「パトロン」は、性的な見返りを目的とした異性への支援者など、どちらかというと悪い意味と捉える人が多いかもしれません。しかしもともとは幅広い意味がある言葉であり、あまりネガティブな意味はありませんので、覚えておきましょう。
この記事では、「パトロン」の意味や使い方、類語表現や英語表現などを紹介します。間違った使い方を避けるためにも、ぜひご一読ください。
パトロンって悪い意味? 意味を解説
「パトロン」というと、性的な見返りを求めて金銭的な支援をする人をイメージする方が多いかもしれません。しかし「パトロン」は、もともとは異なる意味で使われていた言葉であり、さまざまな意味での保護者を指します。
ここでは、「パトロン」の意味について見ていきましょう。
経営者・雇い主
「パトロン」は、「経営者」「主人」「雇い主」などの意味がある言葉です。例えば「温泉宿のパトロン」というと、温泉宿の経営者を指すことがあります。ただし、日本ではあまり浸透していない使い方ですので、誤解を与えないよう気をつけて使いましょう。
アーティストらへの経済的な支援者
「パトロン」には、「芸術家・芸能人・作家・アーティストなどの団体を経済的に支援して後ろ盾になる人」という意味もあります。これが「パトロン」のもともとの意味であり、現代でも使われることがある使い方です。
例えば投資家とブランド創設者との関係が、パトロンと出資を受ける人に当たります。経済的に余裕がある人が気に入った芸術家を支援することで、芸術家は創作に集中できるようになるでしょう。
異性の生活の面倒をみる人
「パトロン」という言葉は、特定の援助を与える人を指すことも多いです。中でも異性に対し経済的な援助や保証を与えている人という意味でよく捉えられています。
「パトロン」=「異性に対して性的な見返りを求めて金銭的な援助をする人」という、偏った意味の言葉だと考えている人も多いです。ただしもともとの意味は異性の生活の面倒をみる人という意味ではないことも理解しておきましょう。
「パトロン紙」を「パトロン」と呼ぶこともある
「パトロン」という言葉は、「パトロン紙(ハトロン紙)」の省略形として使われることもあります。パトロン紙とはおもにクラフトパルプを原料としている、褐色片艶(かたつや)の紙のことです。
由来はドイツ語のPatoronen papiaer(パトローネン・パピア)で、弾薬を包む目的で作られていました。現代でも耐久性のある包装紙として使われています。
テキーラの名前としても使われている
「パトロン」は、お酒のテキーラの銘柄にも採用されています。「パトロン」はメキシコのテキーラで、製造場所はメキシコにある醸造所です。
2021年にはテキーラの販売量や金額で世界トップを誇るなど、世界中で愛されています。
「パトロン」の語源
ここでは「パトロン」の語源をご紹介します。
語源はラテン語の「父」
「パトロン」の語源は、ラテン語で「父」を表す「pator」です。その後「pator」は、「保護者」を表す「patronus」に変化しました。
さらに英語で「保護者」「贔屓筋」「主人」などの意味がある「patron」に変化して、日本語の「パトロン」の由来になったと考えられています。
パトロンが登場した背景
芸術が現代のように職業として成り立つ前には、芸術家は王侯貴族や有力者らパトロンによる庇護を必要としていました。例えばイタリアのルネサンスにおいて、メディチ家がパトロンを担っていたことがよく知られています。
イギリスにおいてはエリザベス朝から18世紀までに、王室や貴族がパトロンとなり、詩壇や劇壇を助けていました。 18世紀ごろからようやく小説が盛んになることで作家たちが自立しはじめ、パトロンを離れて職業化することになります。
「パトロン」の使い方
「パトロン」という言葉は、日常生活でそう頻繁に使われることはなく、使い方に戸惑う人も多いでしょう。そこで、「パトロン」の使い方を紹介します。
日本では悪い意味で使われやすい
日本で「パトロン」という言葉は、「アーティストあるいは異性を支援する人」という意味で使われることが多いです。ただし言葉の裏には「性的な見返りを求めて異性を支援する」というイメージが隠れていることもよくあります。
そのため、日本において「パトロン」は、あまりいい意味で用いられているとはいえません。
「パトロン」の例文
・大成功した有名ブランドの創設者も、初めはパトロンありきで活動していた人は少なくない
・彼は留学費を用意するために奨学金やパトロン探しに必死になっている
このように「パトロン」は「出資者」という意味で使われることが多いです。
「パトロン」の類語・関連語
「パトロン」には、似た状況で使われる言葉がいくつかあります。以下で紹介しますので、「パトロン」とともに覚えておきましょう。
出資者
・彼は芸術が好きで、才能がある若手画家の出資者という一面も持ち合わせている
・彼は芸術が好きで、才能がある若手画家のパトロンという一面も持ち合わせている
「出資者」には「資金提供者」という意味があります。「パトロン」だと「性的な見返りを求めて」という意味が含まれていると誤解されやすいため、誤解を避けたければ「出資者」という言葉を使う方がおすすめです。
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・アーティストとして芽が出るまでの間スポンサーになってくれたA氏には感謝してもしきれない
・アーティストとして芽が出るまでの間パトロンになってくれたA氏には感謝してもしきれない
「スポンサー」には、「出資者」という意味があります。「資金を提供してくれる人」という意味で「パトロン」を使う場合、「スポンサー」は類義語です。
「パトロン」の英語表現
「パトロン」は英語の「patron」が由来です。ただし日本語で使われる「パトロン」を英訳すると「patron」以外の表現を使う方が望ましいこともあります、「パトロン」の英語表現を見ていきましょう。
男女で表現が異なる
「出資者」「後援者」などを表す「パトロン」の英語系には、男性形と女性形があります。男性形は「patron」ですが、女性形「patroness」です。女性形の「patroness」は「後援者」だけでなく、「後援者の妻」という意味で使われることもあります。
「patron」以外の表現が使われることもある
「パトロン」は状況によって、「patron」以外の英語表現が使われることがあります。
・master(主人)
・manager,boss(経営者)
・sugar parent(性的な見返りを求めて若者に金品を貢ぐ人)
上記のように、「パトロン」の意味によって用いるべき英語表現が異なる点に気をつけましょう。
「パトロン」は本来悪い意味ではない! 意味を理解して使いこなそう
「パトロン」のもともとの意味は「芸術家に対する経済的な支援者」です。現代の日本では「性的な見返りを求めて異性を支援する人」のような悪い意味と捉えられがちですが、もともとは悪い意味がある言葉ではありません。
語源はラテン語で「父」という意味がある「pator」が雇い主を意味する「patronus」に変化し、「patron」に変化しました。日本語の「パトロン」は、英語の「patron」が由来になっています。
「パトロン」は現代でも「アーティストの支援者」という意味で使われることもありますが、誤解を与えやすい表現です。使う相手や状況に留意しながら、「パトロン」という言葉を活用してください。