数々の映画やドラマに出演し、2021年には日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど、人気・実力ともに兼ね備えている女優・有村架純。現在、NHK大河ドラマ『どうする家康』で家康の正室・瀬名役を好演中だが、2月23日には主演を務めたNetflix映画『ちひろさん』が世界配信&全国劇場公開される。有村にインタビューし、『ちひろさん』での役作りや女優業への思い、30代の抱負など話を聞いた。

  • 有村架純 撮影:加藤千雅

同名漫画を原作とした本作は、元風俗嬢の主人公・ちひろが、心に傷や悩みを抱えてうまく生きることができない人々と交流し、彼女の言葉や行動がそれぞれの生き方に影響を与えていく物語で、心のままに生きることの大切さや孤独と向き合うことの尊さを描いている。

のびのびと心のままに孤独を謳歌する主人公・ちひろを演じた有村は、「普段の自分とは遠いところにいるキャラクター」だと感じたという。

「黒髪ロングが似合って、佇まいからも香りを感じるような妖艶なイメージがあって、声やしゃべり方も一度会ったら忘れられないような魅力があって、自分自身が生きてきた人生とも違うし、雰囲気から醸し出すのは難易度が高いなと思いました」

そんな魅力的なちひろに近づけるために、「声を低くしたり、あまり早口でしゃべらないようにしたり、声色から感じ取れる感情のにじみをある一定のところから外れないようにしたり」ということを意識。「ちひろさんは明るすぎてもいけないし、暗すぎてもいけない」と、今泉力哉監督とバランスを模索しながら作り上げた。

一方で、「人との距離感の保ち方」はちひろに共感したという。

「私もあまり踏み込みすぎず、友達だとしても適度な距離を保っている気がしていて、そうすることによって私生活ではあまり大きな感情の振れ幅がなく、それが心地いいんです。仕事で刺激をたくさんもらっている分、私生活ではなるべく刺激のない穏やかな生活をしたいというのもあるし、適度な距離があったほうが友達的にも楽かもしれないとかいろいろ考えていくと、ちひろさんのような距離感がすごく心地いいなと思いました」

■経験を重ねていく中でたどり着いた“人との適度な距離感”

人と適度な距離感を保つようになったのは20代になってから。経験を重ねていく中でたどり着いたようだ。

「人との出会いもたくさんある中で、うまく距離を見つけないといけない。(撮影期間の)1カ月や3カ月は同じ気持ちで向かうけど、いつまでもそこにとどまっていると次に進めないので、一生懸命頑張って、終わったら『さようなら!』って切り離していかないと自分自身ももたなくなるので」

ちひろの言葉は名言の宝庫で、生きるヒントが詰まっているが、有村は「みんなで食べるご飯もおいしいけど、1人で食べてもおいしいものはおいしい」というセリフがとても印象に残っているという。

「1人は寂しいというネガティブな印象がありますが、全然そんなことなくて、孤独を愛する人は世の中にたくさんいるし、1人でいるほうが楽だと思うなら、それはその人の幸せな道だし、そういう1人でいることへの許容を一つのセリフですごく感じました」

有村自身、孤独は何も悪いことではなく、孤独に生きる幸せもあると考えている。

「自分が大事にしたいものを自分の中で秘密にして楽しんだり、孤独に生きることも幸せなことだし、人間が100%分かり合えることは絶対ないと思っていて、友達や家族でも知らないことはいっぱいある。だから、その距離感が楽しかったり、何を考えているのだろうと想像したり、人と人が向き合うことでいろんなことを学習していき、その根本にあるのは孤独なのかなと思います」

さらに、「何かと戦うときは自分1人。仕事を成し遂げるのも1人だし、孤独との戦いはどの職業にもあって、トップにいればいる人ほどその重荷は大きくなってくる。でもトップにいるからこそ見える景色もあるし、孤独だからこそわかることもあるので、孤独=寂しいということでは全くないと思います」と自身の考えを述べた。