最近、「国葬」という言葉を耳にする機会が多いですよね。今月には、7月に亡くなった安倍元首相や、先日96歳で死去したイギリスのエリザベス女王の国葬が予定されています。

特に、安倍元首相の国葬の費用については、しばしば議論が巻き起こっていますが、過去の国葬の費用はどのくらいだったのでしょうか。この記事では、これまでに行われた首相経験者の国葬や合同葬などについて、かかった費用をまとめました。

■国葬とは何か?

<国葬とは>

国葬とは、政府が主催し、国家に大きな功績を残した者を称え、死を悼む葬儀です。かかる費用については、全て国費から支出します。国葬は、一般的な葬儀とは異なり、政治的な側面を持つという特徴があります。

国葬は、戦前の明治憲法下において、天皇の勅令である「国葬令」に基づき行われていました。しかし、この国葬令は日本国憲法には適合しないという理由で、1947年に廃止されています。

そのため、現在では、国葬について定めた法律は存在しません。国葬を行うこと、費用を国費から出すことなど、国葬に関する事項については、法的根拠がないとされています。

<国民葬や合同葬との違い>

なお、国葬と似たものとして、「国民葬」や「合同葬」という葬儀があります。国葬と国民葬の内容はほとんど同じですが、費用負担においては少し異なり、国葬が全額国費でまかなわれるのに対し、国民葬では一部の費用を遺族が負担します。

一方、合同葬とは、企業と遺族が合同で執り行う葬儀です。政治家においては、特に首相経験者の葬儀が、内閣と所属していた政党による合同葬として行われることがあります。

■これまでに行われた国葬の費用

戦前の日本では、国葬令に基づき、以下のような首相経験者の国葬が執り行われました。

<戦前の首相経験者の国葬>

・1909年 伊藤博文
・1922年 山縣有朋
・1924年 松方正義
・1940年 西園寺公望

一方、戦後には、吉田茂元首相の国葬が1967年に行われましたが、戦後の国葬はこの一例だけです。そのため、今月予定されている安倍元首相の国葬は、実に55年ぶりの国葬となります。

また、国葬のほかに、国民葬や合同葬も行われています。国が関わった首相経験者の葬儀について、形式や支出された国費などを以下にまとめました。

<戦後、国が関わった首相経験者の葬儀>

  • 戦後、国が関わった首相経験者の葬儀一覧

先述の通り、戦後に行われた国葬は、吉田茂元首相の一例のみです。その他に国が関わった葬儀は、いずれも国民葬や内閣・自民党合同葬などの形式を取っていました。また、この中で最も費用が高かったのは、1988年に行われた三木武夫元首相の葬儀で、約1億2,000万円でした。

安倍元総理の国葬はいくらかかる?

では、今月行われる安倍元首相の国葬にはいくらかかるのでしょうか。当初、会場の設営費やバスの借り上げ料など、式典にかかる費用は2億5,000万円程度で調整が進められていました。

しかし、その後、国葬の警備費用が8億円程度、海外要人の接遇費などが6億円程度かかるとされ、国葬にかかる全体の費用は16億円を超える規模になることが明らかとなりました。

これは、過去の国葬や合同葬の費用と比較すると、飛び抜けて高い金額であることがわかります。ただし、約16億円はあくまで「仮の数字」であり、これ以上に費用がかさむことも否定できません。

もちろん、これよりも低く抑えられる可能性もありますが、いずれにしても安倍元首相の国葬の費用は、過去に類を見ないほど高額になりそうです。

■今後も国葬の費用には注目が集まりそう

今回は、過去の国葬や合同葬などについて、かかった費用がどのくらいだったのかご紹介しました。これまでの国葬、合同葬の費用と比べてみると、安倍元首相の国葬の費用が突出していることは一目瞭然です。

さまざまな議論の中、安倍元首相の国葬は2022年9月27日、日本武道館で執り行われます。実際に国葬にかかった費用については、今後も注目を集めることでしょう。