確定申告のシーズンになると「今年は変更点はないかな?」と気になり始める人も多いはずです。ただでさえ複雑な上に毎年変更などがあるため、苦手意識を持っていても不思議ではありません。

今回は、これまで行っていた人も初めて行う人でも分かりやすいように、2023年(令和4年分)の確定申告の変更点をまとめてお伝えします。

2023年に提出する確定申告書類に変更はあるの?

所得税を適正に支払うことを目的として、前年の所得額を税務署に申告する際に使用する書類が「確定申告書類」です。

確定申告書類には慣れていても、記載内容が煩雑だと感じている人も多いのではないでしょうか。

そんな煩雑な確定申告書類が2023年度(令和4年)分からフォーマットの変更が行われ従来よりも簡素化されます。

書類上の変更点

確定申告書類上の変更点について抑えておくべきポイントを分かりやすく解説します。

変更になった点を簡潔に伝えると「確定申告書Aの廃止」「第一評価に修正申告欄が追加」「収支内訳書が雑所得(業務)の申告に対応」の3つです。

確定申告書Aが廃止

従来の確定申告書類が一本化されたことについて解説します。

◆従来の書式
(1)確定申告書A
会社員等で医療費控除や一定の副業収入がある人、給与以外に年金などの所得がある人が使っていた書式

(2)確定申告書B
個人事業主など事業による収入で生計を立てる人が使っていた書式

従来の方法では、「確定申告書A・B」を、申告者の状況で使い分けるのが一般的でした。

しかし、2023年(令和4年)分からは確定申告書Aが廃止になり、確定申告書Bのフォーマットへ書式が一本化されます。

書式が一本化されることによって、書式の呼び方も「確定申告書」とシンプルなものになります。

確定申告書Aを使用していた人にとっては記載する項目が増えて煩雑化するように見えますが、これまでと申告内容は変わらないので安心してください。

第一表に「修正申告」欄が追加

修正申告とは、本来支払うべき所得税額より実際の納税額が少ない場合に申告することで、従来確定申告書類には次のように記載し申告する必要がありました。

◆従来の書式
(1)第五表
修正前の所得や税額、修正後に増加する税額の記載

(2)第一表
修正後の所得や税額を記載

新しいフォーマットでは、(1)の第五表が廃止され(2)第一表の修正申告欄のみの記載で行えるようになります。

従来は、一度提出した申告内容と同様の内容を記載する部分が多かったこともあり、今回の改正で大きく簡素化される運びとなりました。

収支内訳書が「雑所得(業務)」の申告に対応

2022年度までの分で、確定申告時に収支内訳書の提出が必須となっていたのは、事業所得や不動産所得がある場合と限られていました。

しかし、2023年(令和4年)の変更から一定の「雑所得(業務)の収入」に関しても収支内訳書の提出が必須となります。

内容を分かりやすくするために、雑所得について確認しておきましょう。

◆雑所得とは
(1)公的年金等
(2)業務に係るもの(副業収入など、営利目的で継続した収入)
(3)上記以外

このうち収支内訳書の提出が求められるようになる一定の雑所得とは、(2)についての「前々年度の売上高が1,000万円以上」の場合です。

雑所得は通常、「売上から経費を差し引いた金額」から算出されます。

しかし、今回一定の「雑所得(業務)収入」については、経費を「売上から経費を差し引いた金額」ではなく、「雑所得に係る収入金額」つまり「売上」に対して適用されます。

所得ではなく売上で1,000万円以上ある場合は、収支内訳書が必要になるという点に注意しましょう。

(参照) No.1500 雑所得|国税庁 (nta.go.jp)

税制改正に伴う確定申告の変更点

確定申告書類上の変更に加え、2023年(令和4)分からは税制改正に伴う変更もあるので注意しておきましょう。

今回の変更点では、税額控除に関する変更点が大きなポイントとなっているため、確定申告で節税対策を行っている人にとっては必須の内容となっています。

住宅ローン控除の変更

まず紹介するのが「住宅ローン控除による変更点」についてです。最初に住宅ローン控除がどういったものかを確認しておきましょう。

◆住宅ローン控除とは
住宅ローンを利用して住宅(改修を含む)を購入した人の利息軽減を目的として、居住年分以降の所得税額から一定の控除を受けられること

2023年(令和4)の住宅ローン控除の従来からの変更点は次の通りです。

◆従来からの変更点
(1)対象期限を4年延長して2025年12月31日までに入居した人を対象とする
(2)控除率を1%から0.7%に変更する
(3)所得額の上限を3,000万円から2,000万円までに変更する
(4)新築住宅の控除期間が10年から13年に延長する(中古住宅は10年間の据え置き)

多くの人が気になる点は、控除率の変更による実際の控除額でしょう。 住宅ローンの控除額の求め方は、「住宅ローン控除額=年末時点での住宅ローンの残高×0.7%」となります。

居住用財産の買換え等に関する特例の変更

次に「居住用財産の買換え等に関する特例の変更」について紹介します。 この特例の言葉は難しいため、簡単に解説しますので参考にしてください。

【特例】
(1)現在住んでいるマイホームを売却
(2)(1)の売却費よりも安い価格で新たなマイホームを購入
(3)(1)より(2)が安いため売却益が発生
(4)本来(3)の売却益は課税対象だが、特例により新たにマイホームを売却するまで課税を繰り延べできる

この特例の2023年(令和4年)の変更点は次の通りです。

◆従来からの変更点

(1)2022年12月31までだった適用期間が、2023年12月31日まで延長

(2)新築の場合一定の省エネルギー基準に適合していること

この変更では、マイホーム売却益の課税の繰り延べ対象となる期間が延びたということが大きなポイントになります。

(参照) p0102-0288.pdf (mof.go.jp)

社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除に関する確定申告手続きの変更

最後に税制改正に伴う手続きの変更に伴い、年末調整や確定申告で添付が必須だった書面を「電子データで申告」できるようになったことについて触れていきます。

所得控除や税額控除を適用するためには、一般的にそれを証明する書類(書面)の提出が求められます。

これまで、医療費控除など一部の控除証明書類に関しては「電子データ」での申告が可能でした。

しかし、今回の2023年(令和4年分)からは「社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除に関する書類」も確定申告時に「電子データ」での提出が可能になります。

電子データでの申請が可能となり、確定申告の手間が省けることが期待できるので、ぜひ活用してみてください。 また、対象となる人は控除証明書の発行者から電子データで証明を受けた人に限ります。

2023年の確定申告はいつからいつまで?

2023年度の確定申告の期間は2023年2月16日から2023年3月15日までとなっています。

申告・納税の対象期間は2022年1月1日から2022年12月31日までとなっており、その年の所得税・贈与税の納税期間は2023年3月15日までです。 ※消費税は2023年3月31日まで

確定申告の提出方法は、主に「税務署の窓口で直接提出」「郵送で提出」「e-tax(電子申告)での提出」の3つに分けられます。

必ず期日までに、提出し納税を行うようにしましょう。

まとめ

今回の記事では、2023年(令和4年)度の確定申告の変更点について説明してきました。

今回ご紹介したような申告書式や税制上の変更は多くの人に関わる内容です。このような変更が確定申告では毎年のように行われているので、失敗しないためにもぜひ今回の記事を参考にしてください。

確定申告は慣れていない人にとっては難しいこともあるため、自信がない方は税理士や税務署に相談することをおすすめします。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー

倉知洋平(くらちようへい)
所属:株式会社マネープランナーズ