NTT西日本の九州支店と福岡県の東峰村が、「まちづくりや住民サービスに関するICT連携協定」を締結しました。NTT西日本のICTをはじめとしたノウハウを活用し、遅れている東峰村のDXを推進していく方針。まずは1年をめどに成果を出したい考えです。

  • 連携協定を結んだ東峰村とNTT西日本九州支店。左が東峰村の眞田秀樹村長、右がNTT西日本の梶原全裕九州支店長

締結の目的は、NTT西日本をはじめとしたNTTグループの技術を活用し、地域の課題解決をデジタルで推進していくこと。「地域経済DX」として地域住民の生活の質の向上や地域経済の活性化、「交通DX」として1人も取り残さない持続可能な地域交通の実現、「健康DX」として住民が健康で生き生きと暮らせるまちづくり、「防災DX」として災害などのリスクを踏まえたまちづくりという、主に4つのテーマで村とNTT西日本が協力していく方針です。

  • 連携協定で取り組むテーマは4つ

■ICT連携協定締結に至った背景

福岡県朝倉郡東峰村は、福岡県中央部東端の県境に位置する、面積約52万平方メートル、山林原野が土地の86%を占める、人口2,000人足らずの小さな村です。公共交通機関は西鉄バス久留米、JR日田彦山線がありますが、2017年7月の九州北部豪雨の影響で鉄道の運転見合わせが続いている状況です。

高齢化や人口減少の課題を抱えている中、通信網としては2007年にADSL、2010年には光ケーブルを全村に敷設してネット環境は構築されています。同年10月にはCATV局の東峰テレビも開局しており、通信環境の整備は進んでいる、というのが東峰村の眞田秀樹村長の認識です。

とはいえ、ここ10年で国の戦略も進展し、デジタル化の波も大きくなったことで、新たな情報戦略が必要、と眞田村長は考えたそうです。2021年に就任した眞田村長は、「高度情報技術を生かしてこそ、すべての活性化の元になる」という信念で、さまざまな取り組みを検討していたといいます。

それでも、「50人程度の村役場の職員の中で、そうした技術もマンパワーもなかなか足りない」という状況だったのですが、NTT西日本の梶原全裕九州支店長へ相談、検討スタート。今回の連携協定の締結に繋がったそうです。

  • 連携協定に調印する眞田村長と梶原九州支店長

■まずは決済のデジタル化を

まずはロードマップを策定してDXの取り組みを進めていく考えで、「今はデジタル化が遅れている東峰村かもしれないが、将来は先進的な取り組みをしている地域と言われるように、早く取り組みたい」と眞田村長は話します。

NTT西日本の梶原九州支店長は、「(事業エリアである)30府県の皆さまがいかに元気になっていただけるか、それをどうお手伝いできるか、それがミッションであり、存在意義」だと強調。東峰村でもそのミッション達成に向けて取り組む意気込みを示しました。

今回の連携協定はあくまでスタートということで、今後どのような取り組みをするか、具体的な話を詰めていく形になります。

具体策として眞田村長が考えているのは、まず地域経済DXとして非接触決済、地域通貨を検討しているそうです。決済がデジタル化することで、特に高齢者の村民に対してスマートフォンが当たり前で便利なことを知ってもらいたいとしています。

すでに村内にはデジタル拠点「テレワークテラス宝珠」が設置されており、「デジタル寺子屋」として住民へのデジタルの浸透を図っているそうです。次のステップとして、「デジタルを使った便利なサービスやアプリケーションの開発、使いこなしの支援など、従来の村の体制では難しかったサポートをNTT西日本の協力を得て実現したいと眞田村長は語ります。

重要な点が「1人も取り残さない」という点で、デジタルによって交通ネットワーク、買い物難民への対応も実現したいと眞田村長。村内の商店も減少しているとのことで、ネット販売を含めたデジタル化でのサポートを考えているそうです。

村にはコンビニエンスストアもなく、やはり要望はあるそうですが、誘致をしたり商店を村が作ったりもできるとしつつ、人材の問題もあるとのことで一概には難しいとしています。眞田村長は、NTTグループの無人店舗ソリューションについても興味を持ったようでした。

非接触決済という点では、まずはプレミアム付き商品券を事業化するにあたって、デジタル化を実現したいと考えているそうです。これをデジタル化することで、村民に対して非接触決済やスマートフォンの利便性を提案していく考えとのこと。店舗側にも、デジタル化への対応を推進していく方針です。

特に高齢者にとってスマートフォンの使いこなしは難しいと考えられていますが、必要な機能を提供して使ってもらうことで、さらに地域交通やロケーション予約のようなサービスを展開して利用を拡大したいと眞田村長は話します。

最終的には高齢者の見守り、防災DXといったテーマにも取り組む計画。2017年の豪雨災害では、固定・携帯の回線がいずれも影響を受けたそうで、防災無線は必須とのことですが、それに加えて通信技術を使った見守りや防災安否システムのようなサービスも実現したいそうです。

現時点では、4つのテーマを掲げて取り組みをしていきますが、梶原九州支店長も「課題はもっと広く、次の課題がまた見えてくるかと思う。そうした場合はお互い話し合って進めていきたい」と話します。

NTT西日本は、同様の地域との連携協定を約60カ所と締結しており、知見の蓄積があります。そうしたノウハウも生かしながら、東峰村の課題解決に向けて取り組んでいきたい考えです。

眞田村長は、4つのテーマ全体では3年である程度の成果を形にしたいとの意向ですが、地域経済DXに関しては1年程度でまずは成果を出したいとしています。