巷に溢れるたくさんのダイエット情報。さまざまな方法が日々発信されるということは、それだけダイエットに失敗する人が多いのかもしれません。正しい方法を選んで、それを続けることができたらダイエットは成功します。

私はコーチとして「自分がやりたいと思ったことを楽にできるようになる」ために、メンタル面をサポートすることを仕事としており、自分で自分を「いいな」と思える状態を「つよつよメンタル」と名付けて、自分が思う「よい人生」を作っていくベースになると提唱しています(その基本的な考えや簡単なワークを著書『つよつよメンタルで人生は思い通り』にまとめました)。

たくさんのクライアントと接してきて思うことは、人はそれぞれ違うということ。人はそれぞれ違うから、あの人が成功した方法が自分に合っているとは限りません。ここでは、まず自分でやってみるためのちょっとした考え方のコツをお伝えします。

まずは動機、「自分」そして「健康」を大切に

そもそも、あなたがダイエットしようと思った理由(動機)はなんでしょうか。お医者様に注意されたから、あのブランドのスーツを着たいから、制服がキツくなってきたから、結婚式があるから、褒められたいから、周りがダイエットをしているから、などいろいろな理由があると思います。

それぞれの動機を否定することはしませんが、安全に楽しくダイエットに取り組むには「自己満足」を大切にしてください。他者の評価を軸にするのではなく、自己満足を大切に。もちろん誰かに褒められることはとても嬉しいことです。誰かと比べて優越感に浸ることもあるでしょう。でも、それを第一の理由にしないようにしていただきたいと思います。

さらに、「ダイエット後のあなた」の姿を思い描き、なりきってその感覚を味わうことができたなら、ゴールまでのナビにスイッチが入りやすくなります。健康を手に入れたあなた、素敵なスーツを着こなすあなた、制服姿がかっこいい、結婚式のドレスが似合っている、そうなれたらどんな気持ちですか? ぜひ楽しく想像して味わってくださいね。

存分に味わった後に、忘れずにやっていただきたいことがあります。「(ダイエット後のあなたの姿)が手に入るならば、『健康』は不要ですね?」と、自分に問いかけてみてほしいのです。この答えが「はい」であれば、自己流のダイエットはやめましょう。お医者様やプロのトレーナーに相談すべきです。

秋までに3kg? モチベーションの上がる目標は人それぞれ

「秋までに」「3kg」このように、具体的な期限や数値を決めることこそが目標だと思い込んでいませんか? これでモチベーションが上がる人は、どうぞこのままで。きっと目標を達成しやすい人だと思います。

反対に、期限や数値目標を決める(決められる)と、やる気がなくなったり、ちょっと嫌な気分になるという人もいるでしょう(私もそうです)。最新のコーチングメソッドでは、こういう人が気分良く行動できるように、そして目標を叶えることができるように、さまざまな手法が開発されています。本稿では「目標」が苦手な方に向けて、最新のコーチング手法を使いながら、自分でできる方法を提案します。名付けて「できることだけダイエット」。ご一緒にやってみませんか?

そもそも太る(痩せる)とは? 仕組みを知る

では、何をやるか。その前に、まず「そもそも」を知る必要があります。間違った(効果の出ない、健康的ではない)方法を選択しないためにも、どうして太るのか、どうすれば痩せるのかという仕組みを信頼性のある情報から学んでいきましょう。

情報ソースとしては、国や都道府県の研究機関、保健所、病院など。他にはスポーツ科学や栄養、健康についての専門の大学が発信する情報がおすすめです。ご自身が加入している健康保険組合や自分の会社の産業医が情報を発信しているかもしれません。少し取っ付きにくいかな? と思うかもしれませんが、最近は研究成果を分かりやすく伝えるための学問があるくらい、各機関で発信の工夫をされています。まずこういった機関の情報で、痩せるための基礎知識を身につけます。効率よく検索していくと、数時間程度でなんとなくは理解できたという人も多いものです。

仕組みを知らず、闇雲にダイエットメニューをこなすことは、時間の無駄になります。そればかりか、健康を損なう恐れのある方法を選んでしまうというデメリットにもつながります。今は遠回りに感じるかもしれませんが、「そもそもを知ること」に取り組んでみてください。これが面倒くさいなと思う人は、遠慮なくプロに頼るという選択をしてください。

