就職活動中の学生のみなさんに質問です。やりたい仕事はありますか? 答えがすぐに出ない人、それが分からないから困っているんだよと思った人に向けて、あなたが進みやすくなるような方法を具体的にお伝えします。やりたいことに向かって活動している人も、今一度、整理のために活用してみてください。

私は、メンタルとマインド両方にアプローチするコーチング※を行っており、自分で自分を「いいな」と思える状態を「つよつよメンタル」と名付けて、自分が思う「よい人生」を作っていくベースになると提唱しています。

※相手の自発的な行動を促すコミュニケーション手法

「やりたい仕事」や「自分らしさ」は、マインドから見えてくるものです。最新のコーチング理論を下敷きにして簡単に可視化してみましょう。そして、自分が納得できる就職活動につなげてください。

  • 就職活動の「自己分析」で悩むことはありませんか?

「自分らしさ」「自己分析」というから難しくなる

私は学生の時「自己分析」ができませんでした。何のためにやるのかが分からず、当時は具体的な方法を知らなかったからです。時代が変わったのに、今の学生さんからも自己分析が苦手という声をよく聞きます。

これから紹介する方法は、就職活動に限らず、自分の人生の指標を知ることにつながると評判の方法です。私のコーチングで必ず行うワークをベースにしていますが、ここでは自分でやる方法を短縮バージョンでお伝えします。

まず、「自分らしさ」や「自己分析」を、「人生で大切なもの」と言い換えることにします。自分らしさが分からない人も、人生で大切なものはあるでしょう。ある、と思って(これは大事なことです)自分自身に質問してみてください。「あなたの人生で、大切なものは何ですか?」

答えはできるだけ短く、もう思いつかないくらいまで答えます。次に、出てきた答えを大切な順にざっと並べ替えてみましょう。並べ替えたものを眺めてみて、どんなことに気付きましたか? 注意点としては、これは誰かに見せるものではありませんので、カッコつける必要はありません。また、適当にやっても何の意味もないので、正面から取り組んでくださいね。

同じように「やりたいこと」は、「仕事をする上で大切なこと」と言い換えて質問します。「あなたが仕事をする上で、大切なことは何ですか?」

ただこれは、もしかすると、まだ働いたことのない人にとっては難しいテーマかもしれません。「大切なこと」がうまく出てこないという場合は、今までの自分の経験を思い出しながら働く姿をイメージしてみてください。

給料、熱中、仲間、時間、勤務地、安心、評価、競争、家族、やりがい、……たくさん出したら、自分の「大切なこと」を眺めてみましょう。会社や職種、働き方を選ぶ際の軸が隠れていませんか?

このワークをやる時にいつも思い出すのが、『ちびまる子ちゃん』(集英社)作者のさくらももこさんのエッセイ『まる子だった』(集英社)の中の一節です。

「子供の頃から"漫画家はいいよなー……毎日家にいて漫画を描いてりゃいいんだもん。そんな暮らし、夢だよなー……"と思っていた。その願望が強かったために、今私はこうして漫画家になれたのである。家の中にいたいというささやかな願いが神に届いたのだ」
参照:『まる子だった』95~96ページより

さくらさんは、仕事をする上で、さらに人生でも「家の中にいる」ことを大切にされていたのではないかと思います。それは他人からすると非常識なことなのかもしれません。しかし、自分が本当に大切だと思うことを、どうやって叶えるか真剣に考え、行動していくことこそが「自分にとってのいい人生」を過ごすことになるのではないかな、と私は信じています。

さておき、このふたつの問いで、いつもの何気ない自分の行動の理由に気付く人もいるでしょう。もしかすると自分の人生のテーマが見つかった人もいるかもしれません。そんな人は、物事に対して真正面から真剣に取り組むことができる人、逃げない人、限られたヒントから気付く力がある人、なのかもしれませんね。

