キリンビールは「シングルモルトジャパニーズウイスキー富士」を5月16日より通年で、「シングルモルトジャパニーズウイスキー富士 50th Anniversary Edition」を5月23日より数量限定で発売する。都内で3月13日に開催されたウイスキー戦略発表会で、キリンビールの堀口英樹社長は「富士ブランドの海外展開を加速させていく」と説明した。

  • キリンビールが「ジャパニーズウイスキー富士」の輸出を拡大する

■ウイスキー事業は追い風

ジャパニーズウイスキー富士は2020年4月より販売しているフラッグシップブランド。国内だけでなく海外からも高い評価を得ており、この3年間で売り上げは約10倍と好調に推移している。新たに5月16日よりラインナップに追加するのは、消費者からも要望の高かったシングルモルト。多彩なモルト原酒が織りなす、果実味あふれる芳醇な味わいに仕上げている。

  • 「キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー富士」。容量は700ml、アルコール分は46%。同社ECサイトのDRINXにおける価格は6,600円

  • こちらは現行の「シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士」(左)と「シングルグレーンウイスキー富士」(右)。いずれもボトル底部の富士山のデザインが美しい

また富士御殿場蒸溜所(1973年~)が50周年を迎えたことを記念した「シングルモルトジャパニーズウイスキー富士 50th Anniversary Edition」を5月23日に発売する。販売地域は富士御殿場蒸留所売店およびDRINXで、価格は2万1,780円。3,000本限定となる。中味には、50周年を記念した1973年の操業当時のモルト原酒をはじめ、1970~2010年代の各世代のモルト原酒を選りすぐって使用。貴重な長期熟成原酒ならではの”甘く複雑な熟成香”と”華やかな香り”が調和した、美しい味わいが特徴となっている。

なお「キリンウイスキー 陸」もパッケージをリニューアルし、2023年2月製造分より順次切り替えている。こちらは富士御殿場蒸溜所の多彩な原酒を主体としたブレンドで「ほのかな甘い香りと澄んだ口あたり」「何層にも感じる香味豊かな美味しさ」を実現した商品。

  • パッケージをリニューアルした「キリンウイスキー 陸」。容量は500mlびん / 4,000mlペットボトル、アルコール分は50%、価格はオープン

キリンビールの堀口英樹社長は、国産ウイスキー事業について「当社の持続的成長を達成するための中核戦略のひとつであり、10年先のキリンビールを支える事業」と位置づける。

  • キリンビール 代表取締役社長の堀口英樹氏

国内市場に目を向ければ、ウイスキーの消費量は1983年をピークに衰退が続いてきた。しかし近年は、緩やかな回復傾向にある。キリンビールでも2022年4月に「陸」をリニューアルし、国内の出荷実績を対前年比の約2倍に伸ばした。また同年6月には「シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士」を発売、国内の売上を同約1.4倍に伸ばすとともに、海外の売上も同約3倍まで拡大した。

  • 2022年振り返り

ちなみにキリンビールでは富士御殿場蒸溜所に約80億円の追加投資を行い、2021年より新たな生産設備を稼働させている。熟成庫のリニューアル、大型化などにより保管能力が約2割増強したほか、発酵・蒸留設備も新設したという。

  • 富士御殿場蒸溜所に約80億円の投資

「いま外部環境は円安の影響があり、国産ウイスキーの海外輸出にとっては追い風です」と堀口社長。ジャパニーズウイスキーの魅力を海外に発信することで、2021年には4億円だった売上規模を10年足らずで10倍まで伸ばす、と明言する。「2023年にはアメリカとヨーロッパを中心に輸出展開を拡大します。富士山は日本のシンボルであり、海外の人から見た日本の象徴。富士ブランドの海外展開により2030年には売上40億円規模を目指します」と力を込めた。

  • 富士ブランドのグローバル展開を加速する

  • 2023年の国産ウイスキー販売計画

■2023年は認知拡大へ

続いて、キリンビール 事業創造部の原田崇氏が登壇。リニューアルした「陸」については「味わいと香りが評価され、ブランドイメージが年間を通じて大きく伸長しました」と報告する。

  • キリンビール 事業創造部 主務の原田崇氏

消費者からは「飾り気がなくまっすぐな味なので、つまみを食べたときに邪魔にならない」「食事もお酒も楽しめる」「高級ウイスキーと同じでスーッと喉を通る」「手に届く範囲の高級品」などの声が寄せられているという。そこで2023年には「陸」独自の香味の特徴を新たな広告で訴求し、また大規模なサンプリングも実施してさらなる認知向上を目指す。

同様に「ジャパニーズウイスキー富士」についても、発売から3年で国内外の売上が約10倍まで伸びたものの、市場調査では約80%の人がブランドを「知らない」と答えるなど認知不足の状況が続いているため、2023年は露出を増やして認知拡大に努めていく構え。富士山の麓、御殿場市と協働することでキリンのウイスキー全般を共に盛り上げていくことも考えている、とも明かした。

  • 地域との協働。御殿場駅には、富士御殿場蒸溜所で50年使われた全長6mのポットスチル(蒸留器)を設置する計画