ダイキン工業は、全国の20歳以上の男女1,000人を対象に、「第28回 現代人の空気感調査」を実施した。
2022年は値上げラッシュと節電の1年になった。世界的なエネルギー価格の高騰を受け、日本では電気料金をはじめ様々なモノの値上げが続いた。
過去2番目の暑さ(日本で統計を取り始めた1989年以降)と、記録的猛暑となった2022年夏には7年ぶりの節電要請が出され、節電を意識しながらも、熱中症対策としてはエアコンが欠かせない日々を過ごすこととなった。その後も値上げの波は収まることなく、12月からは再び節電要請期間が始まる。
そこで28回目となる今回の空気感調査は「電気料金の値上げと節電要請に関する空気感調査」として、2022年11月2日~11月4日、20歳以上の男女/全国1,000名を対象にインターネット調査により実施。調査委託先はマクロミルだった。
2022年は身の回りの多くのモノで値上げが続いている。そこで、「値上げラッシュが続く中、あなたが値上げを実感しているものは何ですか」と聞いたところ、最も多くなったのは「食料品」(86.0%)で、次に「電気料金」(72.6%)、「日用品・雑貨」(62.9%)と続いた。
食料品のように毎日の買い物を通じて値上げを実感する機会がないにも関わらず、多くの人が値上げを実感している電気代。
「今年の夏、あなたのご自宅の電気料金は例年と比べてどうでしたか」と質問したところ、7割を超える人(73.5%)が実際に「高くなった」と回答。中には5割以上高くなったという人もおり、電気代の高騰が家計に与える影響は大きいといえそうだ。
電気代が値上がりし、節電要請も出された今年の夏、人々はどのくらいの節電ができていたのだろうか。「あなたご自身が行った節電の取り組みに点数をつけるとしたら100点満点で何点ですか」と尋ねたところ、全体平均で53.0点となり、低い自己評価となった。
また、全体として女性のほうが男性より節電に取り組んでいる様子も見えた(女性55.5点、男性50.5点)。女性が家計を管理している家庭が多いというデータもあり、毎月の電気代をチェックする機会が多いことが結果に表れているのかもしれない。
同時に、50代や60代以上の世代のほうが、節電の自己評価が高い実態も浮き彫りになっている。一般的に年齢が上がるにつれて外出の機会も減る傾向にあるが、在宅時間の増加や長年家計をやりくりしてきた結果として、より積極的に節電に取り組んでいるのかもしれない。
夏の節電の自己評価が低いことに対し、「あなたの節電の取り組みが100点ではないのはなぜですか」と聞いたところ、最も多かったのは「節電よりも便利さを優先して電気を使ってしまうから」だった。
節電の必要性は理解しながらも、つい電気を使ってしまうというのは、とても正直な回答といえそうだ。
一方で、「節電をあまり意識しておらず、つい忘れてしまうから」「節電は手間がかかる/面倒なため」という人は少なく、ある程度の節電を意識しつつ、「無理のない範囲で」取り組みたいと考えている人が多いというのが実態なのかもしれない。
節電の取り組みが100点ではない理由として、男女差が顕著に出たのが「家族や同居人の節電への協力が不十分だから」で、女性全体では約2割(18.5%)がそう感じており、50歳以上の女性で見ると4人に1人(約25%)に達する。
回答者の中に一人暮らしの人も一定数含まれることを考慮すると、家族と暮らしている女性が同居人に抱いている不満はかなり大きいのかもしれない。
節電に対する自己評価も女性のほうが高いという結果になったが、継続的で無理のない節電の実現には、家族間の節電に対する意識の差を解消し、家庭全体での取り組みを進めることが必要といえそうだ。
夏の節電に対する自己評価点は53.0点(図3)だったが、節電の余地を感じている人は多いのかもしれない。「今年の冬、あなたはご自身の節電の取り組みで何点を目指しますか」と聞いたところ、夏のリベンジをしたいという思いがあるのか、目標は65.7点(全体平均)で夏を2割以上、上回る結果となった。
