「帰省って、どういう意味?」 「帰省ってどれくらいの距離から?」
帰省という言葉について、このように感じたことがある人もいるかもしれません。年末年始やお盆、長期休みになると「帰省ラッシュ」など見かける機会が増える言葉です。
日常会話で使われることもあるので、読み方や意味、「里帰り」「帰郷」などよく似た言葉との違いについても知っておくと表現の幅が広がります。
この記事では、「帰省」の読み方や意味、類語表現について解説しています。是非参考にしてみてください。
帰省とは? 意味や由来、読み方を解説
帰省の意味や由来、読み方についてご紹介します。由来や読み方を理解すると、普段の会話の中でも正しく使えるようになるでしょう。
帰省の意味・読み方
帰省は「きしょう」ではなく「きせい」と読みます。意味は「郷里に帰ること」で、特に地元を離れて1人暮らしをしている人が行事や長期休みのタイミングで、一時的に地元に戻ることをいいます。
帰省の読み方が「きせい」なのは何故?
帰省は「きせい」と読みますが、「省」は「文部科学省」「省略」などに使われるので、つい「きしょう」と読んでしまう人もいるかもしれません。
「省」は「省みる(かえりみる)」の意味があり、そのように読むこともありますが、行政の名称や「省略」という言葉に「省みる」という意味は含まれていないようです。
「省」の「省みる」という意味を含んでいる言葉に「反省」がありますが、こちらも「帰省」と同じく「せい」と読みます。このため、「省みる」を意味する言葉のときは「省」を「せい」と読ませるのではないか、とも考えられています。
帰省の由来
帰省は中国の漢詩に由来するといわれており、本来の意味は「祖父母をかえりみること」です。帰省というと地元の両親や友達に会うことを楽しみにしている人も多いでしょうが、それだけでは本来の帰省とは言えないのかもしれません。
帰省の使い方と例文
帰省の使い方と例文をまとめました。帰省は名詞としても動詞としても使うことができるので、例文を通じて両方とも使いこなせるように理解しましょう。
帰省の名詞としての使い方・例文
帰省を名詞として使うときは、時間を表す単語と組み合わせて使うことが多い傾向にあります。たとえば「帰省中」「帰省の折」などです。下記のような文章で使うことができます。
例)
・〇〇は帰省中のため、今週いっぱい不在です。
・帰省の際には大変お世話になりました。まだ残暑が続きますので、ご自愛ください
帰省の動詞としての使い方・例文
帰省を動詞として使うときは、シンプルに「する」をつけて「帰省する」という使い方をします。活用形は「する」と同じです。
文章に入れて使うときは、下記のような使い方ができます。
例)
・毎年、年末年始は実家に帰省する
・帰省すれば実家の犬に会えるので楽しみ
帰省が使われるようになったのは明治時代
帰省の語源は中国の漢詩のようですが、日本で帰省という言葉が根付いたのは明治時代の頃といわれています。
江戸時代でも、「藪(やぶ)入り」といわれるお正月とお盆に奉公人が自宅に帰れる休暇がありました。その日1日だけ自宅に帰る場合は「帰省」ではなく「宿(やど)下がり・宿入り」といわれていたようです。
国内の移動が困難で休みも十分にとれなかった江戸時代では、年に1~2回の帰省は祖父母をかえりみる貴重な機会だったのでしょう。しかし、移動手段や生活様式が多種多様に発展した現代では、本来のように1年に1~2回の祖父母をかえりみる休暇、といった意味合いはなくなってきています。
「帰省」という言葉は、そうした歴史がありながら、それに代わる適切な言葉が生まれていないようです。
帰省を使うときの注意点
帰省という言葉を使うときの注意点についてまとめました。日常で「帰省」を使うときに、誤った使い方をしてしまうことのないようにしておきましょう。
帰省する距離に定義はある?
帰省という言葉を使うのに、帰省する距離の基準があるかというと、特に定義されていません。
現代では地方から都会に出てきた人もいれば、都内近郊に実家がある人もいて、帰省するといってもその距離には個人差があります。距離の長さにかかわらず、実家に帰って祖父母のようすを知ること全般を帰省と呼んで差し支えないでしょう。
単身赴任先から自宅に帰るときも「帰省」?
