コロナ禍での就職活動が3年目を迎え、オンラインでの就活が定着した感がある。一方で、ミスマッチから早期に転職を考える新入社員も増えているようだ。
そんな状況下、経営・人事課題の解決と事業・戦略の推進を支援するリクルートマネジメントソリューションズが、「2023年新卒採用 大学生の就職活動」に関する調査結果を発表。そこから見えてきたのは、ミスマッチを防ぐ採用コミュニケーションの在り方だった。
コロナ禍における新卒学生の就職活動を調査
新型コロナウイルスの脅威に、政府が緊急事態宣言を発令したのは2020年3月のこと。以来、コロナ禍は社会のあらゆるシーンに影を落としてきたが、学生の就職活動もそのひとつ。
活動の在り方が一新され、3年目を迎えた現在ではオンラインでの活動がすっかり定着した。距離や時間の制約を受けないメリットがある一方で、入社後のミスマッチにつながりやすい弊害も起きているようだ。同社で主任研究員を務める飯塚彩氏によるアンケート結果の発表から紹介していきたい。
「弊社では、2023年卒に向けて就職活動を行った全国の大学4年生と大学院2年生計1,316名に対し、『2023年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査』を実施。調査結果から見えてきたのは、入社後も社員がいきいきと働き、職場に定着・活躍するための採用・就職活動のポイントでした」
就職活動での意識づけが、入社後の働き方に大きな影響を与えるのは言うまでもない。コロナ禍で活動がオンライン中心になるなかで、職場に定着・活躍するためのポイントが変わってくるのも当然のことだろう。
就活生の意識は「説明会はオンライン、最終面接は対面」
調査で明らかになった特徴のひとつは、就職活動のハイブリット化に対する学生意識だ。ここでいうハイブリッド化とは、説明会や面接における対面形式とオンライン形式の組み合わせのこと。飯塚氏が次のように解説した。
「合同説明会や会社説明会では、学生の6割上がオンラインでの実施を希望しているのに対し、インターンシップで64.9%、3次以降から最終の面接では7割の学生が対面での実施を望んでいます。学生は企業で働くイメージをもつための機会や、自分をきちんと知ってもらいたいと思う局面では、対面を望んでいることの表れと言えるでしょう」
筆者もオンラインでの取材にようやく慣れてきたが、やはり対面で得られる情報には敵わない。より多くの情報を得ようと考える学生の意識は好ましい。
学生の意識は『就社』ではなく『就職』へ
飯塚氏の報告で、次に注目したのが「内定承諾のおける最終的な理由」の調査結果だった。この項目でも、学生の意識に変化が起きているようだ。
「内定承諾の最終的な理由は『自分のやりたい仕事(職種)ができる』が15.6%、『希望の勤務地に就ける可能性が高い』(1.6%)で過去最高になった一方で、『社員や社風が魅力的である』『福利厚生や給与など制度や待遇が魅力的である』といった理由は年々減少傾向にあります。これは『就社』では『就職』の意識が高まった結果だと考えられます」
筆者には30年以上経ったいまでも、心に残る採用広告のキャッチコピーがある。大手電機メーカーの「サラリーマンという職種はありません」というコピーだ。
サラリーマンは給与生活者の意味であり、具体的な仕事内容で会社を選ぼうという会社の強いメッセージが感じられた。飯塚氏の考察も、まさにこの方向性を示したものだろう。
コミュニケーションにおける相互理解の大切さ
こうした就職活動における学生の意識の変化は、採用コミュニケーションにおける新たな問題を引き起こしていると飯塚氏が指摘する。
「学生の『就職』意識の高まりに対し、企業側も『ジョブ型採用』の要素を取り入れつつあるものの、多様な経験を通じてキャリアの方向性を探る『メンバーシップ型』の考え方が残っています。表面的なコミュニケーションでは、学生も企業側も判断を誤る恐れがあります」
では、どういった採用コミュニケーションをとるべきなのだろうか。氏が提案するのはフィードバックの重要性だ。
「就職活動時に企業からフィードバックを受けた経験のある学生の割合は約6割で、そのうちの約7割が良い印象を持っています。学生の特徴を踏まえた上で、自社でどのように働くことができるのか、入社してから何が求められるのかを誠実に伝えていくことがミスマッチを防ぐポイントになります」
人と人が接する上で、コミュニケーションが重要であることは論を俟たない。基本は相互理解を深めること。そのために、相手のことを知り、それに応じた情報を提供していくことが非常に重要であることを改めて感じた内容だった。