ITエンジニアとして働く人の中には、「フリーランスという働き方に興味がありITフリーランス市場の現状について知りたい」「企業側はIT技術やITフリーランスに対して、どのように考えており今後変化していくのか」など、ITフリーランス市場について、知りたい人もいるのではないでしょうか。

『HiPro Tech』が取引をしている企業の事例を踏まえ、2022年のITフリーランス市場やITテクノロジーの振り返り、2023年の予測など解説します。

  • ITエンジニアの「市場価値や企業ニーズ」はどうなる?

ITフリーランス市場の現状と2022年の振り返り

ITフリーランス市場は、年々拡大しています。ITエンジニアにおいては、コロナ禍の影響を受けて、リモートワークなどの柔軟な働き方を求めることをきっかけに、フリーランスへ独立する動きが加速。

「フリーランススタート」が2022年5月に発表した「ITフリーランス人材及びITフリーランスエージェントの市場調査」によると、2019年は17.6万人だったITフリーランス人口は、2021年には23.1万人で130%ほど伸びており、新型コロナウイルスを機に大きく伸長しました。また、2022年には25万人を超えたと推測され、ITフリーランスエンジニア市場は年々拡大しています。

  • ITフリーランス人材推移 提供:Brocante

実際に、「HiPro Tech」における2022年の新規登録者数は2021年比200%以上となり、フリーランスというはたらき方を求めるITエンジニアは増加していることがわかります。

また、企業側の動きとしては、昨今声高に叫ばれていたDX化が、ようやく事業会社の中で、現場の業務に即した形で進められるようになったという印象があります。

これまでは、DXという概念だけが広がっているのに近い状態で、DX戦略を決めたものの、業務にどのように取り入れるかが見えず、推進にはいたらない事業会社が多かった印象です。

2022年に入ると、企業から「HiPro Tech」へご依頼いただく案件は、基幹システムの刷新、toC向けのプロダクトで顧客体験価値を高めるためのサービス開発等が増え、現場でのDX化が進み始めてきました。事業会社からの案件で特に増えているのが、保有データを活用し基盤を整えたいという相談です。DX文脈で言うと、ビックデータ活用に相当します。

ビックデータというキーワードはこの数年で非常に広がっており、当たり前にビックデータを活用がされていると思われがちです。

しかし、実際には、事業会社では、自社が保有する膨大なデータを活用する方法は、まだまだ定まっておらず、ようやくデータ活用に向けた基盤を整えようという動きが出てきました。保有するデータをビジネスで利用するというのは、次のフェーズになるでしょう。

そのため、2022年は概念的に広がっていたDXが、事業会社の中でどのように自分たちの事業やサービスに取り入れるべきか、具体的な方針を見出せるようになってきたように思います。ようやく政府が掲げているDX戦略が、実態を伴って動き始めたタイミングとも言えるかもしれません。

ITテクノロジー全体の傾向振り返り

ITテクノロジーやIT技術全体だと、ここ2~3年はWEB3、仮想通貨、NFT、メタバースといったテーマが市場を賑わせていました。2022年ではこのようなテーマに加え、OpenAIが開発した「ChatGPT」に代表されるGenerative AIが台頭し、GenerativeAIがビジネスにどのように影響を与えるのかなど、様々なシーンで語られるようになり始め盛り上がりを見せています。

しかし、実際にはこのような技術を使用して、新たな事業やサービス展開を進めようとする企業はあまり多くありません。

その要因の1つとして、例えばブロックチェーン技術を使用して、何を実現できるか具体化できる人材が不足していることが挙げられます。そのため、WEB3の技術に興味を持ってはいるものの、導入は検討中という姿勢を取る企業が多いという印象です。

それよりも、実際に企業の中で進んでいるのは、AI技術の活用です。AIもDX化と同様に、近年よく耳にするキーワードのため、活用は当たり前になっていると感じる人は多いかもしれません。

しかし、企業の現場を見ると、2022年に入り、ようやくAI活用が進み始めたという印象です。AI活用の方法としては、省人化、効率化を目的にした事例が多いです。

例えば、品質管理をチェックする際に、不良品や異物が混入していないか、画像認識を行うAIを活用するケース。AIによって、問題を検知ができれば人間が目視でチェックするよりも精度は高く、必要な人員も減らせるでしょう。業務をより効率化し生産性を向上することが省人化につながり、人件費を抑えられるため、結果、企業の利益拡大につなげるという流れです。

AIというと先端技術を使い、新しいサービスを開発する、未来を予測するというイメージが強いかもしれませんが、現場で実際に利用されているAIは現状の改善を目的にしていることが多く、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)に近い文脈かもしれません。そういった意味では、地に足がついたDX化が広がっているという見方もできるでしょう。

2023年の予測

2023年も、DX化の動きはさらに広がっていくと予想されます。無駄を省き業務効率化を進め生産性を上げる、コストカットを行い、利益の幅を大きくするという、現状改善を目的としたDX化が、大手企業だけではなく、中小企業や地方企業にも広がりを見せていくでしょう。

大手の事業会社が実行したDX戦略を、近い業種・業態の中小企業や地方企業が、同様の施策を取り入れるような形で自社のDX化を進めていくという兆しが見えています。

一方で、2022年と2023年の大きな違いは、IT技術をビジネスに転用する動きが出始めることだと予想しています。例えば、2022年で整えたデータ基盤を活用し、ビックデータ解析を行い顧客ニーズに即したサービスへリデザインする、現場に導入されたAIとIoTを組み合わせ自動化の技術を開発するなどが挙げられるでしょう。

2022年は、現状改善を目的としたケースが多くみられましたが、2023年は新たに導入したIT技術を用いて、ビジネス拡大を視野に入れる企業が増えていくと考えられます。2022年で作り上げたIT技術を活用し、次のフェーズに移行していくというのが、2023年のトレンドになりそうです。

著者プロフィール:荒井雅人(あらい・まさと)

株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)入社後、 人材紹介事業を経験。その後、プロ人材による経営支援サービス「i-common」(現:HiPro Biz)に参画し、2020年にIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「i-common tech」(現:HiPro Tech)を立ち上げ、サービス責任者に着任。