単身赴任先で「帰省先」を問われた際、「自宅」と記載した例があったそうです。
確かに単身赴任中、休暇をもらって帰る先は自宅かもしれませんが、厳密には「帰省」の意味とは異なるでしょう。
「帰省本能」という言葉はある?
時折、「帰省本能」という言葉を使う人がいるようですが、これは誤りです。動物が自力で自分の巣に帰る習性の「帰巣本能」の誤りなので、うっかり使ってしまわないように注意しましょう。
帰省の類語・反対語・英語表現
帰省の類語表現や反対語、英語表現をまとめました。類語や反対語、英語表現の中に、現代の帰省スタイルにふさわしい表現もあるかもしれません。
帰省の類語
帰省の類語として、「帰郷」「帰宅」「里帰り」が挙げられます。それぞれの意味は下記のとおりです。
- 帰郷: 故郷に帰ること
- 帰宅: 自分の家に帰ること
- 里帰り: 新婦が実家に帰ること、一時的に故郷に帰ること
近年では一時的に故郷に帰る意味で「里帰り」を使うこともあるようですが、本来は「新婦が実家に帰ること」を意味するので、人によっては違和感を感じることもあるようです。
帰省は祖父母をかえりみるという意味があるものの、現実には祖父母が他界していて会えない家庭や、実家が引っ越していて帰省先が変わった家庭などもあり、「里帰り」と同様本来の帰省の意味とは異なっている場合もあります。
上記の類語の中では、「帰郷」「帰宅」が現代の多種多様な帰省スタイル全般をカバーできる表現といえるかもしれません。
帰省の反対語
帰省を終えて家に戻ってきた状態を端的に表す反対語があればいいのですが、帰省の反対語は特に定義されていません。
帰省ラッシュの反対語として「Uターンラッシュ」という言葉はありますが、帰省を終えた後に「Uターンした」と表現することはないでしょう。帰省を終えて家に帰ってきたときは、「帰省先から帰ってきた」「帰省してきた」といった表現に留めておくのがいいかもしれません。
帰省の英語表現
帰省は直訳すると「homecoming」となります。文章にするときは、下記のような表現が一般的です。
例)
・I returned home.(私は帰省しました)
・I will go back home.(私は実家に帰省します)
・I went back to my hometown of Chiba.(私は千葉に帰省しました)
2022年の帰省事情
新型コロナウイルス感染症が爆発的に広がったことで、帰省事情が大きく変わった人も多いでしょう。特に都内から地方への帰省については行政からも指示があり、神経質にならざるを得ませんでした。
多少は落ち着いてきた2022年、帰省事情はどのように変化したのでしょうか。
帰省ラッシュを避けるには
新型コロナウイルス感染症が広がる前から、帰省する人が集中して交通網が混雑する「帰省ラッシュ」は人々の関心を集めていました。特に電車や新幹線で帰る人は、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、本数が制限され、人の混雑を避ける必要があります。
帰省ラッシュが生まれる原因は、多くの人が同時期に移動することにあります。感染を防ぐために帰省ラッシュを避けるには、可能であれば時期をずらして帰省するようにするといいでしょう。
実際、企業によっては夏季休暇をとれる時期に余裕を持たせ、空いている時期を選んで帰省できるよう配慮してくれるところもあります。
帰省は気が重いという人はオンライン帰省
新型コロナウイルス感染症が拡大して帰省が制限されたことは、悪いことばかりではありません。義実家に帰省するのは気が重いと感じていたため、帰省せずに済んで安心しているという声も出ています。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、オンラインでのコミュニケーションが活発になりました。2022年現在でも感染には引き続き注意が必要なため、帰省は気が重いという人はオンライン帰省などを積極的に利用しているようです。
コロナ禍の帰省は検査を受けてから
依然として新型コロナウイルス感染症への対策は必要です。不要な被害を広めないため、地方に帰省する場合は念のため検査を受けてから帰省するといいでしょう。
帰省は祖父母をかえりみること
帰省の意味や使い方についてまとめました。帰省の本来の意味は祖父母をかえりみることでしたが、生活様式が多岐にわたる現代では地元に帰ることを帰省と呼んでいます。
新型コロナウイルス感染症の影響もあって満足に帰省できない事情もありますが、今より実家との距離があった江戸時代から続いている習慣です。帰省時期をずらしたりオンライン帰省を利用したりして、家族のつながりを大切にできるといいですね。