「朝活」という言葉が広まってずいぶんたちます。「質問」によって能力を引き出して自分らしく生きるメソッドを提唱する「質問家」のマツダミヒロさんも、「『朝の過ごし方』が人生を変える」というひとり。

  • 「朝の過ごし方」が人生の質を左右する、納得の理由 /質問家・マツダミヒロ

では、どのような「朝の過ごし方」が人生をよりよいものにしてくれるのでしょうか。マツダさんは、「自分への問いかけ」こそが最重要だと語ります。

■「こうしたい!」と思う1日を送るか送らないか

著書『朝1分間、30の習慣。』(すばる舎)を通じて、「『朝の過ごし方』が人生の質を左右する」と述べているわたしですが、じつはいまもむかしも決して朝が得意なほうではありません…(苦笑)。過去にわたしが読んだ多くのビジネス書には、「朝からしっかり活動できなければ、ビジネスマンとして成功できない」といったことが書かれていて、20代の頃のわたしは読むたびに落ち込んだものです。

そんなとき、あらためて「朝とはなんだろう?」と自分に問いかけてみました。「朝の過ごし方」というと、一般的には「早起きしてなにをするか」といったことをイメージする人が多いはずです。

でも、夜勤をしている人もいるようにライフスタイルは人それぞれ。そうであるなら、朝とは4時や5時の早朝だけを指すのではなく、人それぞれ「自分が起きた時間」こそが朝なのだと考えたのです。そして、早起きが苦手だからと落ち込む必要などなく、自分にとっての朝になにをするかが重要だと考えるようになりました。

それまでのわたしは、起きたら目的もなくスマホを見るといった無為な過ごし方をしていました。そうして、気がついたら昼になっていて、「半日、なにをしていたんだろう」と後悔してしまう…。

そこで、どうすればそんな後悔をしないようにできるかと考えたとき、やはり自分に問いかけようと思ったのです。その問いかけの言葉は、「今日、どんな1日になったら最高?」というもの。そして、朝にそう問いかけることを習慣にすると、「こうしたい!」と自分が思い描く1日を送れるようになってきました。

いうまでもなく、人生は1日1日の積み重ねでつくられるものです。自分が「こうしたい!」と思う1日を送るか送らないかで、最終的な人生の質も変わっていくということは明白でしょう。

■質問によって意識のフォーカスをよい方向に変える

著書のなかでわたしが紹介している「朝の過ごし方」には、たとえば「1分間だけでもいいのでインプットをする」といった「行動」も含まれますが、先に触れた「今日、どんな1日になったら最高?」と問うといった「自分自身に問いかける」ことが基本となります。なぜなら、自分自身への質問こそが、人生の質をもっとも大きく左右するものだからです。

それには、質問が持つひとつの特性がかかわります。その特性とは、「質問が、意識のフォーカスを変える」というものです。

たとえば、「昨日、楽しかったことはなに?」と聞かれたとします。そうすると、「どんな楽しいことがあったかな」と考え、「楽しかったこと」に意識をフォーカスすることになり、結果的に「昨日は楽しい1日だった」と思えるようになります。

一方、「昨日、嫌だったことはなに?」と聞かれた場合、「どんな嫌なことがあったかな」と「嫌だったこと」に意識をフォーカスすることになり、「昨日は嫌な1日だった」と感じてしまいます。同じ1日であっても、質問次第で楽しい1日にもなれば嫌な1日にもなるというわけです。

「人生をいい方向に変えるには、ポジティブ思考を持つべき」といったことがよくいわれます。ところが、「ポジティブ思考を持とう」とただ思ったところで、なかなかそうできるものではありませんよね。

そこで、意識のフォーカスを変える質問こそが力を発揮します。「今日、どんな1日になったら最高?」という質問などは、まさにポジティブ思考を持つためのもの。そのような、意識のフォーカスを変えて自分をよりよい方向に導く質問が、人生の質をぐんぐん高めてくれます。

■質問に答えられなくても、脳は答えを探し続ける

ただ、注意してほしいのは、朝に自分へ問いかけるからといって、必ず答えを出さなければならないわけではないということです。

「自分への問いかけが人生の質を高めてくれるのだから、しっかり答えよう」とか、それこそ真面目な人なら「正解を出さないとならない」なんて考えがちです。おそらく、子どもの頃から受けてきた日本の教育における「正解主義」の影響なのでしょう。

でも、自分自身への問いかけに対する自分自身の回答なのですから、正解も不正解もありませんし、見方を変えればどんな回答も正解であり、回答できなかったとしてもそれもまた正解なのです。ですから、「答えられなかった自分は駄目な人間だ…」などと落ち込む必要はありません。

そもそも、回答できなかった場合にも、自分へ問いかけたという行為自体が確実に人生をよりよい方向に導いてくれます。なぜなら、質問をされると、自動で答えをサーチしはじめるという特性を脳が持っているからです。

「人生をかけて成し遂げたい目標はなに?」と自分に質問をしてみて、意識のうえでは「まだわからない、答えられないよ」と思ったとしても、そのあとも脳は「人生をかけて成し遂げたい目標」をサーチし続けます。そうして、いずれは回答を見つけてくれるのです。

みなさんも、毎朝ではなくてもいいので、「人生をかけて成し遂げたい目標はなに?」と自分に質問してみてください。いつか、「これだ!」と思える目標を脳が見つけてくれ、人生をより充実したものにしてくれることでしょう。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人