自分に合った方法を組み立てる

前項で「痩せる仕組み」が分かりましたので、早速何をするかを決めていきます。「仕組み」を知ったあなたは、巷のダイエット情報の中から健康的で効果的な方法を選ぶことができるようになっているはずです。その中から、さらに自分に合っている(合っていそうな)方法を選択し、まずは試してみるということができますね? できますか? それがなかなか難しいのかもしれませんね。

人はそれぞれ違うので一概に「これがいい」とは言えませんが、選択する際のコツとして、自分が「形から入る」タイプか「自然にやる」タイプかに注目してみるといいでしょう。よしやるぞ! と気合を入れて、器具やウェアを買ったりジムやエステに通ったりすると続けられるという人と、気合を入れずに日常で続けられる習慣として取り入れる方がやりやすい人がいます。本稿で取り上げている「目標が苦手」、かつ「自然にやる」タイプの人は、ダイエットをやっている感が出ないかもしれませんが、正しい方法を続けると効果が表れるのがダイエットです。それぞれが続けられる方法(金銭面や時間も含めて)を選択しましょう。

この考え方は「秋までに」「3キロ」という数値目標を達成したい場合にも役に立ちます。「痩せる仕組み」を元に、3キロ痩せるために1日で必要なこと(食事や運動)を割り出すことができます。それが現実的で健康的な方法で「やる」ことができれば秋までに3キロ減です。

できること・できたことに注目する

とはいえ「やる」「やり続ける」ことは難しいですね。ダイエットに限らず「続けること」はコーチングでもよく取り上げる課題です。ここで「できることだけダイエット」の真骨頂をお伝えします。

  • できることだけやる(できないことをやろうとしない)
  • できたことにだけ注目する(できなかったことは、やりたくなるまで放っておく)

それだけでいいのですか? とよく聞かれますが、はい、まずはこれだけです。特にダイエットは、痩せる仕組みに沿ってさえいれば成果は出るのですから、できないことにフォーカスしてやる気をなくすよりは、何かを「やる」方がいいです。

とはいえ、同じことばかりやっていると飽きてきます。飽きずに続けられる人も、思ったような成果が出なくなる時期がやってきます。そういう時は(できればそうなる前に)

  • もうちょっとがんばってみる

これが必要です。私個人的には、1番大切だと思っています。今までの自分の殻を少し破ってチャレンジしてみます。その時も「できることだけ」です。例えば、腹筋トレーニングの回数を1回増やしてみる程度でいいのです。これを繰り返すことによって「できること」が増えていき、ダイエットのスピードも速くなります。

できることだけやるから、できる。できると、うれしい。もうちょっとがんばってみる。この当たり前のサイクルを回すのが「できることだけダイエット」の仕組みです。

この単純な仕組みを下支えするのが

  • 変化に気づく

ということ。いくらやっても変わらない、という状況は辛いことです。辞めたくなる大きな理由になります。ちょっとした変化に「気づくように心がける」ことで、続ける自分をサポートできます。

筆者の場合は……

ここまではざっくりとした考え方をお伝えしました。最後に、筆者の場合を簡単に書いてみます。具体例として面白がってもらえれば幸いです。

私は「あのお店のお洋服が似合うようになりたい」という動機でダイエットを習慣にしようとしています。食べたいものは食べたいので、無駄にカロリーを摂取することがないようにだけ気をつけています。エネルギーを消費するために、もう少し筋肉をつけたいなと思っています。だからタンパク質の摂取量は意識しています。スポーツの習慣はないので、仕事の合間や寝る前に、ちょこちょこ筋トレのようなことをしています。それをすると、体が動きやすくなる実感があります。メインのメニューに加えてYouTubeで見たエクササイズを気まぐれに試したりもしますが、ある動きで膝の裏が痛くなったので、いきなり負荷のかかる動きをしてはダメだということを学びました。最近は腹筋ローラー(初心者用)を買いました。騒音もなく、リビングに出しっぱなしにしていても違和感がないので、目に入ったらコロコロと転がるようにしています。3年前に買ったシャツ、パツパツだった袖に今はゆとりができています。