パーソル総合研究所は9月5日、賃金に関する調査結果を発表した。調査は5月27日〜31日、18歳〜69歳の働く男女1万3,745名(うち、正規の社員及び職員8,383名、自営業者・フリーランスを除く)、および企業の経営層530名を対象にインターネットで行われた。

  • 賃金の増減(雇用形態別)

    賃金の増減(雇用形態別)

勤務先と雇用形態が変わらなかった人に、前年(2021年)に比べ賃金がどのように変化したかを聞いたところ、「増加」と回答した人が最も多いのは「正規の社員・職員」で44.6%。次いで非正規雇用者の「パート・アルバイト」(33.5%)、「契約・嘱託社員」(30.3%)、「派遣社員」(27.8%)と続く。

業種では、平均年収の高い「情報通信業」で賃金が増加した人の割合が多いのに対し、平均年収の低い「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」では少ない傾向に。職種別にみても、「経営企画」「商品企画・マーケティング」など平均年収の高い企画系の職種で多く、平均年収の低い「飲食・宿泊サービス」「配達・運搬・清掃・包装等」「一般事務・アシスタント」では少なかった。

また、収入に対する満足度を聞いたところ、「正規の社員・職員」では満足37.4%、不満37.0%、「パート・アルバイト」では満足35.0%、不満35.7%と、満足と不満が拮抗する結果に。「派遣社員」と「契約・嘱託社員」では不満がそれぞれ46.6%、50.4%と不満が満足を上回り、「会社・団体の役員」では満足53.7%と満足が不満を上回った。

  • 世帯年収階層別の月間支出

    世帯年収階層別の月間支出

支出に関しては、世帯年収が高いほど支出は多い傾向に。また、世帯年収700万円以上と300万円未満で最も支出額の差が大きかった費目は「子供の教育費」で、700万円以上の世帯は300万円未満の世帯の4.8倍支出していることが明らかに。収入のギャップが子供の教育に影響することがうかがえる結果となった。

賃金の増減別に支出を見ると、賃金が増加した人のほうが全般的に支出の多い傾向にあり、特に、「自己啓発・学習費」と「娯楽費」で支出額の差が大きく、いずれも賃金が増加した人は減少した人の1.3倍の額を支出している。

  • 賃上げに対する経営層の考え

    賃上げに対する経営層の考え

次に、企業の経営層530名に対し、賃上げに対する考えを聞いたところ、企業の経営層の63.0%が「会社の成長なくして賃上げは難しい」と回答し、「賃上げなくして会社の成長は難しい」の6.4%を大きく上回った。一方で、「賃金アップは投資だ」(38.1%)は「賃金アップはコスト増だ」(18.5%)を20ポイントほど上回り、『賃上げには会社の成長が前提だが、成長への投資として賃上げも必要』と考える経営層の認識が読み取れた。

この数年の雇用実態と、今後の雇用意向ならびに賃上げへの姿勢について聞くと、これまで正規社員を増やしてきた企業は、今後も正規社員を増やす意向が強く(75.4%)、賃上げにも積極的(55.4%)。一方、非正規社員を増やしてきた企業は、今後も非正規社員を増やす意向が強く(53.3%)、賃上げにも慎重(41.1%)に。正規社員の雇用や賃上げを進める企業と、非正規社員の雇用や賃金抑制を進める企業とで、今後二極化していくことが示唆される。

また、賃上げの判断に何が影響するかを聞いたところ、「予算達成度や業績の良し悪し」が最も多く40.6%。次いで「従業員の離職抑止」(29.4%)、「景気動向」(27.9%)、「物価動向」「優秀人材の採用強化」(ともに23.9%)と続いた。「政府の要請」(8.1%)や「経団連」(3.0%)、「連合」(1.0%)の方針は影響度が低かった。