男女別では男性が64.0点、女性が67.3点となり、女性がわずかに上回っている。世代別では年代が高くなるほど高い目標点を掲げていることがわかる。
東日本大震災による電力危機が発生した2011年夏に、節電の自己採点を尋ねたところ、平均点は68.8点に。今回の冬の節電目標は震災時に迫る高い点数であり、節電に対する関心がかなり高まっていることをうかがわせる結果となった。
冬の節電要請期間(2022年12月〜2023年3月末)を前に、「あなたのご自宅にある家電製品のうち、この冬節電したいと思うものは何ですか」と聞いたところ、最も多かったのは「エアコン」(62.6%)で、次いで多かった「照明」(45.3%)に17ポイント以上の大差をつけている。やはり、冬の消費電力が大きいエアコンを節電したいと考えている人は多いようだ。
実際に、この夏と冬のエアコンの使い方について聞いてみると、「冬のほうが夏よりも節電を意識して使用したい」という傾向が強く出る結果になった。
一般的に、エアコンは夏の冷房運転よりも冬の暖房運転時のほうが、消費電力が大きくなる。電気代の値上がりが続く中、冬の節電で十分な成果を出すためにはエアコンの節電が重要であり、この回答結果は良い傾向といえる。無理のない範囲で節電をするために、エアコンの上手な使い方も理解しながら、この冬を賢く乗り切っていきたいものだ。
この冬節電したい家電製品の筆頭に挙げられたエアコンだが、その必要性について「あなたはエアコンなどの空調機器(空気清浄機、換気機器含む)は安全・安心・快適な暮らしに欠かせない生活インフラだと思いますか」と聞いたところ、「そう思う」(「とてもそう思う」と「どちらかというとそう思う」の計)が約9割(89.7%)に達した。
エアコンはあったら便利な生活家電という概念を超えて、無いと困る「生活インフラ」として認識されていることがわかる。
生活インフラとなっているエアコンだが、その消費電力の大きさ等から環境影響を考えながら使用しないといけないことも事実。
「あなたは今後も持続可能な形でエアコンを使用していくにはどのような工夫が必要だと思いますか」と聞いたところ、運転設定やお手入れなど「省エネにつながるエアコンの使い方の実践」(45.0%)と「省エネ性能の高いエアコンの使用」(43.6%)に回答が集中した。
まずは、今あるエアコンを上手に使い、場合によっては省エネ性能の高い製品への買い替えも選択肢となっているようだ。
将来、2022年の値上げラッシュを振り返った時に、エアコンは私たちが快適な生活を送るうえで必要なインフラとなっており、(我慢して使わないのではなく)上手に使うことで節電につなげるものだと改めて認識するきっかけになった1年だったと振り返る日がくるのかもしれない。
そして、エアコンが生活インフラと捉えられるようになった背景には、私たちの空気に対する意識の変化もありそうだ。
以下、20年前の調査結果と合わせて、空気に対する意識の変化をひも解いている。
「あなたが空気を特に意識するのはどんな季節ですか」という質問に対して、20年前(2002年)も現在も、「花粉のシーズン(2月)」が最も多くなっている。
一方で、20年前は他に「若葉の頃(4月)」や「新緑の頃(5月)」のタイミングが選ばれていたが、現在は少なくなっている。反対に今も続くコロナ禍を踏まえて設けた新たな選択肢「1年中ずっと」が花粉のシーズンと同程度選ばれている。
花粉シーズンや新緑が心地よい季節に空気を意識する時代から、「1年中ずっと」空気を意識する時代になりつつあるともいえそうだ。
「あなたが空気について気になることは何ですか」という質問に対して、20年前(2002年)は大気汚染や排気ガスなどが大きな社会問題となり、人々が屋外の空気汚染を気にしていた。
一方で現在(2022年)は、屋外の空気がキレイになってきたことや、コロナ禍(3密、テレワークによる自宅時間増加など)の影響もあり、室内の空気質(ウイルス、細菌、アレルゲン、ニオイなど)を気にするようになっていることがわかる。
