地元・滋賀県のふるさと観光大使を務め、音楽フェス『イナズマロック フェス』を開催するなど、今やアーティストの枠を超えて地域貢献活動を続ける西川貴教。今年3月からは、BSJapanextの番組『西川貴教のバーチャル知事』(毎週月曜21:00~)を立ち上げ、愛する故郷の課題解決のために“バーチャル知事”となって取り組んでいる。
西川がここまで、滋賀県のために汗をかき、幅広く活動する原動力は何か。本人にインタビューをすると、駆け出しの頃にがむしゃらになって走り回った経験と、周囲の期待に応えたいという強い責任感が見えてきた――。
■きっかけは幼かった甥・姪への思い
出演者の「やりたいこと」を起点に一から企画・制作を行い、リアルな姿を伝えるというコンセプトの枠で始まった同番組。西川は「『何でも好きなことをやっていいですよ』と話を頂いて、パッと浮かんだのはやっぱり地元のことだったんです。2008年からふるさと観光大使の委嘱状を頂いて、地元のことにたくさん関わらせていただいているんですが、東京にいると、地元の本当のリアルな声っていうのがなかなか伝わってこない。(09年に)『イナズマロック フェス』を始めてからは、そういった声を伺うようにはなっているんですが、もっと深く地域の皆さんに根ざした取り組みをしたいと思っていたところだったので、この番組を通じて、そういうことができればと思いました」と意図を語る。
そもそも、地元・滋賀への思いを強くしたきっかけは十数年前、幼い甥っ子や姪っ子の姿を見て、「これから我々が負担をかける社会保障費を背負ってくれる若い世代のみんなが、少しでも地元のことに対して愛着を持って、誇りを持ってくれる場所にしていかないと」と思ったことだそう。
「僕が地元を離れなきゃいけなかったのは、いろんな情報やものが、滋賀県にたどり着くまでに時間がかかったからで、大阪に出なきゃいけなかったし、東京に行かなきゃいけなかった。でも、僕が幼かった頃に感じた不便さを、この子(甥、姪)たちに感じてほしくないなと。むしろ滋賀県が発信していく場所に変わって、ここに向かってきてくれる人たちを増やしていく。その1つの旗頭として、『イナズマロック フェス』があったんです」
■「僕自身も、こんな感じの仕上がりになるとは(笑)」
音楽アーティストとしてデビューしたが、芝居、番組MC、音楽フェスの主催、そして地域に関する活動など、ここまで幅広く活躍する現状に、「僕自身も、こんな感じの仕上がりになるとは思っておりませんでした(笑)」と苦笑い。各方面から声をかけられ、それに応えた結果だといい、その原動力は「期待していただけると、中途半端に終わらせず、何か形にしたいという気持ちになるんです」との思いからだという。
西川がその存在感を最初に示したのは、音楽番組『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ)で、あのダウンタウンへ果敢に立ち向かっていく爆笑トークだった。「ありがたいことに、ああいった形で注目をしていただけたことで、本来だと音楽畑の人間が出向かないような、本当にたくさんの場所でいろんな経験をさせていただき、ダウンタウンはじめ諸先輩方に引っ張っていただけたおかげです」と謙そんするが、活動の幅を開拓していったのには、過去の経験が生きていた。
「皆さんにご存知いただいているのは、T.M.Revolutionというプロジェクトの活動からだと思うんですが、僕は20歳のときに一度バンドでデビューして、なかなか結果を残すことができなかったんです。そこから所属レーベルがなくなり、事務所もなく、ひたすら自分で曲を作って詞を書いて、自宅でマルチトラックレコーディングして作ったデモテープを何本もダビングして、それを手にいろんな方のところに足を運んで聴いていただいて、きっかけをつかんでいくという時代があって、1個1個で結果を残していかないと次がないという思いでやってたんですよ。その頃の気持ちがあるから、躊躇(ちゅうちょ)するよりも先に、とにかく挑戦していこうという考えになれるんじゃないかなと思います」