やりたいことがない人に最初にする質問

あなたが新しい発想を得るために、突拍子もない質問をすることもコーチの仕事です。「やりたいことがない」というだけで就職活動の意欲が湧かないという人には、「仕事は、やりたいことでないといけませんか?」とお聞きしておいて、加えて、あなたの中に埋もれている「やりたいこと」のカケラを見つけたり、なんでもないことにも面白さを見つけられたりできる変化のサポートをしたいと思います。

やりたいこと(好きなこと)を仕事にするか否かという論争は昔からありますが、「やりたいこと(好き)」の要素と、それが価値を生むかどうかがポイントになるのだと思います。

例えば「本が好き」だとして、読むことが好きなのか、書くことが好きなのか、収集することが好きなのか、周りに広めることが好きなのか、これだけの要素でも、どのような仕事につなげるかはそれぞれ違うことに気付きます。

やりたいこと(好き)を出発点にする場合、あなたの「好き」が価値を生むかという視点は必要です。とりあえずは、消費者としての好きと価値を生む(仕事にできる)価値は違うということを知っておくだけでもいいでしょう。

やりたいことがないと思う人には、少し視点を変えて「ずっと続けていられること」は何ですか? とお聞きします。職業人としての人生は50年近く続きますので、途中で転職するにしても、ずっと飽きずに磨き続けられることを就職の時点で見つけておくことは、キャリアの継続性にも有用です。

それを見つけるために、まずやってみてほしいこと。小さい頃に、誰かにやりなさいと言われたわけでもないのに集中してずっとやっていたこと、楽しくて夢中になったこと、怒られてもやっていたことを思い出してみてください。そして、その時の自分になりきって、何が楽しかったのかを言語化してみてください。その楽しかった要素を「働く」に転用できませんか?

私を例にすると、図工の時間が始まった瞬間に終わりのチャイムが鳴ったような気がした経験、文化祭に全てを捧げたことなどを思い出します。ぐっと集中すること、目標に向かって力を出すことが楽しかったので、毎日同じことを繰り返すのではなく、自分で計画して頑張るような仕事が良さそうだな、と思えます。小さい頃を思い出してみて、そして考えてみて、あなたはどうでしたか?

自分がやっていることを好きになる能力は万能

とはいっても、いつも思った通りの仕事に就くことができるとは限りません。そんな時にもモチベーションを維持することができる万能な能力を簡単に手に入れておきましょう。それは「自分がやっていることを好きになる能力」です。思い通りにいかないこともある就職活動期間において、心折れそうな時にもきっと、あなたの力にもなると思います。

自分がやっていることを好きになれると、それをやっている自分も好きになるでしょう。少なくとも、嫌いにはなれなさそうですね。自分を好きになるということは、自分を信頼できる、つまり自信を手に入れることができます。自信があれば、何かが起こっても自分ならどうにかできるかも、あと一歩、進んでみようかと思えるくらいにはなります。これは「つよつよメンタル」の根幹でもあります。

「自分がやっていることを好きになる能力」は、ちょっとしたコツで身に付くものですが、実際にできている人、できていると自覚している人は少ないものです。できますと言えること、実際にそれを体現していることは、就職活動のみならず、人生においても大きな強みになるでしょう。

最後になりましたが「自分がやっていることを好きになる能力」の磨き方、やることはただひとつです。「いいこと、できたことに注目する」これだけではあるのですが、私たち人間は、問題のある部分(悪いこと、できていないこと)を意識してしまうようにできていますので、最初のうちは自然と「できなかったこと」に注目しているのは仕方がありません。

大切なのは、それに気付いて、さらに意識して「できていること」を探してみることです。お友達とゲームのように楽しんでみてもいいでしょう。

慣れてくる頃には、物事の捉え方が変わっていることに気付くと思います。気分が軽くなったり、やる気が出てきたりするように感じる人もいるかもしれません。さらに他の変化にも気付くでしょうか。「いいこと」に注目して、変化を探してみましょう。そうするうちに、あなたの中に隠れていた「やりたいこと」や「大切なこと」が、ぼんやりとでも姿を表すかもしれません。

新しく知った自分を好きになって、よい就職活動の日々をお過ごしくださいね。