11月19日に京急・金沢文庫駅から徒歩10分の泥亀公園(神奈川県横浜市金沢区)で「第9回AozoraFactory2022」を開催。地域の企業が自社事業に関する体験型のワークショップを展開する本イベントに、NTT東日本 神奈川支店は子どもたちを対象とした「プログラミング体験ブース」を出展した。今回は「Aozora Factory」の開催背景やNTT東日本のブースを取材した。
ものづくりの街ならではのワークショップ
Aozora Factoryは約1,300社の事業所が集積する全国でも有数の横浜市金沢臨海部産業団地「LINKAI横浜金沢」の魅力を伝えるべく、金沢産業団地企業が中心となって開催するイベント。製造業をはじめ、さまざまなものづくり系の企業が多く集まる地域ならではの体験型ワークショップを屋外で行う。
横浜市立大学芦澤ゼミと横浜シーサイドフォーラム、金沢産業連絡協議会、金沢区役所による2016年3月の「PIAフェスタ2016企画会議」を契機に、同年10月に第1回目が開催された。9回目の開催となるAozoraFactory2022には、横浜市金沢区にゆかりのある19社がブースを出展。約1,200人が来場した。
「来場者は厳しい入場制限をかけた昨年度の3倍ほど。コロナ禍では体験型を減らし、体験キットを配布して自宅に持ち帰ってもらうかたちで開催していましたが、今年はコロナが落ち着いた状況で企画を進められ、3年ぶりに従来の規模で体験型ワークショップを実施することができました」とは、Aozora Factory 代表理事の本多竜太氏。
横浜市金沢産業振興センターの産業振興祭「PIAフェスタ」という金沢区の地域のお祭りの集客に携わったことが、AozoraFactoryの立ち上げにつながっているという。
「例えば金沢区には"山田の中華鍋"としてプロの料理人などに有名な山田工業所さんの中華鍋がありますが、実際に鉄を叩いて鉄を締めるといった体験ができるワークショップを実施したこともあります。ものづくりを体感してもらい、その魅力を伝えて興味を持ってもらえる人を増やしたいというのが基本的なコンセプトです」(本多氏)
近年は企業だけでなく金沢区内でさまざまな地域活動を展開する団体なども出展。産学官が協働して実施されていることも特徴で、本イベントには金沢区に立地する関東学院大学と横浜市立大学の学生がボランティアスタッフとして参加する。
関東学院大理工学部准教授の友野和哲氏は「5年前に関東学院大に赴任したんですが、私の場合は地域の企業さんと学生のクロスミーティングの場で本多さんと知り合ったことがきっかけです。素敵な地場企業がたくさんあることを知り、学生を誘って参加するようになりました」という。
「大学と企業の関係は学生にとっても大切なこと。実際に身近な製品のスタートとゴールはよく見ているんですけど、テレビなどで見て知識としては知っていたとしても、その間の工程を実際にリアルなかたちで体験できる機会って、実は学生も含めて全然ないんですよね。私の専門は化学ですが、例えば中華鍋ひとつとってもそうですし、印刷会社の雰囲気やニオイを感じたりすることは貴重な体験だと思います」(友野氏)
関東学院大学は「色彩ラボで化学変化を楽しもう」をテーマに、人工イクラやメッキに関する実験に関するワークショップを出展。大人も含めて来場者の生の反応に接する場は、日頃研究に専念する学生たちにも刺激的な経験のようだ。
「インプットするばかりでアウトプットする経験が普段あまりない学生にとっては貴重な機会なのかなと。各ブースに学生を振り分けているんですが、学生が近隣の各企業さんや金沢区の2大学の学生同士で直接交流できるので、『また参加したい』といった学生の声をよく聞きます」(友野氏)
地元大学の学生にとっても魅力的で貴重なイベント
本イベントでNTT東日本 神奈川支店は、小学生以下の子どもを対象にパソコンを使ったプログラミングで「Sota」の動きや会話を操作する「Sota(ロボット)を活用したプログラミング体験」を実施した。
2019年開催の「第6回Aozora Factory」から参加してきたが(イベント自体は台風の影響で中止)、ブースの出展は今回が初めてとなる。
「ロポットやパソコンを見て『触ってみたい!』とブースに駆け寄ってくれる子もいて。実際に自分のプログラミング通りに動くSotaの姿をみて目を輝かせて感激してくれるので嬉しいですね」(NTT東日本 神奈川支店担当者)
Sotaはコミュニケーションロボット向けのクラウド型ロボットプラットフォームサービスや付加アプリケーションと合わせて、学校教育はじめさまざまなプログラミング教室などでも広く活用されているプロダクトだ。
「プログラミングの内容としては小学校低学年と高学年向けの2種類ですが、Sota自体はもっと小さい子でも楽しめるコミュニーケーションロボットで、介護レクの現場などでも活用されています。2020年・2021年のAozora Factoryでは各ブースの案内やコロナ対策に関するアナウンスを行う"案内係"としてSotaを本イベントで活用してきました」(NTT東日本 神奈川支店担当者)
ブースにはSotaで撮影した写真を印刷するためのプリンタも用意。同ブースの隣に出展した工具・資材の販売を行うヨコハマ機工とワークショップコラボも行った。自作したフォトフォルダーにSotaで撮影した写真を入れて、イベントの思い出として持ち帰れる仕掛けだ。
横浜市金沢区には現在もNTT東日本の局舎が設置されているが、昔は同社の研修センターが置かれていたゆかりがあり、次世代の子どもたちや学生との交流を通じて「ICTを活用した人材育成に寄与したい」といった思いもあるという。
NTT東日本のブースにはボランティアスタッフとして受付や列整理、プログラミングの対応などにあたる計4名の学生が参加していた。
自動車やロボットなど機械全般の領域に関心があるという関東学院大学 堀田智哉研究室3年生の榎氏は、「開場前の打ち合わせでSotaでのプログラミングについて教えてもらいました。コロナ禍での入学で学園祭なども全然できていなかったですし、こうして人がリアルで集まって、顔を合わせて作業すること自体がけっこう久しぶりで新鮮な感覚です」とコメント。
街づくりや都市開発を学ぶ横浜市立大学 中西正彦ゼミ2年の深作氏は次のように語ってくれた。
「地域のイベントと聞いて今回初めて参加しましたが、こんなにたくさんの来場者がいることに感激しました。地元は福島なので自分が進学するまでよく知らない地域でしたが、いろんな金沢区の方々と関わるなかで、この地域のことをより身近に感じられるようになった気がします。いろんな企業が出展していて、金沢区という地域の力を感じましたし、金沢区は地域を盛り上げるイベントや活動がたくさんあるので、そうした取り組みをより多くの人に知ってもらいたいです」
LINKAI横浜金沢の魅力発信と地域コミュニティの創出をテーマとするAozora Factory。本多氏は「現在は人材不足の企業が多いので、今後はリクルートも含めて雇用を生み出していけるような取り組みを進めていきたいですね。具体的なことはまだこれからですが、そのために今のようなかたちとは、また違った施策も含めて検討していきたいと思っています」とも語っていた。