ポルトガルで最も美しい町のひとつが、ドウロ川河口に広がる第2の都市・ポルト。「ポルトガル」の国名の由来になった町で、『魔女の宅急便』のモデルになったともいわれる色彩豊かな風景が広がっています。

カラフルな建物が段々畑のように連なる坂の多い旧市街は、まるごと世界遺産。ただ歩いているだけで、心打たれる景色の数々に魅了されます。

そんなポルトには「ハリー・ポッターの世界を思わせる」と話題沸騰の「世界で最も美しい書店」を筆頭に、「世界で最も美しい○○」が複数存在します。ポルトにある、3つの「世界で最も美しい○○」をめぐってみました。

ハリポタの世界に影響を与えた!?レロ書店

  • レロ書店1階フロア

「世界で最も美しい書店」ともいわれているのが、1869年創業の「レロ書店(リヴラリア・レロ・イ・イルマオン)」。イギリスのガーディアン紙が「世界で最も美しい書店10選」のひとつに選んだことにより、一躍有名になりました。

  • レロ書店2階の装飾

『ハリー・ポッター』の世界を思わせる重厚かつ幻想的な空間で、ハリポタファンはもちろん、その空間を一目見たいという世界中の旅行者を惹きつけてやみません。

実は『ハリー・ポッター』原作者の J・K・ローリングは、一時期英語教師としてポルトに住んでいたことがあり、レロ書店にもよく通っていたとか。『ハリー・ポッター』に登場する「フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店」がレロ書店にそっくりという声もあり、レロ書店の空間が『ハリー・ポッター』の世界観に影響を与えたのではないかともいわれているのです。

  • レロ書店外観

現在の店舗は1906年に建てられたもので、アールヌーヴォーなど複数の様式が混ざり合ったユニークな外観。中に足を踏み入れてみると、木をふんだんに使った重厚感あふれる内装に息を呑みます。天井や壁面にびっしりと彫刻が施された空間は、とても本屋さんとは思えませんよね。

  • 「天国の階段」と呼ばれるらせん階段

なかでも圧巻なのが、「天国の階段」の異名をとる木製のらせん階段。この優美な曲線と見事な装飾を見れば、「魔法界への入口だよ」といわれても信じてしまうのではないでしょうか。

  • レロ書店2階フロア

この階段をのぼって2階へと至れば、淡いピンク色の天井とカラフルなステンドグラスが間近に。ステンドグラスには、ラテン語で「Decus in Labore(奉納は労働なり)」というレロ書店のモットーが書かれています。

  • レロ書店2階から1階を見下ろす

店内は大部分が吹き抜けになっているので、2階の通路や階段の上から、1階の店内の様子が見渡せます。天井の装飾に壁面の装飾、ランプに至るまで、見れば見るほど優美な装飾に惚れ惚れしてしまうことでしょう。

  • レロ書店1階の書棚

今ではポルトでもトップクラスの人気観光スポットとなっているレロ書店ですが、現役の書店なので当然本の購入も可能。入場には5ユーロ(約723円)を払ってバウチャーを購入する必要がありますが、本を購入するときにバウチャーが使えるため、入場料は実質無料となります。

  • レロ書店オリジナルグッズ

本だけでなく、ノートやトートバッグといったレロ書店のオリジナルグッズも販売しているので、ぜひチェックしてみては。

なお、レロ書店訪問にあたっては、事前にオンラインでバウチャーを購入しておくのがおすすめ。開店前から観光客が長蛇の列を作るため、朝イチよりも夕方以降のほうがスムーズに入れる可能性が高いです。

●レロ書店(Livraria Lello e Irmão)
R. das Carmelitas 144, 4050-161 Porto
https://www.livrarialello.pt/

アズレージョに彩られたサン・ベント駅

ポルトにある「世界で最も美しい○○」の2つ目が「駅舎」。

ポルトの中心部にあるサン・ベント駅は、その美しさからアメリカの旅行雑誌『Travel & Leisure』によって「世界で最も美しい駅」のひとつに選ばれたほど。駅でありながら、鉄道を利用しない観光客もわざわざやってくる観光名所になっています。

1916年に修道院の跡地に建てられたサン・ベント駅。この駅を特別なものにしているのが、駅構内を彩る約2万枚のアズレージョです。「アズレージョ」とはもともとイスラム圏から伝わった装飾タイルのことで、ポルトガルを旅しているといたるところにアズレージョが。アズレージョは「哀愁のポルトガル」の象徴といっても過言ではないのです。

石造りのどっしりとした外観とは対照的に、駅構内には壁一面にアズレージョが描かれた芸術的な空間が広がっています。

1930年にポルトガルを代表するアズレージョ画家、ジョルジュ・コラコによって制作されたこのアズレージョは、ポルトガルの歴史を描いたもの。ジョアン1世のポルト入城など、ポルトにまつわる出来事が細かに表現されています。

このアズレージョは青一色ですが、青のグラデ―ジョンで明暗や立体感などが表現されているのが見事。世界に美しい駅舎は数あれど、サン・ベント駅は「ポルトガルの歴史や文化に裏打ちされた、ポルトガルにしかない空間」という点で、唯一無二といえるでしょう。

●サン・ベント駅(Estação de São Bento)
Praça de Almeida Garrett, 4000-069 Porto

カフェ・マジェスティック

  • カフェ・マジェスティック外観

ポルトガルのみならず、「世界で最も美しいカフェ」のひとつともいわれているのが、「カフェ・マジェスティック(Cafe Majestic)」。ポルト屈指のショッピングストリート、サンタ・カタリーナ通りにある名物カフェで、1921年の創業当時から変わらない優雅な空間でお茶や食事が楽しめます。

創業当初から政治家や文化人の交流の場であったといいますが、そうした雰囲気は100年を経た今でも健在。「カフェ・マジェスティック」の存在を知らない人も思わず足を止めてしまうほど、外まで老舗の風格があふれ出ています。

アールヌーヴォー様式の装飾が施された店内は、世紀末の1900年代にタイムスリップしたかのような非日常の世界。重厚感と優美さを兼ね備えたゴージャスな空間に身を置くだけで、まるで自分自身がグレードアップしたような気にさせられます。

革張りのソファや椅子のひとつひとつにも、このカフェが経てきた歴史が刻み込まれているかのよう。まさに存在そのものが文化財級です。

  • フレンチトースト マジェスティックスタイル(6ユーロ:約867円)

写真は「フレンチトースト マジェスティックスタイル(6ユーロ:約867円)」。ポルトガルのフレンチトーストはバゲットを使い、たっぷりのシロップに浸してから焼いたものが多いのが特徴です。日本ではなかなか味わえないレベルの甘さ、あなたは体験してみたいですか?

●カフェ・マジェスティック(Café Majestic)
Rua Santa Catarina 112, 4000-442 Porto 公式サイト:https://www.cafemajestic.com/en/Utilities/Homepage.aspxa

今回ご紹介した3つの「世界で最も美しい○○」は、いずれもポルトの中心部にあり、徒歩で周ることも十分可能です。

歴史的な町並みがまるごと世界遺産に登録されているポルトは、坂の多い町だけが見せてくれる変化に富んだ表情が魅力。「世界で最も美しい○○」とともに、情緒あふれるポルトの町並みをじっくりと味わってみてください。

※記事中の日本円表記は、2022年11月21日のレートに基づいています。