の基幹システム開発を主に経験しているエンジニアは、WEB系の開発経験を積むことで、市場価値向上につながり、単価を上げる可能性も高まるでしょう。

インフラエンジニアでも同様の傾向があります。サーバーやDB、ネットワークなどインフラ関連のエンジニアはオンプレミスの経験だけでなく、クラウドの経験を積むことが市場価値を上げることにつながるはずです。

言語

言語については、モダンな言語を扱えるエンジニアの需要は高く、結果的に単価も高くなると言えます。

1位「Ruby」(88.3万円)、2位「Typescript」(87.5万円)、4位「Python」(85.7万円)、5位「Go言語」(84.4万円)です。いずれもモダンと言われる言語で、平均よりも単価が高くなり、モダンな環境でWEBサービスを開発できるエンジニアは企業から求められていることがわかります。

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例えば、「Go言語」であればブロックチェーン、「Python」は機械学習・データサイエンスといった先端技術の分野でも使用されているため、即戦力なるエンジニアであれば、単価が高くとも受け入れたいという企業は多い現状です。

モバイルアプリ開発も企業ニーズが高いです。単価は、「Swift」(3位/85.7万円)、「Kotlin」(7位/81.5万円)でした。モバイルフレンドリーが当たり前になっている環境において、自社のサービスをモバイルアプリで提供したいと考える企業のアプリ開発や、OSなどのアップロードに伴うアプリ最適化対応などが常に必要であり、エンジニア需要が高まっています。その結果、単価も高くなる傾向があります。

基幹システムなどレガシーな環境で使用される言語は、単価が低い傾向にあります。.net系は「C#.NET」(13位/79.3万円)、「ASP.NET」(14位/79.1万)であり、「Java」(12位/79.4万円)、「C言語」(19位/69.9万円)と、いずれの言語も平均を下回る金額でした。市場価値や単価を上げるためには、WEBサービス開発に対応できるスキルを身に付けることが必要であると言えそうです。

業種

コンサルティング業界の案件は、最も高く91.8万円でした。DX戦略の立案、業務のシステム化企画などの上流工程で、外部人材の力を借りたいと考える企業が多いことが伺えます。

一方で、企業側に全体戦略設計ができる人材が不足しているという実情があり、コンサル企業に事業会社が依頼をし、高単価になっていると考えられます。

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2位は金融業界で91.1万円でした。フィンテックの台頭、金融市場予測への機械学習・AI技術の活用、基幹システムの刷新やセキュリティ強化対応により、IT技術を扱うことができるエンジニアを求めています。

医療業界でもITエンジニアを求める企業は多く、単価は3位の83.7万円でした。診断への機械学習技術の活用や、電子カルテなどの導入により、効率化をすることで、コストカットを図りたいと考える病院や施設が増え、AIや機械学習、システム開発のスキルがあるエンジニアを活用に注力する動きが加速していると言えるでしょう。

人材サービス・アウトソーシング・コールセンター業界も単価は平均以上で、83.5万円です。人材業界においては、新規事業や新規サービス開発を進める企業が多く、サービス企画などの上流から、実際にプロダクトを開発するエンジニアまで幅広くニーズがあります。人材の流動化の高まりに合わせて、サービス形態を変える必要が高まり、市場の変化に合わせたサービスを開発できる人材を求めていると言えそうです。

2022年で最も報酬高かった案件紹介

ここからは、2022年で単価が高かった案件を紐解いていきます。「HiPro Tech」で、2022年に扱った案件で、最も単価がたかった案件は、月額単価200万円が最高額でした。

案件内容は、IT・通信関連の企業が保有するデータ活用のプロジェクトをリードするPM案件、人材系企業で新規事業開発を行う際のコンサルタント案件などです。

データ活用プロジェクトのPM案件では、現状と課題を把握し、データによる解決策の提案し、実現するための道筋を描くことがミッションです。これから、データ活用を進めようという企業に対して、現場を理解しデータ活用に向けた方針の提示を実行していく案件となります。

そのため、技術的な知見を持ちながら、課題の特定から戦略立案、データ分析を経営陣や顧客に提言した経験やステークホルダーと協業したプロジェクトマネジメントの経験が求められました。ここから、現場の課題や現状を理解した上で、実業務に即したDX化を進めることができる人材は、企業からも需要が高いということが言えそうです。

新規事業開発を行うコンサルタントは、複数の領域で、新規事業の開発が進んでいる人材系企業の案件でした。これは、社内だけではリソースが不足しているため、新規事業検討や事業計画の策定、市場調査、サービス課題の解決策の検討、マネタイズ案の検討ができる人材のニーズの高まりにより生まれた案件です。

既存事業のビジネスモデルやサービススキームを、市場の変化や需要に合わせて、変える提案ができるDXコンサルタントやITコンサルタント、プロダクトマネジャーが求められているのでしょう。

ここまで2022年の傾向や単価の実績を見てきました。この結果から、DX化が、事業会社の中で実際に動き出し、その推進や開発ができる人材が必要だと言えます。

これまで培ってきたスキルを、市場の変化に合わせてさらに磨き、スキルアップすることで市場から求められるITエンジニアとなり、結果として単価や収入を上げることにつながると予測されます。

著者プロフィール:荒井雅人(あらい・まさと)

株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)入社後、 人材紹介事業を経験。その後、プロ人材による経営支援サービス「i-common」(現:HiPro Biz)に参画し、2020年にIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「i-common tech」(現:HiPro Tech)を立ち上げ、サービス責任者に着任。