8月20日・21日に鈴鹿サーキットで開催された「シマノ鈴鹿ロード」。プロ選手や本格派レーサーはもちろん、初めて参加する人も安心して参加できる多彩な種目・クラスのレースが行われた。今回は初心者から上級者まで安全に楽しめる多彩な種目を用意し、ロードレース初心者もさまざまな角度から楽しめる本イベントの模様をレポートする。
初心者向け講習会付き体験レースを実施
「競技レベル別」などさまざまなカテゴリでレースを実施する「シマノ鈴鹿ロード」。メインレースはトッププロ選手たちが参加する2日目に実施された「シマノ鈴鹿ロードレース クラシック」だが、それぞれのレベルのサイクリストがレースの雰囲気や醍醐味を味わえることが最大の特長だ。
出走前に鈴鹿サーキットのコースの特徴や安全走行などについて学び、実際にコースを走るという段階を踏むことで、初めてのレースをできる限り安全に楽しめる「講習会付きの体験レース」を開催。ワンランクアップして「2周の部」や「1時間サイクルマラソン」、「2時間エンデュランス」に挑戦し、さらにレース経験を積んで「3周の部」や「5周の部」、「エリート」へとステップアップしていくことができる。
2012年から始まった「レース初心者講習会」は、安全に完走するために必要な知識やコツを学べるというもので、受講対象となったクラスでは転倒者が激減したデータもあるという。「体験レース」出場者はレース前に必ず受講する必要があるが、それ以外の受講者、すでにある程度レース経験を積んでいる受講者なども少なくなく、人気のようだ。
今年の講師は1996年に日本人初の近代ツール・ド・フランス出場を果たした今中大介氏。
「レース走行と普段のサイクリング。最大の違いは密集していて自分の自由が利かないことです。無理な進路変更で後ろを巻き込んでしまい落車しちゃうことがあるので、走行ラインの上をずっと真っ直ぐ走るように意識してください。下ばかり見るとかえって不安定になるので、普段の練習でも前方を見ながら自然とラインをトレースできるように。スプリントかけるときもブレずに走行ラインを保つようにしましょう。また、急ブレーキをかけず、前方のブレーキを予想しながら走ることも基本です」
ディスクブレーキの特性などのほか、鈴鹿サーキットを走行する際の具体的な注意箇所やスタート時のギアなど走行の基本的なコツなどについても紹介した。
「走行レーンは基本的にホームストレートが時計回り、反時計回りのどちら方向のコーナーに接していくかで決まります。鈴鹿は8の字のように途中でコースが交差しますが、基本は左側を走り、右手から追い越します。広い国際サーキットなので、怖いからと言って直前の選手ばかり見るのではなく、広い視野で20〜30人ぐらい先を見るようなイメージで、前方の動きも見ることが非常に重要です」
対象物が少なくスピード感覚がわかりにくいサーキットでのレースはスピードが出やすく、途中でバテてしまうと無意識に斜めに走ってしまったり、下を向いて前方の動きを見逃したりしやすくなるという。
「初めてのサーキット走行で緊張するのは仕方ないんですが、緊張を集中に変えることが大切です。そのためには深呼吸をして落ち着いて周りを見ること。耐久レースなどでは風の影響などで左右に蛇行し、それが後ろで増幅されて大きなうねりになることもあります。前方が蛇行し始めても、自分から後ろは必ず真っ直ぐに保つという意識で走りましょう」
「初めてのレースは落車せず、完走することが一番」とのことで、前方で起きた落車を回避するテクニックも伝授した。
「咄嗟にブレーキをかけることになりますが、後ろブレーキよりも効きが良いフロントブレーキをなるべく多用するようにしましょう。前転してしまうジャックナイフという現象を防ぐため、荷重をぐっと下げて低くして後ろに重心かけるテクは普段、街中を走る時も役立ちます。極端な例では10:0でフロントを使って、時速40キロからでも5mほどで止まるプロ選手もいます」
企業ブースやサブイベントも充実
「シマノ鈴鹿ロード」では事前にショップで点検やメンテナンスを行い、整備された自転車でのレース参加の啓発も行っているが、レース会場ではバイクに予期せぬトラブルが発生することもある。安全面のサポートとして、シマノのレースメカニックが万が一のトラブルに対応する「シマノテクニカルサポート」も実施された。
利用者は例年260件前後。輸送中や転倒時にリアディレイラーの付いているエンド金具を曲げてしまうことが原因の変速トラブルが多いそうだ。
実力に応じてステップアップ可能な個人種目に加え、一定の年齢でクラス分けした年齢別種目やチーム種目も実施。40+,50+,60+といった年齢別クラスの種目「マスターズ」や、「2時間エンデュランス」や「チームタイムトライアル」などの種目も人気のようだ。
また、VRによって実写映像でインドアサイクリングを楽しむことができるバーチャルスポーツアプリ「ROUVY(ルービー)」を使い、鈴鹿ロードのコースをバーチャル空間に完全再現した「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」も同時開催。
2周、3周、7周の部からなるレース種目は全て個人種目で、レースの様子は他のレースと同様にインターネットライブ中継し、プロの実況・解説を交えてバーチャル空間での熱い戦いの様子が届けられた。
「シマノ鈴鹿ロード」の会場ではレース出場や観戦はもちろん、試乗会やPRブース、各種講座などサブイベントも充実していた。
アスリートの効果的な食事の摂り方に関する講座には、シマノレーシングやオリックス・バッファローズなど、さまざまな競技アスリートの栄養サポートに関わってきた管理栄養士・河南こころ氏が登壇。ロードレースなどの持久系競技における食事の重要性を語った。 「私自身いろんな減量方法を試したり、試している選手を見たりしてきました。その結果、最終的に至ったウエイトコントロールのベースとなる存在がエネルギーの消費量と摂取量です。血糖値や糖質の問題の前に、まず見直すべきはエネルギー量の確認、食べ過ぎと運動不足について考えることが大切です」
断食やりんごダイエットのような単品タイプのダイエット方法は、全体の摂取エネルギー量が減って体重も減りやすい。が、極端なエネルギーバランスだとタンパク質や筋肉が分解されてエネルギー源にされるため、とくにアスリートにはあまりおすすめしないという。 「リバウンドやコンディションを考え、私はだいたい月2キロの減量を目標することが多いです。体脂肪1キロは約7200キロカロリーと言われており、2キロ減らす場合は月1万4400キロカロリーをカットします」 コンディション維持のためバランスの良い食事も大切な上、さらなる運動でのカロリー消費が難しいトップアスリートの場合は、「いかに1日500キロカロリーほどカットするかがポイント」と語り、脂質などを減らす具体的な調理方法の工夫などを紹介。
河南氏曰く、トップアスリートでも一日に必要なカロリーの計算方法などの知識は意外と知られていないらしく、レース出場者たちはこうした講座にも熱心に耳を傾けていた。