1980年放送の特撮人形劇『Xボンバー』の魅力をあますことなく伝えるため企画された展示会「Xボンバー博覧会2022 きみはXボンバーを知っているか?」が10月8日から16日まで、東京・アキバCOギャラリーにて開催されている。

  • アキバCOギャラリー正面に打ち出された「Xボンバー博覧会2022 きみはXボンバーを知っているか?」メインビジュアル。本展のために復元が行なわれたキャラクター人形やメカニックの勇姿がズラリと並べられた

7日に行われた関係者・マスコミ向け内覧会では当時の製作スタッフ諸氏もかけつけ、まるで放送当時のころに戻ったかのように美麗な「復元」を施されたキャラクター人形やメカニックの晴れ姿に目を見張った。

スーパーマリオラマ『Xボンバー』は1980年10月11日から1981年3月28日まで、フジテレビ系で全25話が放送された連続テレビドラマである。スーパーマリオラマとうたわれているとおり、本作に「出演」しているのはすべて精巧に作られたキャラクター人形たち。かつてイギリスで作られ、日本でも大ヒットを飛ばしたスーパーマリオネーション作品『サンダーバード』(1966年)に負けない特撮人形劇を作りたいという意欲のもと、原作・永井豪氏、脚本・藤川桂介氏などそうそうたるスタッフが結集。そして、作品の要となる「人形製作」「メカニック造形」「撮影(本編・特撮とも)」を手がけたのは、『仮面ライダー』(1971年)でも仮面ライダーやショッカー怪人などの美術全般で活躍した三上陸男氏が1975年に設立したコスモプロダクションだった。

三上陸男氏が描いた「ムーン・ベース」のマットアート。絶好のフォトスポットとなるよう、壁いっぱいに拡大展示されている。

「Xボンバー博覧会」会場内の様子。壁面には本展のため、造型師の品田冬樹氏(円谷プロダクション)が個人的に20年以上もの歳月をかけて丹念に修復作業を行った多数のキャラクター人形やメカニックが展示され、中央には放送用フィルム、全話の台本、企画書、製作中のスタッフたちの姿を捉えたスナップなど、貴重な資料の数々が並べられた。

『Xボンバー』のキャラクター人形は、『サンダーバード』のように上から糸で操るのではなく、人形の内部に支え棒を入れ、中に仕込んだメカで手足、まばたき、口の動きを操作する仕組み。それ以外にもさまざまな手法を採り入れ、まるで生きているかのように表情豊かな「演技」をこなした名優ぞろいだ。

挿絵画家の巨匠・梶田達二氏による『Xボンバー』イラストを多数展示。ショウワノートのスケッチブックやパズル用に描かれたものが多い。

本作のキャラクターは、永井豪氏の初期デザインを元に、初期『仮面ライダー』シリーズや映画『宇宙からのメッセージ』の美術デザイナーとしても有名な高橋章氏がリファインし、造型が行なわれた。

ゲルマ先遣艦隊総司令官ブラディ・マリー。美しい女性の顔に小さな男性の顔が付いているアイデアは、永井豪氏の名作ロボットアニメ『マジンガーZ』(1972年)あしゅら男爵を彷彿とさせる。

本作の主人公・銀河シロー。柔道着を思わせる衣装を着たふだんの姿とは別に、宇宙服姿の人形が作られている。キャラクターの顔は軟質素材で出来ていて、口の開閉をスムーズに行うことができるが、表情を大きく変えるときなどは、シーンに合わせて笑みをたたえた頭部が作られた。当時はラテックス(合成ゴム)製だったが、経年劣化のためヒビ割れなどが起き、すべてウレタンスキンに置きかえられるなど、緻密な補修作業が施された。劇中の演出によって焼け焦げた衣服なども、極力似た素材を用いて復元されている。

銀河シローのアップ。シローは頭部、上着、靴のみが現存しており、他のパーツや衣装、小道具類は資料をもとに品田氏が新調したものである。

品田氏が最初に復元・補修作業を行ったのは、本作のヒロイン・ラミアだった。今回、撮影のために作られたすべてのラミア人形が「勢ぞろい」しているのも、大きな見どころとなっている。

憂いをたたえたラミアのマスク。美しいラミアは放送当時から特撮ファンに人気が高く、雑誌での「ヒロイン特集」で取り上げられることが多かった。

『Xボンバー』番組パンフレット。この他にも、初期段階の企画書や広報用の資料などが展示されている。

世界的大ヒット映画『スター・ウォーズ』にも負けない宇宙特撮を! と意気込んだ本作では、宇宙空間を舞台に正義と悪との迫力満点のメカニック戦が繰り広げられた。

巨大なゲルマ母艦は品田氏によって新たに造型された。各種発泡材がボディに用いられ、軽量に出来ている。展示に際して電飾が施され、リアリティを増した。

巨大宇宙船Xボンバーのミニチュア。まずデジタルによってデータが起こされ、それをマックスファクトリーで3D出力し、完成したモデルである。

Xボンバー機体側面には、ビッグ・ダイエックスになる3機のメカ「トリプルアタッカー(ブレインダー、ジャンボデー、レッグスター)」が備わっている。緻密なディテールを本展で確認していただきたい。

ビッグ・ダイエックスの960mmモデル。頭部と脚部しか現存しておらず、全体の70パーセントを新造型し、当時のイメージそのままのビッグ・ダイエックスが再現された。

修復されたビッグ・ダイエックス。FRP製で、目には電飾が施されている。

『Xボンバー』の主力玩具商品はタカトクトイスから発売された。右の「合金 電撃合身ビッグダイエックス」はテレビとは違う形状のトリプルアタッカーがシステマチックな変形・合体を可能にし、合金玩具ならではの魅力をアピールした。

マークから発売のプラモデル「ビッグダイX(エックス)」。非常に貴重な組み立て済モデルの「現物」をぜひ間近で確認してほしい。

グッドスマイルカンパニーから「モデロイド」シリーズとして発売が決定した「ビッグ・ダイエックス」試作品が展示された。テレビ作品と同じ分離・変形・合体が可能な本商品は、まさにビッグ・ダイエックスの決定版といえる。

『Xボンバー』で総監督&各話監督を務めたコスモプロ代表・三上陸男氏(中央)を囲んで、当時の撮影スタッフと本展開催に尽力した面々が記念撮影。左から、マックスファクトリー代表・MAX渡辺氏、モンスターズ代表・若狭新一氏、久保徹氏(人形製作)、ミューロン・倉橋正幸氏(模型製作)、林文明氏(人形操作)、三上竜次郎氏、品田冬樹氏。

「Xボンバー博覧会2022 きみはXボンバーを知っているか?」は10月16日まで、東京・アキバCOギャラリー(東京メトロ末広町駅すぐ)にて開催。会場内では『Xボンバー』関連のさまざまなアイテムや、資料性に溢れた200ページの「図録」などが販売中。

(取材協力:品田冬樹、MAX渡辺、小林義仁、パチ車でおじゃる.jp)

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