大学入学直後からコロナ禍で課外活動ができず、就活で話すエピソードが無いと悩んでいませんか? 「就活のエピソード=課外活動」という認識を持っている学生も多いのではないでしょうか。しかし、皆さんの「授業への取り組み方」から十分にアピールすることができます。
この記事では、先輩は教えてくれない、コロナ世代の就活を、就活の現状について、採用コンサルタントとして多くの企業を担当され、この度『あたらしい「自己分析」の教科書』(日本実業出版社)を出版された安藤健さんに、コロナ禍の就職活動について執筆いただきました。
企業は就活で学生の学業に注目し始めている
就活の「ガクチカ」や「自己PR」でのエピソードといえば、アルバイトや部活・サークルで頑張った経験。そんなイメージを抱いている就活生が多いと思います。
しかし、近年、企業はこういった学生の課外活動だけでなく、学業での取り組みにも注目し始めています。
これまでの就活における面接といえば、たしかに課外活動がメインで、学業に関してはゼミでの経験が聞かれる程度でした。
しかし、近年の大学環境が一昔前とは大きく変わっていること、そしてコロナ禍で学生の課外活動が大きく制限され、学業にかける時間が相対的に増えたことから、企業は学生の資質を学業からも十分確認できると認識し始めているのです。
大学環境の変化でいえば、2015年頃まで、大学ではほとんど授業に出ずにアルバイトやサークルなどの課外活動ばかりしていても、テストさえ受ければ単位が取得できる状況でした。
一方で現在の大学では、文科省による大学指導方針の転換いわゆる「シラバスの厳格化」により、成績評価をより厳格に行うことが求められています。これを受け、今の大学生は、単位を取るためにきちんと授業に出ています。
このような、学業には否が応でもある程度きちんと向き合わないといけない、という状況においては、例えば、
・どうせ授業に時間を使うならば、将来役立ちそうなIT科目を多めに採ろう
・どうせ授業の出席が必須ならば、授業中に集中して全部理解してしまうのが一番効率的だ
など、学業への向き合い方にそれぞれの個性が表れるようになってくるのは自然です。それぞれの個性は、すなわち仕事に活かせる資質(能力、性格、価値観)の源です。この状況を、課外活動の方が制限されたコロナ禍がさらに後押しして、企業は今、学業から学生の資質を確認しようとしているのです。
学業から見える資質=「ハイパフォーマー」になるための資質
また、本来的には、課外活動より学業での取り組みから見える資質の方が仕事に直結します。なぜなら、仕事は自分のやりたいことだけではないからです。義務的に発生するもの、やらなければならないものも当然あります。
特に新人のうちは、先輩社員が行っているプロジェクトの請求書作成や、会議で使う資料の準備など、補助的な業務も多いでしょう。
しかし、課外活動の多くは、そもそも「やりたくてやっている行動」です。やりたいことだから頑張れるのは、考えてみれば当たり前のことともいえます。
企業は採用活動で、入社後できるだけ活躍してくれる「ハイパフォーマー」のポテンシャルを持った人材を採りたいと考えています。
実は、このハイパフォーマーに共通する資質は、与えられた課題や義務に対して自分なりの目的や意味づけをして取り組める力なのです。
この力が学生にあるか否かを人事や面接官は、採用面接の中で確認したいと思っています。学生がやらなければならない状況や避けられない環境に置かれたときに、その状況とどう向き合い、どう行動したのか、という一連の流れについてです。
これを大学生の立場で考えてみると、学生にとっての義務、やらなければならないことは課外活動よりも、学業での取り組みの方が多いでしょう。
そのため、今後は課外活動だけでなく、皆さんが大学で行ってきた学業での取り組み(以降これを「履修行動」と呼びます)を通して、自分の資質をアピールする必要があるのです。
現状、履修行動をどうアピールしたら良いかわからないのが学生の本音
しかし、現状では、履修行動を通して、自分の資質を具体的にどうアピールしたらよいか、いまいち分からず、面接での自己アピールで履修行動について話す学生は非常に少ないのが実態です。
『日経ビジネス』(日経BP)が2023年卒生1,000人にとったアンケートでは、就活の自己PRで話すのはアルバイトやクラブ・サークル経験が圧倒的に多く(60%弱)、日常的な授業での考えや行動は、「インパクトがあるエピソードがないから」という理由で、10数%しか挙げられていませんでした。
つまり、学生は、現状、履修行動によって自分のことを表現できると思っていない、ということです。
皆さんも、就活の面接で話すエピソードにおいて、学業での取り組みは地味でインパクトに欠けると考えるかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。履修行動からも十分、その人の資質や自分らしさを表すことができるのです。
続々と大手企業が面接で履修行動を確認し始めている
現在、実際に大手企業を中心として企業側は面接で履修行動から学生の資質を確認しはじめています。
例えば、ソフトバンクは、履修行動を含め学生が注力してきた取り組みを理解するために、面接官のトレーニングを社員向けに実施しています。
日立製作所も同様に、学業への取り組みや研究活動の進め方など、日常的な活動からでも、学生の強みや資質を確認できるよう社員向けに面接官研修を実施しています。他にも、多くの企業が選考段階で学生の履修履歴を収集しており、応募学生が学業における考えや行動を説明しやすくなる環境を整えているのです。
このトレンドは、「コロナ世代」である2024年卒学生に限ったことではありません。今後こうした流れを経て、企業が履修行動から十分に学生の資質が確認できると強く認識すれば、さらに面接で履修行動に焦点が当てられていくでしょう。
では、具体的に学業での取り組み(履修行動)からどのように自分の資質を見つけ出し、自己アピールに活かせるのかについては、次回以降詳しくご紹介していきたいと思います。
まずは、採用担当者の本音として、面接では"やらなければならない状況や避けられない環境でどのように行動するのか"について特に見たいということ。そして、それは実は課外活動よりも履修行動からの方が見えやすい、ということを学生の皆さんにも知っていただければと思います。
著者プロフィール:安藤健(あんどう・けん)
株式会社人材研究所シニアコンサルタント。人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」代表。大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務、企業の面接官向けトレーニング、数多くの組織人事コンサルティングに従事。採用時に使用する「適性検査」の開発にも携わる。