実際に、「あなたは室内の空気と屋外の空気のどちらがより心配ですか」という質問に対して、20年前(2002年)は「室内の空気の方が心配」が約4割(42.9%)だったが、現在(2022年)は半数以上(52.9%)に達している。
「あなたが空気を特に意識するのはどんな場所ですか」という質問には、良い空気、悪い空気の両面から、「空気を意識する」場所について回答できる。
20年前(2002年)は「自宅」(26.3%)と並び、キレイな空気を吸える場所としての「山・高原・林間」(25.5%)が多く選ばれていたが、現在(2022年)は全体的に学校や病院など「室内空間」の回答比率が上昇し、特に「自宅」に回答が集中(43.1%)する結果となった。
一方、山や海、公園など豊かな自然を連想させる場所は減少する傾向が出ている。このことから、20年前は空気と言えば“キレイな空気"が多くの人に意識されていたが、今は安全・安心ではない室内の“汚れた空気"を心配しており、空気がポジティブなものからネガティブなものへと変化してきているのかもしれない。
また、回答が「自宅」に集中した理由として考えられるのは、ステイホームやテレワークにより在宅時間が増えたことで、自宅の空気環境に安全・安心・快適性を求める気持ちが影響しているのではなだろうか。
この20年間で空気に関する意識は、屋外から室内、自宅へと移り変わりつつあるが、未来の空気環境についてはどう思っているのだろうか。
「100年後の未来の空気環境は今と比べてどうなっていると思いますか」と聞いたところ、「悪くなっている」が約6割(63.0%)で、「良くなっている」(15.0%)、「変わらない」(22.0%)を大きく上回った。
この結果は、未来を悲観的に捉えているというよりは、SDGs等への注目が集まる中、気候変動等の環境問題に今きちんと取り組む必要性があるという現状認識を示したもので、「このままではいけない」という強い危機感の裏返しと考えたほうがよさそうだ。
空気環境が「悪くなっている」と思う人は半数以上が「地球温暖化などの気候変動…」(61.1%)や「都市開発や人口密集…」(57.3%)を挙げ、環境面の悪化が気になっている様子がうかがえる。
一方、空気環境が「良くなっている」と思う人は半数以上が「自動車や工場の排ガス対策により…」(59.3 %)や「空気の浄化技術が発達し…」(55.3%)を挙げ、空気や空調に関する技術の発展に期待を寄せていることがわかる。
空気の影響を考える前提として、そもそも空気・空調の価値についてどのように認識しているのだろうか。
「あなたは、空気・空調には単に空間を冷やす/暖めるだけではない人の暮らしや社会に貢献できる価値があると思いますか」と聞いたところ、約8割(79.6%)の人が「ある」(「あると思う」、「どちらかというとあると思う」の合計)と回答している。
暮らしや社会に貢献する空気・空調の価値とはどのようなものなのか。「あなたは、空気・空調に空間を冷やす/暖めるだけではないどのような価値を期待したいですか」と聞いたところ、最も多かったのは「空気を介した感染症や病気のリスクから守ってくれること」(66.4%)だった。
次いで「有害なアレルギー物質(花粉、ダニ、カビ、ハウスダストなど)から守ってくれること」(58.8%)、「暮らしを健康で快適なものにしてくれること」(47.8%)が続く。
現在直面している地球温暖化やコロナ禍といった空気が関わる課題は、私たちが空気・空調と健康の関係について改めて考えるきっかけになったといえるのかもしれない。
「あなたは『空気で答えを出す会社』を掲げる空調メーカーに今後どのような『答え』(空気・空調)を期待しますか」という質問に対してはさまざまな回答が寄せられた。
身近な「吸うだけで健康に良い空気」から、地域・地球規模の巨大空調、世界情勢を反映した「争いごとが起こらない空気」まで、空気・空調への期待は多岐に渡っている。