日本テレビでは、系列局とともに番組を作り上げる「共創プロジェクト」を立ち上げた。この第1弾として、福岡放送(FBS)のバラエティ番組『地元検証バラエティ 福岡くん。』(毎週日曜12:35~)のスペシャル版『福岡くん。東京におジャマしますSP』が、FBSと日テレの同時ネットで12日(14:00~ ※FBSは12:35から枠拡大)に放送される。
福岡では日曜昼という時間帯の放送ながら、最高世帯視聴率16.4%(22年2月13日放送、ビデオリサーチ調べ・北部九州地区)という人気番組の『福岡くん。』だが、東京進出に手応えはあったのか。そして、このプロジェクトの狙いとは。日本テレビ編成部の鈴木淳一氏と、『福岡くん。』プロデューサーのFBS羽田野雅裕氏に話を聞いた――。
■各局の制作力向上、人材確保の狙いも
このプロジェクトが立ち上がったのは、中京テレビ制作で全国ネットゴールデン帯に放送されている『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(毎週火曜19:00~)の成功が、きっかけの1つだという。
「やっぱり日本テレビだけの発想だと、番組を作る中でどこかしら似通ってしまうところがあると思うんです。そんな中で、『オモウマい店』という番組がヒットしたこともありましたし、系列局の方々と一緒に番組をやることで、今までと違う発想をお互いに刺激し合いながら、クリエイティブなものを作っていきたいというのが一番の理由です」(鈴木氏、以下同)
日テレはかつて、90年代後半から平日深夜帯に「ZZZ」というゾーンを設け、系列局の制作番組を全国ネットで編成していたことがあるが、この当時と同様に、各局の制作力向上を図る狙いもある。その背景には、地上波に加え配信サービスなどコンテンツの出し口が増える一方で、テレビ業界を志望する人材が減少しているという状況に対し、「みんなで補えるところは補いながらやっていくという目的もあります」と明かした。
■東京でもいつものスタイルを要望
放送に向けては、各局から番組を選ぶのではなく、クリエイターと面談を実施。その中で羽田野氏の印象は、「番組制作に対して、とにかく面白いものを作るということよりも、“どれだけ共感を呼べるか”、“視聴者のほうを向いているか”というところに重きを置いているという話を聞いて、すごくいいなと思ったんです。『福岡くん。』は、下手すれば“俺が面白いと思うものをやって、見てる人がついてくればいい”的なノリに見られがちだと思うのですが、福岡県民の方への寄り添い方をすごく考えながらああいう番組を作ってるのが新鮮だなと思いました」と光るものがあり、第1弾として白羽の矢を立てた。
このため、新たにオリジナル企画を制作するということも考えたが、「せっかく『福岡くん。』というヒット番組があるので、それをそのまま東京でやるのも面白いんじゃないかと」と、今回の『東京におジャマしますSP』を放送することが決定。とは言え、この番組は「福岡県民以外は1ミリも面白くない」と自称しているだけに、不安はなかったのか。
「そう言われると余計気になるじゃないですか(笑)。それに、他の全国ネットの番組でも、各県のローカルな話題を取り上げていますし、共感できない内容ではないと思っていたので、マニアックさで深く刺さる可能性があると考えました」
そこで、FBSの制作側に対しては、いつものスタイルを要望。これを受け、東京での街頭インタビューでも、番組の特徴であるグイグイ攻め込む姿勢を見せている。
このスタイルが確立した理由について、羽田野氏は「テレビを見ていて、たまにインタビューがちょっとウソっぽいなと思っちゃうときがあるんです。もう一歩先のことまで聞いてほしいなという気持ちを、『福岡くん。』では頑張って具現化しています」といい、「今回もいつもの感じでやらせてもらいました」と、ひるむことなく臨んだ。
一方でネタ選びについては、東京で放送されていることを意識。「いくら福岡の番組で福岡の人間が作っているとは言え、関東のお客さんが本当に興味のなさそうなものを放送しても意味がないので、東京の人が見て『こんな独特の変わった文化があるんだね』と楽しんでもらえるようなネタを放送させていただきます」(羽田野氏)と話し、ひと目で技術の高さが分かる西鉄バスの運転手のスゴ技検証や、福岡県民にもほとんど知られていない“鮭を食べない集落”調査といった企画をラインナップした。