運用者数・預かり資産ともにNo.1を誇るロボアドバイザー「ウェルスナビ」主催のオンラインセミナーが8月9日に開催され、金融教育家として活動する塚本俊太郎氏が登壇。

「『貯める・増やす』ための基本」や、「ウェルスナビ」も採用する長期・積立・分散投資のポイントについて語られた。

株や債権など金融商品の特徴をまとめて解説

この3月まで金融庁の金融教育担当として、高校生向けの金融教育指導教材や小学生向けコンテンツ「うんこお金ドリル」の制作に携わり、実際に高校や大学の教壇にも立ってきた塚本氏。

「資産形成のベースは毎月の家計管理による貯蓄です。預金金利が8~9%という時代もありましたが、この20年間ほど預金金利はほぼ0%となっています。物価上昇により貯蓄の価値が目減りする可能性が高まっていることに加え、ライフプランが多様化。人生100年時代と言われる状況もあります」と、資産形成の必要性が増している昨今の背景を整理し、「収益性」「安全性」「流動性」という金融商品の3つの基準を紹介した。

それぞれはトレードオフの関係にあり、3つの基準すべてを満たす金融商品はなく、目的に応じて使い分けることが大切だという。

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「まずは預金・貯金です。銀行に預けると預金、郵便局に預けると貯金と言いますが、商品性は変わりません。ATMですぐお金が引き出せて、金融機関がもし潰れても1,000万円までの元本と、その利息が保証されます。収益性は現在ほぼゼロに近い状況ですが、安全性・流動性は最も高いです」

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「債権は国や会社にお金を貸すことで定期的に利子が支払われ、5年、10年と決められた満期が来ると最初に貸した額面がそのまま返ってきます。国が発行する国債と会社が発行する社債があり、国債は税金を元に支払いが担保され、基本的に安全性は極めて高いです。社債は発行した会社が潰れると返済されない可能性もあり、発行体次第。満期前の売却も不可能ではありませんが、その場合は元本割れの可能性が高く、流動性は低めで収益性は預貯金より少し高く、株式よりは低いという商品です」

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「株式は会社の一部を所有します。会社の業績は景気などで大きく変動し、会社は株式投資のお金を返す必要はありませんが、会社が上げた利益を配当などで還元します。元本割れのリスクもあるので安全性は低いものの、高い収益性が期待できます。証券取引所で売買でき、流動性も比較的高い商品です」

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「最後の投資信託は多くの投資家から少しずつお金を集め、大きなお金にして株式・社債・不動産などに投資をする仕組み。ファンドとも言います。何に投資するかで価格変動の幅が変わり、元本保証はありません。3~4日ほどで換金可能で、少額から買えて、さまざまなものに分散投資しやすいのがメリットです」

「投資と投機とギャンブルの違いは期待値」

「お金を運用して得られる利益・損失をリターンと言い、このリターンは変動します。リターンの振れ幅をリスクと言いますが、金融商品では必ずしもマイナス要因だけではなく、リターンがプラスになる要因でもあることを覚えておいてほしいと思います。リスクをとらないとなかなかリターンを高くすることはできません。元本保証でリスクがなく、高いリターンを保証するものは詐欺と考えるべきです」

塚本氏は経済活動にプラスになる活動にお金が使われ、生まれた利益が還元され、世のためにもなる投資の仕組みを理解する大切さを強調する。

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「預金は銀行に預けたお金が企業や政府に貸し出しされ、利子が戻っていく仕組みですが、預金金利は現在0.001%という状況です。一方、株式は資金が企業にわたり、国債は政府に、社債は企業にお金を貸すかたちになります。企業はその資金で新しい商品・サービスをつくり、利益が最終的に投資家に還元されるというもので、国債は政府にお金を貸すので、公共サービスに使われます」

投資はギャンブルと言われる向きもあるが、塚本氏は「投資」「投機」「ギャンブル」の違いは期待値の違いによるという考えを語った。

「『投資』は経済活動に使われ、巡り巡ってお金が還元される仕組み。うまくいく、いかない可能性をひっくるめて平均値がどうなるか考えると、世界規模で見れば経済は成長しているため、期待値はプラスと考えられます。一方、短期間の値動きだけで安く買って高く売ることを狙う『投機』は、基本的には経済的に何も生み出さず、勝った人と同じ数だけ負けた人がいるため期待値はゼロ。ギャンブルは競馬を例に考えると、購入された馬券の金額の70%、手数料30%を引いたお金が当たった人に移動するかたちで、期待値はマイナスになります」

もちろんギャンブル自体がダメなわけではないが、あくまで娯楽なので資産形成を考える上では、やはり“投資”が大切とのことだ。

GDPが伸び悩む日本国内への投資は?

塚本氏は投資のポイントとして「つみたてNISA」「iDeCo」といった非課税制度を活用した長期・積立・分散投資の大切さを説明。5年と20年という投資期間で国内外の株式・債券を毎月同額ずつ買った場合の結果を比較するグラフなどを紹介した。

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

「過去のデータなので将来もこの通りになるとは限りませんが、基本的に景気の波を2回転ぐらい乗り越えて、20年ほど長期投資できると、プラスの果実が大きくなると言えます。また、市場の値動きは読めず、投資のタイミングを捉えることは難しいので、例えば月1万円など、予め決めた金額を継続的に投資する積立投資が有効になります。分散投資には株式と債券というように、値動きの異なる資産へ分散して投資する方法と、国・地域を分散して投資する方法があり、価格変動のリスクを減少させます」

  • 出典:金融庁『高校生のための金融リテラシー講座 4章「貯める・増やす」 ~ 資産形成』

セミナー冒頭で「特に若い人には自分で稼ぐ力を高める自己投資も忘れないでほしいと思います」とも強調していた塚本氏。参加者からのボーナスなどまとまった資金で運用を始める場合、一括で投資すべき?といった質問に回答した。

「金額×利回り×時間=投資効率なので、一度に投資して長期で運用するほうが効率は良く増える可能性は高まります。ただ、自分の投資金額が実際に増減する経験がないと、どうしても途中で怖くなってやめてしまうかもしません。投資ではそれが一番良くないことなので、投資未経験者は時間を分散させたほうがいいと思います」

少子高齢化に歯止めがかからず、GDPが伸び悩む日本国内への投資については、「日本人は日本に対する評価が厳しいんですが、日本国内に投資をすること自体は悪くないと僕は思います」とコメント。

「日本の株式市場も1990年当初と比べて、下がっていた時期が長かったものの、経済成長はしているので。ただ、アメリカなど先進国でも経済成長率が高い国はありますし、中国を含む新興国はさらに高い。人口の増えているアフリカや中南米の経済成長率も、今後どんどん高くなっていくと言われています」と語った。

また、「つみたてNISA」では全世界株式と全米株式、アメリカのトップ500社からなるS&P500が人気とのことで、「全世界株式は約60%が米国株、約50%がS&P500という比率なので、この3つが全く違う方向に動くことはないと思います。あとは好みの問題で、将来の世界経済の牽引役が変わると考える方は、全世界に投資をするといいでしょう」とも述べていた。